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令和6年度 介護報酬改定に向けた議論がスタート


介護給付費分科会の第1ラウンドが終了

令和6年の介護報酬改定に向けた給付費分科会がスタートし、先日、各サービス種別の第1ラウンドが終了しました。
9月以降、給付費分科会に参加していない関係団体へのヒアリングがなされ、10月上旬から具体的な改定内容の議論(第2ラウンド)に入り、"介護事業経営実態調査"の結果も出て、12月下旬にはほぼ確定される予定です(基本報酬は年明けですかね)。

先日、施設職員の立場で施設長会議に参加した際、部会長と厚労省の担当者が話をしたら、「エビデンスを持って主張しないと、厳しい改定になる」と言われた話がありました。
次期改定は医療・介護・障がいのトリプル改定になりますので、限られた財源をそれぞれ取り合う構図になります。
「1:1:1」にはならないでしょうが、「1.5:1.0:0.5」になるのか、関係団体の方々には我々の代弁者として、エビデンスとなるデータを踏まえた主張や提案を行っていただき、財源確保や目指すべき高齢福祉を後押ししてもらえるような改定内容を期待したいところです。

そういえばあの話どうなったの?

私の専門が特養とデイサービスなので、その2つに絞って、次回改定に向けて取り上げられていたあの話がどうなっているのか考察したいと思います。

介護・看護3:1基準の緩和

4月27日に行われた「1.テクノロジー活用等による生産性向上の取組に係る効果検証について」で、生産性の向上の文脈の中で職員配置が触れられていますが、今回の特養の会では、「介護・看護3:1基準」について一切触れられていません。

また、4月27日の議事録より、堀田委員の発言を引用させていただくと、「生産性向上」に向けた意識や課題認識を高め、それに対する選択肢を自ら選び、PDCAサイクルで浸透させていく重要性をお話しされています。
小規模な事業所や職員構成によって、進捗度合いの差はあるとは思いますが、ICTやデジタル化に向けては、少々荒療治が必要なタイミングが来てもおかしくはないと感じます(ほんと電話とFAXやめてほしい)。

その上で、とはいえ、限られたデータではあるけれども、物によってはテクノロジーや 介護助手さんの活用ということによってケアの質や仕事の質を高めていけるかもしれない というような可能性が見えているところもあるというのも重要な点だと思います。
そのと きに、では、その可能性をどのように発揮していくことができるような環境を整備するかということもセットで検討していく必要がまだ余地が残されていると思います。
既に今までも幾つか挙がっていましたけれども、ICTの導入であるとか、あるいは業務改善といったことでいろいろな事業が走っていると思うのですが、本来の目的はいかにICT を導入するかということではなくて、ケアの質やあるいは仕事の質を限られたリソースの 中でどう高めていくかということで、その観点から、まずは現場の業務の棚卸しをして、そこにある課題というものを発見して、その課題の中で、今回のテーマのようなテクノロ ジーなりの活用によって解決できるものはどのようなものがあるのかということが理解できて、そして、事業者さんの側がそもそもそういうオプションを知っていて、選ぶことが できて、そして、試行して浸透させていくというようなプロセスが必要なはずで、今、関連して様々な事業が存在していることは承知しておりますけれども、果たしてその事業者さん、それも小規模な事業者さんなどで今の業務の在り方というものをケアの質、仕事の質の観点から棚卸しして、その中でそれをよりよくしていくためにどういった選択肢があり得るのだろうかということをお知らせして選んでいただいてやってみるというような、そこのサイクルというものを応援するという形に十分なっているかどうかということは、 検証の余地が残されているだろうと思います。

令和5年4月27日 第216回 社会保障審議会介護給付費分科会(議事録)

「介護・看護3:1基準」に関しては、SOMPOケアの有料老人ホーム(特定施設)12か所で実証が行われ、その結果として12施設合計の業務時間は23%短縮し、Qラインを除く人員配置では、「3.25:1」での運営が可能ということです(ただし、平均要介護度や定員規模などにより、他施設にも横展開できる再現性のある成果なのかどうか…)。
以前は、「介護・看護4:1基準」が独り歩きしていましたが、「令和4年度介護事業経営概況調査結果」でも特養は「2.0:1」が実態であり、特養における基準緩和は現実的ではない印象を受けます。
上記の堀田委員の意見もあり、より丁寧な議論を希望します。

訪問介護と通所介護を組み合わせた新たな複合型サービス

8月30日の給付費分科会にて、「新しい複合型サービス」の中で議論されています。
訪問介護のニーズが高い中、ヘルパーの高齢化や採用難で人材確保が出来ないため、通所介護を併設している事業所も多いことから、新しい複合型サービスの提案がなされました。
私としては、ヘルパーの人材確保問題というよりかは、通所介護の新たな強みとして訪問介護の機能が生かせるのではないかという捉え方をしていました。

しかし、今回の給付費分科会では、事業所間の連携強化で済むのではないか、制度がなお一層複雑化する、人材確保の根本的な解決には至らないという意見があり、「複合型サービス」なので、地域密着型=市町村が指定権者となるため手あげしたくても指定されるかどうか、また小規模多機能型居宅介護とのすみ分けどうするなど、「必要ない」という意見も上がりました(個人的にはもう少し歓迎すような声の方が強いのかと想像していました)。

「引き続き、検討する」ということですが、訪問介護を持続させるための方策が暗礁に乗り上げた印象です。
私も現場にいた時は訪問介護でご飯作ったり、掃除したり、排泄介助したりした経験がありますが、なかなか今の若い介護職さん達からすると訪問介護って難しいのでしょうかね。。。

医療・介護連携、人生の最終段階の医療・介護

X(旧Twitter)でもポストしましたが、医療・介護のさらなる連携強化が取り上げられています。

<論点>
医療においてはより「生活」に配慮した質の高い医療を、介護においてはより「医療」の視点 を含めた介護を行うために必要な情報提供の内容や連携の在り方について、どう考えるか。

【資料2】医療・介護連携、人生の最終段階の医療・介護

特養の待機者については、医療対応が必要な方が上位に滞留しており、人生の最終段階における医療・介護の連携強化が求められています(待機者がそもそも減少しているという実態もあります)。
個人的に懸念「医療・介護連携」は皆さんもウェルカムだと思うのですが、医療側が介護側に領土を広げ、「生活」と「医療」のバランスが崩れてしまわないかということです。

現場にいても、最終的には本人や家族の意向で医療を受けるかどうかを決めてもらいますが、「医療」側の主張が強くなりすぎることで、看取りではなく病院で処置を受けながら亡くなる方が増加しかねないかなぁとか、「生活」がないがしろにならないかなぁと思っています。
逆に、「生活」をないがしろにしてしまう「医療」が求められなくなり、淘汰されることになるかもしれません。

情報提供の内容や連携のあり方について、「ケアプランデータ連携システム(全国で利用しているのは1608事業所だそうです)」のように、電子カルテとケアプランなどが一体となった情報シートを共有するみたいになると、名実ともに「医療・介護連携」になるのですが、どうしても「医療」と「介護」とのセクショナリズムは解消されませんね。

改定に向けた情報収集と"知恵"に転換

具体的な話は10月以降になりますが、改定に向けた情報収集はしていただきつつ、"知識"としてその情報を知ってるだけではあまり意味がありません(ネットで検索すれば、いろんなサイトで給付費分科会の記事を取り上げてくれています)。
その情報を生かして自施設・事業所が生き残れるよう"知恵"として対応策や方向性を考えておきたいところです。

管理人

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