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『にしんのパイ』になるなかれ

駆け出しのライターとして出会ったメンバーたちが、毎回特定のテーマに沿って好きなように書いていく「日刊かきあつめ」です。 
今回のテーマは「#ジブリ」です。

「あたしこのパイ嫌いなのよね」

魔女の宅急便の一コマである。嵐の中やっとの思いで『にしんのパイ』を配達した先でキキは受取人にこんなふうに言われてしまう。

前回の日刊かきあつめのテーマは、#私のキライな人だった。そういや私、こういうなんでもズケズケサバサバ言っちゃう人キライかもしれない。

目の前のずぶ濡れのキキへの労いもないし、何より大好きな孫へ『にしんのパイ』を作ってくれた自分のおばあちゃんの気持ちに対して全く気持ちを巡らすことがないではないか。

しかしながら贈り物って難しいなと思う。我が両親にも孫がいる。弟夫婦のところの10歳男児である。気力体力共に衰えゆく中で唯一の生き甲斐と言ってもいいくらい孫の存在は眩しく可愛くて仕方ないようだ。時折義妹が気を利かせてLINEに送ってくれる孫の写真に毎回夫婦で大はしゃぎである。そんな孫の誕生日が近づくなんてなると、さあ大変。プレゼント選びに夢中になる。「あれはどうか」「これはどうか」と嬉々としてデパートを練り歩く。候補はブランド服だったりスポーツ用品だったり高級菓子だったりするのだが、結局決めきれずにいた。

そんなところへ弟から忠告が来た。

「いらんもんもらってもしゃあないからプレゼントを指定したい」

とのこと。

なんて無粋なんだ。老夫婦は孫の喜ぶ顔を思い浮かべてあれやこれや考えている時間さえも至福だというのに。叔母のわたしだってそうだ。あと言い方な、いらんもんて。

だけど確かに普段は一緒に住んでないから孫が今何にアツいか、なんてよく分からないもんな。

で、結局何が欲しかったと思う?

プレパラートとうんと長い名前の恐竜の模型。

一応説明するとプレパラートは理科の時使った顕微鏡にセットするプラスチックのあれ。
指定された恐竜は初めて聞くレアな名前で覚えることすら出来なかった。トリケラトプスとかティラノサウルスとかそういうんじゃないの。

全く予想外のリクエストに驚いた。
甥よ、なかなか個性的に育ってるな。
私も「鬼滅の刃」の塗り絵なんてどうかな、(安上がりだし小学生はみんな好きだろ)なんて思ってた自分が俗っぽい気がして恥ずかしくなった。

お望みの品を贈ったから少なくとも佐川のお兄さんは、キキのような塩対応されずに済んだに違いない。

文:べみん
編集:真央

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