⭐このお話はコラボ企画で書いたお話の続きです。

✙　✙　✙

　詩うたと暮らす事になった時、俺はとても嬉しかったし、心の底から安心できるパートナーと環境を手に入れたと思った。詩うたは俺の窮地を救ってくれたとても大切な人だ。

　俺は前の結婚で、心も体も病んでいたのだと思う。

　元の妻は俺をＡＴＭとしか思っておらず、家庭の中は冷え冷えとしていた。そんな風だから、息子も俺を憎んでさえいたようだ。いったいなぜそんな風になったのか俺自身よく分からない。元の妻の事も息子の事も愛していたし、自分で言うのもおこがましいが自身のスペックだって悪くはないはずだ。周りと比べても悪くない収入だってあったと思う。なぜあんなに邪険にされ、蔑ろにされているのだろう。

　そんな日々が続く中、ひょんな事から知り合った詩うたといつの間にか心が通じ合うようになっていった。彼女もどこか家庭の中で寂しさを抱えていたようで、二人が結ばれるのは自然な流れだった。もちろん、この関係が許されるものでは無いというのは百も承知だ。だけど、世間に何と言われようとも、俺には詩うたが必要だったし詩うたにも俺が必要だったと思っている。

　俺達の関係に感づいた元の妻からの嫌がらせは凄まじく、息子をも巻き込んでの嫌がらせにほとほと参ってしまった。そんな時、詩うたの所に元の妻が依頼した弁護士から内容証明が届いた。

　詩うたは聡明で行動力のある女性だ。すぐさま知り合いの弁護士に依頼して事の解決に乗り出してくれた。
　「こんな内容の訴えなんて納得できない。私負けないから！絶対にあなたの事も救ってあげるから。だから、あなたも負けずに戦うのよ」

　それから俺は家を出てアパートで独り暮らしを始めた。生活費を送るのは癪に障るが、一応婚姻中なので生活費はきっちり元の妻に送金した。元の妻も息子もいない、俺一人だけの物の無いがらんとした空間がなんとも言えず心地良かった。

　詩うたが依頼した優秀な弁護士のおかげで、１年近く掛かったものの俺にも詩うたにも納得のできる内容で離婚する事ができた。秋の柔らかな日差しの中で涙を流しながら微笑む詩うたの姿が美しくて、眩しくて、愛おしくて、俺は詩うたを思いきり抱き締めた。

　詩うたのご主人も外に好きな女性がいたようで、詩うたは俺の事と並行してそちらの方の証拠集めなどをしていて、あの弁護士に依頼していたそうだ。弁護士も優秀だが、詩うたの聡明さとしたたかさには舌を巻いた。

　程なくして詩うたの所も離婚が成立した。だけど、すぐに一緒に住むのはお互い気乗りがしなかった。それでも、俺達は頻繁に会っては前と変わらず心を通じ合わせていた。

　半年ほど経った頃、新しく借りた家に二人で引越して生活を共にする事にした。二人一緒に家の中に入った時、これから始まる新しい暮らしに希望で胸が高鳴った。

　朝、「おはよう」と言える事。
　俺が淹れる二人分のコーヒーの香り。
　詩が作ってくれる朝食の香り。

　「おかえり」「ただいま」が言える事。
　くだらない事を言い合って笑える事。
　「おやすみ」と言って一緒に眠れる事。

　こんな当たり前のような事ができる幸せを俺は噛み締めている。前の結婚では当たり前は当たり前じゃない事を知った。恋人から夫婦という家族になった俺達は今までとは付き合い方も変わってくるだろう。だけど、よく晴れた冬の窓辺のじんわりとした温もりのような愛情を持ち続けていこうと思う。

　詩うた、俺を救ってくれてありがとう。逃げないでいてくれてありがとう。ずっと、詩うたの事を大事にしていく。口に出して「愛している」なんて言わないけど、ずっと詩うたの事を愛しているから。この先何が起こっても詩うたを守っていくから、不安に思わないで俺を信じていて欲しい。

　詩うた、ずっと愛しているよ。

+++++++++++++++

シロクマ文芸部に参加します💛
今週のお題は「詩と暮らす」です。

私は今でこそいろんなジャンルの創作に首を突っ込んでいますが、昔は詩を書いていました。なので、そんなエッセイでも書こうかと思っていました。
だけど、不意にオラヴさんとのコラボ企画で書いたショートショートの続きを思いつきました。

前回のお話の彼目線のお話です。
今回は、ドロドロさは控えめです！

カーラジオから幸せな結末が流れてきました。
サブタイトルに使っちゃいました。

ようやく続きが書けました！
オラヴちゃん、いかがですか？

今日も最後まで読んで下さってありがとうございます♪