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#69本日のアイスクリーム。

たまにスーパーのアイスクリーム売り場をのぞいてみると、新商品が続々と登場しています。先日はスーパーカップのレモンチーズ風味というのを見つけてしまい、

(スーパーカップは他のアイスよりもカロリーがうんと高いんだよなあ)

と思いつつも、レモンとチーズのコンビネーションの魅力に負けて買ってしまいました(実際に、爽やかで美味しかったです)。「季節限定」や「数量限定」などと書かれていると、つい目が釘づけになってしまいます。

高校生の頃、最寄りの駅ビルにジェラート屋さんがありました。夕方になると、さまざまな制服の高校生たちがたむろしていました。わたしの場合、毎日部活があり、駅に着くとダッシュで電車に飛び乗る生活だったので、普段は立ち寄ることのできませんでしたが、テスト前一週間の部活休みのあいだだけは、ふらふらと近づいてしまうのでした。

部活なし期間中は、たいがい家が近所のマル山さんという女の子と待ち合わせて帰っていました。マル山さんはブラスバンド部に所属していて、一見地味なタイプなのですが、根は明るくて好奇心が旺盛でした。
「今日はどのアイスにしようかな」
ショーケースの前に立つと、マル山さんはするどい眼差しでアイスを吟味します。

「ベリーベリーストロベリーとキャラメルリボンで!」
早口言葉みたいに、おしゃれな名前のアイスをセレクトするマル山さんの注文が終わると、店員さんがにっこりと「ご注文を承ります」とわたしに微笑みかけてくれます。
「じゃあ、ラムレーズンと抹茶」

その次にジェラート屋さんに行った時。マル山さんが注文します。
「チョコレートミントとさくらで!」
その後につづくわたしの注文。
「じゃあ、…ラムレーズンとキャラメルで」

またその次にジェラート屋さんに行った時。マル山さんが注文します。
「ナッツトウユーとマスクメロン」
その後につづくわたしの注文。
「じゃあ、…んんと…抹茶とキャラメルでおねがいします」

またまたその次に、ジェラート屋さんに行った時。マル山さんが注文します。
「クッキーアンドクリームとレモンシャーベット」
その後につづくわたしの注文。
「じゃあ、…そうだな…ラムレーズンと抹茶」

何十種類もの美味しそうな味のアイスを前にして、ショーケースに顔を近づけ、うんうんうなってみたにも関わらず、わたしの場合、結局は同じものを注文してしまうのです(抹茶とラムレーズンとキャラメルのうちのどれか)。マル山さんの真似をして、新しい味にトライしてみようという思いが、頭の中をかすめることもあったのに、どうしてこんなことに…。

気に入った味のものを何度も食べたいと思うタイプだからか?あるいは時間が経つとその味を忘れてしまい、また食べたくなるからか?はたまた、言い慣れない長い名前のアイスを注文するのが気恥ずかしかったからなのか?

ほんとうの理由は自分でも分かりません。でも今でも同じような傾向は、しっかりと残っています。気に入ったものの定着率が高いのです。あまりよそ見はしないのです。わたしが求めているものの、先の、先の、先にあるものは、一体なんなのだろう?と考えてみると、どうやら「安心感」のようなのです(笑)。

これは#59(音楽を楽しめる、か)で書いたように気に入った曲をリピートしすぎて嫌いになる傾向と元を辿れば同じなのでしょう。音楽の場合、小休止が入らないから嫌いになるまで聴き続けてしまいましたが、アイスなどの食べ物は、間に時間をおくことが多いので、同じものへの好意が飽きずにつづいてしまうようです。

テル坊はマル山さんと似たタイプで、なんでも新しいものを試したいタイプです。お陰でわたしもほんの少しずつですが、新しい味のアイスや食べ物にもチャレンジすることが増えてきました。食後に「これは美味しかった」「ちょっと期待はずれだった」とお互いに勝手な感想を言い合うのも食後の楽しみの一つになったからです。だれかと一緒に感想を共有する楽しみがあることで、食べ物に感じるわたしの「安心感」の形は少しだけ変わってきたのかもしれません。




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