見出し画像

なぜ中国の若者は日本へ留学するのか?

最近、日本へ留学したいのだがという相談を受けることが多い。特に昨年の後半、中国の景気が悪いと言われ始めたころから急に増えたような気がする。相談は、留学をする当人ではなくご両親から相談であることも中国的な特徴かもしれない。ただ、私は教育の専門家でもないし、留学の仲介業者でもないので、一日本人としてアドバイスをするしかできないという前提を理解したもらったうえで相談に乗ることにしている。

中国の若者が日本へ留学を希望する理由

①就職難

昨今中国の若者が(ご両親の意向も含めて)日本へ留学を希望している理由は、以前もnoteに書いたかもしれないが、まず空前の就職難という点が挙げられる。「卒業即失業」という言葉が流行るくらい、新卒学生は就職先がない。若者の就職率に関する国家統計の発表が中止になったことからもその深刻さはわかる。直近のデータでは多少持ち直したというニュースも出ていたが、マインド的には学生さんは皆「仕事がない」と感じている。このように卒業しても仕事がないという場合、大学を卒業して無職になってしまうと、キャリアに空白ができてしまうことになる。そこで、大学卒業後に留学をすることでキャリアの空白を失くそうという考えらしい。

②過競争

中国は激烈な競争社会である。以前どこかのニュースで、地方都市の公務員2名の募集に3万人以上の応募があったという内容のものがあったが、とにかく中国国内では競争相手の数の桁が違う。結果、幼稚園、小学校、中学校、高校、大学と終わりのない厳しい競争、戦いが続く。当然ながら、この戦いに勝利することができるのはほんの一握りの人々であり、大部分の人たちは、青春を犠牲にした努力に見合うだけの成功を獲得することはなできない。それどころかこの激しい競争に耐えることができず、心や体を壊してしまう人も多い。そんな心休まる暇もない中国から飛び出して(逃げ出して)日本へ留学したい、させいたいという本人やご両親の心持ちを、逃げだと批判するも酷と思えるのが今の中国の凄まじい競争なのだ。

③超円安

現在、驚くほど円が安くなっている。日本円と人民元のレートでみると、1万円が500元しない。つまり100万円でも5万元にも達しない。日本では大学でも学費が年間120万円なら高いと言われたりするが、中国の多少小金を持っているご両親からすれば、120万円(約58,000元)は破格の安さであり、仮に生活費等を加えたとしても、30万元程度で留学できるなら、アメリカや欧州のような物価の高い国へ留学するよりも相当に安上がりである。しかも中国と日本は距離的にも近く、すぐに行ったり来たりが可能であり、両親としても安心感があるうえ、飛行機のチケット代も安い。

このように、様々な理由から中国の若者が日本留学を希望する例が増えている。留学の動機や目的にはそれぞれの事情があるため、そのことに意見を言うことはしないようにしているが、必ずアドバイスをしているのは、どんな目的や動機であれ日本に行くなら「郷に入りては郷に従え」を忘れないようにという点だ。日本人は溶け込もうとする外国人には無類の親切心を発揮するが、逆にそうではない外国人には非常に冷たく厳しいという傾向がある。これはどの国でも同じようなものだろうが、中国の人々は、日本という同じアジアの国文化圏だというちょっとした誤解があるために、特にこの罠にハマりやすい。

いずれにせよ、今後も日本へ留学を希望する若者は増えていくだろうから、行くならぜひ成功してもらいたいと心から思う。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?