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《感想文》『エスター ファースト・キル』

注意:軽微なネタバレを含みます。

2009年の洋画『エスター』の前日譚。『エスター』は僕のお気に入りのホラー映画なので、13年越しに新作が発表されたことは大変嬉しかった。

『エスター』の原題はOrphan = 孤児の意味だが、このタイトルが既に物語の伏線となっているところがとても好きだ。それからエスター役のイザベル・ファーマンが大変かわいらしい。ツインテールもクラシカルロリータ服も僕の趣味嗜好だが、秀逸な伏線もまた僕の趣味嗜好だ。実はチョーカーにおしゃれ以外の目的があったというくだりなんかは、その両方に刺さっている。好きだ、本当に好きだ、この作品。

エスター ファースト・キル』の良かったところは『エスター』の設定を綺麗に踏襲しているところだ。前日譚なのだからそれは当たり前なのだろうけれど、制作順はもちろん逆であるわけで、全てに対してきちんと整合性を取っているということは評価されるべき点だろう。細かいところに目を瞑らなくても良い続編ものというのは、意外と少ない。エスターの聖書、ピアノの腕前、ブラックライトを使った絵画手法、そして全焼した前の家。全てが『エスター』に自然に繋がるように描かれているところは本当に良かった。

「エスターの正体」という手の内がばれている状態で進行していく物語にどこまで魅力を生み出せるか、という不安が視聴前にあったのだが、杞憂だった。母と兄にも秘密があって、秘密を抱えている者同士でエスターを家に置いておくことに対する利害が一致する……シンプルだがなかなか凝った仕掛けだと思う。このシナリオを自分が考えたことにしたいくらいだ。いや、ただの観客ですけれども。

ラストシーンで、母とエスターが横並びでぶら下がって死にかけているシーンはちょっと面白かった。かなり変なシチュエーションだ。ホラー映画なのにどこか喜劇っぽい。登場人物が地面に落ちてからエンディングにかけての音楽も、同じく良かった。

最後に、僕が一番好きなシーンについて。エスターが車で逃亡しながらイケてるお姉さんに変身するところ。本人が楽しそうなのも良いし、あっさり捕まった後の表情も良い。定期的に見返したいくらい、最高のシーンだ。

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