国体出場記念の木

駅伝でよくある「勝ったことより記憶に残る話」〜中学生⑤

noteで自分の半生を振り返るということをしてみて、色々と思うことがあります。自分の記憶を文章化していくと、これまでの自分の経験の中で何が響いて心に刻まれているかがよくわかります。

「駅伝」はずっと大好きですが、その理由が少し整理できた気がしました。

■県中学駅伝

前年に悔しい思いをした県駅伝。今年こそはという思いは皆非常に強かったのですが、こういう時にこそ「まさか」が起こるものです。当時の辰口中学は圧倒的な走力から優勝候補でした。今年こそは優勝できるだろうと期待されていた矢先、急にメンバーの1人だったケンジが練習しなくなりました。

理由は言わない・・・無言を貫くので、さすがにイラっとしてきましたが、実は疲労骨折でした。絶対に自分の口からは言わないので、周囲から漏れ聞こえてくる情報をつなぎ合わせたところ、どうやら折れてるらしい…ということがわかりました。

ただ、本人にその真偽を確認しようとしても「別になんでもない」の一点ばり。彼なりの哲学があったんでしょうね。大会当日までになんとか治すつもりだから「言わない」「言わなくても良い」というロジックだったのかもしれません。

そういう負けず嫌い(とはちょっと違うかな…)野郎が集まっていたチームでした。自分も結構頑固なつもりでしたが、似た者同士が集まるんですって。疲労骨折はもちろん大事件ですが、チームには良い意味で緊張感も競争意識も生まれました。強くなるためにはこういう感覚ってやっぱり必須だと思います。

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ちょうどこの年から駅伝のテレビ放送が始まり、優勝候補に挙げられていたうちの中学校は取材を受けることに。テツオ先生が「プレッシャーです」とテレビの前で普通に言っちゃうもんだから、正直すぎて逆に吹っ切れました。「勝てる」と思って勝てなかった前年、それなら今年は「負ける可能性がある」と思って勝負に臨もうといった気持ちの切り替えになったのかもしれません。まぁ、ちょうどいいですね。

レース当日は強い風が吹いていました。そしてこの年は一区から全力でぶつかって逃げ切るという駅伝のセオリー通りのオーダーが組まれ、僕は1区にエントリーされました。レース前に渡された鉢巻には「一走入魂」の文字。まさに魂を込めたレースだったと思います。陸上競技って個人種目ながら、駅伝のようなチームスポーツ的な要素もあって、そこがまた面白い。いまだに駅伝には魅せられっぱなしです。結果は圧勝、一度も先頭を譲らずに一番でゴール。そして、アンカーを務めたのは疲労骨折をしていたケンジでした。みんなんで泣きました。そして喜びました。

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今のようにネットが普及していない頃、テキストでホームページを手作りしていた方がいました。読み返すと懐かしいです。そしてこのメンバーとは今でも会えば話が盛り上がる大切な仲間たちですね。

■涙をこえて

スポーツには必ず表と裏があります。優勝して歓喜の輪ができる中にどうしても入ってこれない子もいました。彼の名はユウイチ。1年生の頃から期待されていた子でした。田舎なので、ちょっと走れる子はすぐに有名になります。

即戦力として期待されたカワイイ後輩でしたが、この年の駅伝には出られませんでした。駅伝ではよくある話ですが、直前のメンバー選考に漏れたためです。強い上級生がいたからといえばその通りなのですが、彼の走力からすると本当は走っていなければいけない選手。

当時のチームは長距離ブロック以外のメンバーも含めると80人ほど在籍する大所帯でしたが、たくさん選手がいれば当然モチベーションが低い子も出てきます。1年生の頃のユウイチは同じ学年の子には決して負けないくらい速かったです。そしてみんな一目置いていました。しかし、努力に勝る天才なし!ちょうど同じ学年にいたキヨシという真面目な子がコツコツ練習を頑張って、気がつけばすっかり立場が逆転。チームの中心メンバーになっていました。

センスはあるけど、練習に対してのちょっとした不真面目さの積み重ねが、結果に現れてしまったと思います。ユウイチは僕のことを「コウタ君!!」と言ってすごく懐っこく近寄ってきてくれるカワイイ後輩だったので、こいつには走ってほしいという気持ちと、これじゃ走れないなという競技者目線での厳しい想いの両方があったので少し複雑な気分でした。

泣きながら歓喜の輪に近づけないユウイチといろんな話をしました。彼にとっては大事な経験だったと思います。ただ、純粋に人として付き合った場合に、ユウイチとは一緒に走りたかったです。彼にとってもこの経験はただの中学生の時の思い出で終わってないでしょうね、きっと。


今頃何してるかなぁ・・・

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