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日本の大学の「ダブルスタンダード」を非難する東大パレスチナ連帯キャンプと、アメリカの学生運動に希望を見る人々

 東京大学駒場キャンパスでもパレスチナに連帯するキャンプが張られるようになった。運営委員の学生は大学が虐殺とアパルトヘイトを行うイスラエルを非難すべきだと主張し、ロシアのウクライナ侵攻を非難した大学がイスラエルに声を上げないのはダブルスタンダード(二重基準)だと述べた。(東京新聞、毎日新聞)

 アメリカの大学から始まったテントを張ってパレスチナとの連帯を訴える運動は、イスラエルの攻撃によってテント生活を余儀なくされるガザの人々の境遇や心情に連帯するものだ。

コロンビア大学 安息日の始まりを祝うユダヤ人学生と金曜礼拝を行うムスリムの学生たち 4月19日(金) https://twitter.com/jvplive/status/1781742972037632440


 ダブルスタンダードがあるのは東大だけでなく、日本政府も同様だ。岸田首相は一昨年3月2日、ウクライナ難民を受け入れる考えを明らかにし、親族や知人が日本にいるウクライナ人から受け入れを開始し、人道的配慮からその後を判断すると語っていた。岸田首相はできるだけ早く手続きを進めたいとも述べていたが、この迅速さは日本が従来難民受け入れに消極的だっただけに意外な印象を受けた。しかし、岸田首相がガザの住民たちに対して同様の配慮を行っているようにはまったく見えない。岸田首相がアメリカの敵(=ロシア)の侵攻によって発生した避難民は受け入れるのに、アメリカの同盟国(=イスラエル)が生んだ難民は考慮しないというのは、明らかなダブルスタンダードだ。

アパルトヘイト、大好き❤ ネタニヤフとスナク イギリスの首相官邸外で https://www.thehindu.com/news/international/uk-demonstrators-protest-israeli-leaders-visit-to-london/article66657469.ece


 カイロ大学を卒業したという小池東京都知事もカイロと同じアラブ世界にあるパレスチナに対する同情が希薄だ。一昨年2月にロシアがウクライナに侵攻すると、3月11日に東京都の小池知事はウクライナからの避難民を当面都営住宅百戸で受け入れ、最大700戸まで拡大する考えを明らかにした。小池氏は「タイミングを逸することなく機動的に対処していく」とも述べた。ウクライナ避難民を受け入れるのは結構だが、岸田首相同様、それ以前のアフガンやシリアなど中東難民に比べると、破格の扱いだという印象はぬぐえなかった。小池都知事がガザのパレスチナ人については「タイミング」など考慮している様子は見られない。ウクライナとパレスチナに対する日本の二重基準はアラブ・イスラム世界から好意的に見られることは決してないだろう。


米テキサス州オースティンにあるテキサス大学オースティン校で行われた親パレスチナデモで州警察と対峙するデモ参加者(2024年4月24日撮影)。(c)SUZANNE CORDEIRO / AFP https://www.afpbb.com/articles/-/3516674?pid=26761791



「(アメリカの)キャンパスでの抗議行動は、私を希望で満たしてくれました」と、コロンビア大学の運動を見てユダヤ人作家でジャーナリストのピーター・ベイナートは語る。
「コロンビアのキャンプでは、ムスリムとユダヤ人が同時に祈っているのを見ました。カバラ(ユダヤ教神秘主義)の安息日と過越祭のセデル(過ぎ越しの儀式の食事)を、あらゆる異なる背景、人種、宗教の人々と一緒に行っているユダヤ人の姿こそが、私たちが切実に求めている希望のビジョンなのです」(ピーター・ベイナート 

また、パレスチナ人の法学者のアフマド・イブサイスは学生たちの運動では、同じキャンパスでユダヤ人が過ぎ越しの儀式を行い、またムスリムが日没後の礼拝を行う。あらゆる背景をもつ人々が集団でパレスチナの解放運動に参加していることが、イギリス委任統治以前のパレスチナのように、平和なパレスチナの未来を想像させ、そのリハーサルを行っているようだと語っている。(https://www.aljazeera.com/opinions/2024/4/30/encamp-divest-and-keep-your-eyes-on-gaza?fbclid=IwZXh0bgNhZW0CMTAAAR0cuwdgTPRvKw-_KjdoZeYOc84OuHfdA5Ec__6sng0b02TBndCGkpTM_i8_aem_AdBkTlc1gz_yCH4y2TFV7mmw8FQHNVwR9Y6g3EKt7O-yIP1Hfk6kEsmsEyUfCVRy5nV7YF0d-Ec5WVLax_BNZjZc


 アメリカの学生たちは、3万4000人以上のパレスチナ人が殺害され、200万人以上のガザの人々が飢餓状態に置かれているイスラエルのガザ攻撃で、大学が利益を上げていることに憤慨している。学生たちは大学がイスラエル軍から利益を得る企業への投資から撤退することを呼びかけている。たとえば、ブラウン大学は兵器メーカーのRTX社や空中発射ミサイル、迎撃機、潜水艦発射システム、極超音速ミサイルシステムを製造するノースロップ・グラマン社など11社からの撤退を要求している。学生たちは特にイスラエルと密接な防衛・戦略上の関係を構築してきたアメリカの大学の矛盾を追及するようになったが、宗教や民族、さらには人種を超えて矛盾に抗議する学生たちの姿がパレスチナ問題の将来に肯定的な未来をもたらすものと広く信じられるようになった。

「投資は中立ではない」―ブラウン大学学生たち https://www.bostonglobe.com/2024/04/29/metro/brown-university-gaza-encampment-paxon-path-forward-divest-divestment-rally/

表紙の画像は東京大駒場キャンパス図書館前にできた「パレスチナ連帯キャンプ」の複数のテント=東京都目黒区で
https://mainichi.jp/articles/20240508/ddl/k13/040/003000c

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