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10年前に別れた彼氏を思い出した〜30までにとうるさくて〜


「30までにとうるさくて」という番組がAbema TVで配信されていたようだ。見てないけど(見てないんかい!)女子がジタバタする物語だろう。私もだったな、と10年前(!)を回想する。

当時私は地元である郊外の部品メーカーで働いていた。
入社すると「経営企画部」という社長直轄部署に配属された。高卒メインの地方の中小企業にあっては、東京の大学を卒業してるというだけでブレーン的な役割を期待されてしまっているのだろうか、嬉しいながらも何も出来そうにない自分に困惑していた。

国内外10社程度の関連会社の経営分析をするのが当座私の仕事。しかし大学卒業後は接客業だったためワードやエクセルはほぼ使ったことがなかった。

エクセルというのは、残酷なもので、操作を知っていれば一瞬で終わる作業が、知らないと平気で一日も二日もかかる。

途方に暮れ、いつも頼るのは隣の島の経理男子。デキない私に

「〇〇大学出てるなんて超頭いいですね」

みたいな事を言って励ましてくる。

いや、結局同じ場所に行き着くなら私大学行かなくてよかったじゃん。高いお金と時間費やして外国文学専攻、て貴族にも程がある。
大学入ってからも、資格取ったり、英語とかフランス語とか将来仕事で使えるようにって留学までしたのに。
プライドばかりで夢見がち、何もできない、なんて要領の悪い我が人生よ。

だって商業高校出身の彼の方が、高校時代に学校で習ったのあろう簿記とExcelの知識を使って、私よりよっぽど会社に貢献しているのだ。現に私の事務作業フォローしてるし。最低限の労力で手に入れた最低限の武器を最大限使いこなして世の中渡っていってる。
私みたいな気位の高さやひとりよがりなこだわりがなく、上の人も使いやすそうだ。
責任感も義務感もさほどないと見えて、作業員然と自分の持ち分だけ過不足なくこなす。大して野心もないからムキになることもなく、あらゆる理不尽もどこ吹く風とさらり受け流す。新聞なんて読まないし選挙も行かない。英語とかもちろん全然できないし、それに困ってない。海外に興味がないし、遊ぶなら県内で十分だからだ。小さな世界で軽やかに生きているといった感じ。

私にないものばかりを持っていて、さらに仕事で助けてくれる生き方上手な彼になんか惹かれてしまったんだ。結局20代後半を共に過ごした。彼からしても私のようなタイプは周りにいないと見え、面白がってくれていたように思う。
しかしこれ以上田舎に留まる事を私の上昇志向が許さず 30手前で別れてしまった。30までに…症候群だったのかな。この人と結婚して子供を産んでこのまま地元で一生を終えるのだろうか。私、こんなんでいいのかな。このままでいいのかな。私もっと東京で、世界で頑張りたい。そんな思いが強くなってしまったのだ。(懲りてない)

何度も壊しては直してもらった思い出のExcelシートは、部門コードを入力するとその部門のその月の経費が費目ごとに出てくるものだった。あれから10年は社会人やってるが、正直今あれ作れと言われてもいまだに作れないかも。上昇志向ある割にいまいち上昇していない空回りぶりが私らしくて可笑しい。

文:べみん

編集:アカ ヨシロウ

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