見出し画像

【春の恋バナ祭り】At the bus stop in April


 いつの間にか今年も4月がやって来た。あれから何回の4月を迎えたのだろう。あなたと暮らした部屋を出て行ったのは、よく晴れた4月の日曜日の事だった。

+ + +

 「もう行くね。今までありがとう」
 キーホルダーから鍵を外してテーブルの上にそっと置いた。あなたはソファに座って見てもいないテレビの画面を見たまま「ああ」と返事をした。

 バス停から部屋を見上げると、あなたがこっちを見ているのが見えた。もうこっちを見ないで欲しい。今にもあなたの所へ戻りたくなってしまうから。

 あなたとはお互い縛り合わない関係を築いていたと思っていた。結婚なんて紙切れの制度にはこだわらずに、好きだから一緒にいるだけの事だと思っていた。なのに、いつの間にかそれ以上を求めていた。それはたぶんあなたも。

 似た所のある私たちはお互いそれを求めていたのに、それを口に出すのはいけない事だと思っていた。きっと素直になれば良かったんだと思う。だけど、素直になる事ができないでいた。

 3回目の春を迎える前から私はこの部屋を出る事を考えていた。このままでは、あなたの為にも私の為にも良くない事だと思ったから。あなたには、もっと素直な可愛げのある子が良く似合う。

 私、これからどうしようかな。もっと本格的に絵を描いていこうかな。そして、今度こそ素直になれる人を見つけよう。あなたよりももっといい人を見つけてみせる。

 バスがやって来た。乗り込もうとしたその時、私の名前を呼ぶ声が聞こえた気がしたけれど、それはきっと風のいたずらなんだろう。さあ、バスを降りたら列車に乗ろう。しばらく旅にでも行こうかな。相棒はあなたのイニシャルの書かれた古いトランク一つだけだ。

+ + +

 「うん、今行く!ありがとう」
 部屋の中から私を呼ぶ声がした。私を呼ぶのはあなただ。あれから色々な事がお互いにあったけれど、自由な恋から誠実な愛を求めて素直になれるのはあなただと気が付いたから。

 あなたが淹れてくれたコーヒーの香りが鼻をくすぐる。さっき買ってきたおいしいイチゴのケーキも添えられている。部屋の中に目をやると、あの時の油絵が完成されて春の日差しを浴びてきらきらと輝いている。

(本文883文字)

+++++++++++++++

てるちゃんの企画におかわり参加します💛
実話だけでなく、創作でもOKということなので、ショートショートを書きました。

何か元ネタがあった方がいいという事だったので、この曲からお話を書きました。

🍓 April 稲垣潤一

この季節になると聴きたくなる曲です。
これは『サンヨーおしゃれなテレコ』のCM曲でした。


今回のお話は、この曲を彼女目線で書きました。
この曲は、バス停でバスに乗ったままお別れしてしまうのですが、最後は二人がハッピーエンドになるという設定に変えました。

てるちゃん、こんな感じでいかがでしょう?
きゅん♡を感じて頂けましたか?
あともうちょっとだけ書いてみようかなぁ・・・


今日も最後まで読んで下さってありがとうございます♪


#春の恋バナ祭り
#稲垣潤一
#April

この記事が参加している募集

恋愛小説が好き

もしも、サポートをして頂けましたら、飛び上がって喜びます\(*^▽^*)/ 頂いたサポートは、ありがたく今晩のお酒🍺・・・ではなく、自分を高めるための書籍購入📙などに使わせて頂きます💚