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#78メガネのフレーム。

「よくそんなにかっこ悪いメガネのフレームを、探し出せたもんだね」

わたしがメガネをかけている姿を見ると、ミドリーが時々そう言って笑います。

「だって、あんなに沢山フレームが並んでたら、何を選んでいいのか分からなくなるんだもん」

一年半ほど前、5年ほど使っていた老眼鏡の度数が合わなくなってきて、テル坊といっしょに新しいメガネを買い求めたのですが、そのフレームの形が、わたしの顔かたちに合っていないらしいのです。

「母ちゃんが二つも買ってもらったと大喜びするから、どんなメガネかと思ったら…」
そうなのです。一つは老眼鏡で淡いピンク色のフレーム、もう一つは中遠距離用で車を運転する時に使うための茶色のフレームです。二つともかたちが同じで、ミドリー曰く、そのかたちがダサいのだそうです。

今更ながらフレームについて調べてみると、大きく分けて六つのかたちに分類されているようです。真ん丸メガネのラウンド型は「文豪メガネ」とも呼ばれ、ドラマで学者や作家役の人がかけています。レンズが楕円形のオーバル型は、オーソドックスなタイプの柔らかな印象のフレームです。老若男女問わずに親しまれているかたちだそうです。スクエア型は横長で角があるデザイン、顔全体の印象を引き締めるため、丸顔の人やビジネスマンなどに好まれます。ボストン型は丸みがありつつ上の部分が台形や逆三角形となっているので、オーバル型よりも都会的な印象を与えます。ウェリントン型はボストン型よりもかっちりした雰囲気で、縦幅があるので、面長や逆三角形の顔の人にも馴染むかたちです。さいごにフォックス型は両はしがつり上がったかたちで、小悪魔のようなイメージを与えるタイプです。

「では一体、わたしのフレームはどのタイプなのかな?」
老眼鏡を一旦はずして、わたしは自分のメガネのフレームを見本のかたちと比べてみます。わ、分からない。オーバル型とボストン型のちょうど中間くらいのかたちをしているのですが、はっきりと見分けがつきません。

「売り場で選んでいた時、これが何型かなんて書いてなかったしなあ」

型が分からないことに文句を言いたくなりますが、多分ほとんどの人はどの型にするかをメインにフレームを選んでいるわけではなく、実際につけてみて、自分の顔にぴったりしたイメージのフレームを選んでいるのでしょう。

フレーム選びの時のことを思い出してみました。そうだ、わたしはあの時も、ずらりと並んだフレームの中からどれを選び出していいのか分からずに、時間の経過とともに疲労が蓄積していったんだ。いっしょにメガネを新調したテル坊は、普段使いのものと、夜間の運転用に光の反射がまぶしくないメガネを買おうと、ちゃんと下調べをしていて、売り場でもタイプの異なる型のフレームを二つ見つけ出して、満足げな様子でした。

「なんだい、なんだい、自分だけさっさと買い物し終わって」

ふてくされたわたしを見て、テル坊も慌ててわたしのフレーム選びを手伝ってくれたのですが、疲れマックスのわたしはようやく色違いの同じかたちのフレームを二つ選び取ったのでした。それ以上、選びつづけるのは苦痛だったから。

さらによく考えてみると、わたしが苦手なのはメガネ選びに限ったことではありません。買い物全般が苦手なのです。行く時にはルンルンで自宅を出発するのに、帰りは疲れまみれ状態。買い物した喜びではなく、買い物疲れに満ちあふれて帰宅するのです。

「結局わたしは自分のことをよく分かっていないんだね」

自分の顔がどんなパーツから成り立っているのか、自分の体型や肌の色にどんな色合い、デザインの服なら似合うのか、普段の服装にあった靴はどんなタイプなのか。そういう全体のイメージがきちんと把握できていないことが、買い物下手の大きな要因のようです。選ぶのが下手だからこそ、買い物疲れが尋常ではないのでしょう。

「ミドリー、使っていないメガネを外出用に貸してくれない?」

ミドリーが以前作ったという、光を遮る系のラウンド型メガネは、目の周りがブラウンで耳にかける部分がブルーのちょっと小洒落たタイプです。

「その形なら、悪くないかもよ」(ミドリー)

そうか、これがわたしの顔に似合うかたちだったのか。今度買い換える時がやってきたら、わたしはラウンド型の細いフレームのものにしようと思います(老眼は60歳くらいで止まるらしいので、次に買い換えるなら60歳ちょっと前あたりにしようかと目論んでみたりしています)。




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