現代語訳『伽婢子』 長生の道士(2)

「当時、わたしは十八歳だったが、狩り場で父母兄弟が皆死んでしまったことをつらく思い、山に籠《こ》もって仏道修行に励んだ。すると、どこからともなく仙人と思《おぼ》しき者がやって来て薬を授けられた。青い丸薬を一粒飲むと身が軽くなり、心が爽やかになった。仙人はわたしを連れて空を駆け、大きな山の峰にたどり着いたが、そこがどこなのかは分からなかった。七宝の床の上に座らされ、丹栗《たんりつ》という赤い栗、霞漿《かしょう》という霞《かすみ》の汁をもらって口にすると、まるで悪酔いしたかのような気分で死にそうになったが、天の甘露《かんろ》を半合ばかり飲むと酔いが覚め、心が清々《すがすが》しくなった。やがて、仙人は語った。――汝《なんじ》は鶴と亀を見たことはないか。彼らは気を鎮め、静かに呼吸をしている。神気《しんき》を消耗しないので、非常に寿命が長く、病にもかからない。これより九十年後、汝の両目は青く光を帯びるようになり、闇の中でもよく物が見えるようになるはずだ。千年で骨が替わり、二千年で皮が脱げ、毛も生え替わる。その後、一切容姿が変わらず、年も取らず、寿命が尽きなくなるだろう」
(続く)

 老人の話によると、妖狐の「玉藻《たまも》の前」に両親兄弟を殺され、俗世が嫌になって山に籠もっていたところ、どこからともなくやって来た仙人から薬をもらって、自分も仙人になったそうです。

 続きは次回にお届けします。それではまた。


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