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#61ミレービスケット。

いつも買い物をしているスーパーの店頭には並んでいないミレービスケット。わたしは時々これを買うために、少しはなれた別のスーパーまで自転車で出かけます。

「あった、あった」

四種類ほどちがう味の商品がならんでいますが、よく買うのはプレーンとトリュフです。トリュフは香りと塩味のバランスが絶妙で、癖になる美味しさです。パッケージには「まじめなおかし」ミレービスケットと書かれています。おかしが真面目ってどういうこと?たしかにプレーンの袋のデザインは青が基調になっていて、シンプルで飾り気が少ない印象です。こういう感じが真面目さにつながるのでしょうか。

高知県にある野村煎豆加工店というところが作っていて、創業90年になるそうです。大正12年に豆類の加工販売店として商売を始めて、昭和30年ごろからビスケットを作っている会社です。豆を揚げた油をブレンドしているので、香ばしくて少ししょっぱくて、素朴な味がしますとHPには説明されています。

わたしは偶然、このビスケットを見つけたのですが、もともと朝食がトースト一枚だけだと口寂しい時があり、「トーストの付け足しで、お皿にちょこっとのせられる、安くて手軽なもの」を探していたのです。最近は、食べ物もどんどん値上がりしていますが、クラッカーやビスケットは、相変わらずの低価格で売られています。物がどんな風に作られているのか、素人のわたしには分かりませんが、材料費もあまりかからず、テキトーに作れるのがクラッカーやビスケットなのだろうと勝手に思っていました。

ところがミレービスケットに出会ったことで、わたしの考えが間違っていたことを知りました。一口噛んだだけで、

「こんなに丁寧に作られたビスケットがあるのか」

という感動が、全身に広がります。少し厚めのコインサイズのビスケット。ほどよく焼かれた小麦色の表面は美しく、ずっと見ていたいほどです。もしわたしが子どもだったら、ポケットの中に入れておいて、「ポケットの中にはビスケットがひとつ、〜」と昔覚えた童謡を歌いたいくらいです。

ミレービスケットのもう一つの魅力が、マスコットキャラクターのミレーちゃんです。頭の三カ所に髪かざりのようにオレンジ色のミレービスケットをつけて、バレリーナのようなポーズをしています。このミレーちゃん、人間のような宇宙人のような、不思議なテイストの仕上がりをしています。「これはもしや…」ぐぐってみると、作者はやなせたかしさん。流石、やなせ先生。

この会社、従業員60名とのことで更におどろきました。よい商品・製品を作れるかどうかは、会社の規模では決まらない。そこに熱い思いがあるかどうか。そして商品を手に取れば、必ず思いは伝わるものなのだなあと。

2016年にはマツコ・デラックスさんも、ミレービスケットを絶賛されていたらしいです。有名人から紹介されると途端に人気に火がつき、一時期は大変なことになり、いつかまた忘れられるという社会現象がありますが、野村煎豆加工店さんにはこれからも、地道に「まじめなおかし」ミレービスケットを作り続けてほしいなと願っています。わたしも真面目に、ビスケットをいただきたいと思います。




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