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マタイ効果に関する超個人的見解


"持つ者"はどんどん得て、"持たざる者"はどんどん失う

ひとたまりもない効果である。例えば、絶賛恋人募集中の太郎君が、イブの夜にやけくそになって一人映画館を訪れ、チケット販売の列に並んでいたところ、前でカップルがイチャイチャしている。羨ましいなあ。この時点で彼は既に"持たざる者"だが、更にそのカップルでチケットが完売する惨事が起こった。恋人がいない。チケットもない。これがマタイ効果である。

そんな訳はない。恋人がいないこととチケットを買い損ねたことには因果関係がない。こんなものがマタイ効果だったらそれこそひとたまりもない。


マタイ効果には因果関係がある

例えば、裕福な家庭に生まれた次郎君は多くの習い事をし、旅行をし、塾へ通い、学校では優秀な成績が認められ、少数精鋭の特進クラスに。一流大学へ進学し、就職の選択肢も幅広い。営業マンとして入社したA社では目覚ましい成績をあげ高給取りに。潤沢な資金を元手に投資を始め、順調にお金を育てている。
一方、貧しい家庭に生まれた三郎君は、友達もたくさんいて楽しい学生生活を送ったものの、成績は中の下くらい。専門学校卒業後、就職を果たしたが、生活費が賄えるくらいの給料で、投資に回せるようなお金が作れるはずもなく、家計は自転車操業状態。

うむ、これならマタイ効果然としている。次郎君は生まれたときから三郎君より幅広い経験を積むための土台が出来上がった環境に身を置き、その結果、やはり次郎君のほうが所謂"成功"を掴んでいる(無論、いい環境の上に、次郎君の努力があったからこそであることは間違いないが)。


幼少期の年齢的マタイ効果に要注意

「今日持てる者が優遇されて明日更に持てる者になる」というマタイ効果において、ひとつ憂慮されるのは、幼少期の年齢的なマタイ効果である。「早生まれが不利」というのは統計的な調査でも示されていることらしい。

30歳の私が10ヶ月年下の後輩に「わたし、お茶の淹れ方わかりません。だって10ヶ月年下だも~ん」と言われたら「ぶん殴るぞ」となる訳だが、小学一年生にとっての10ヶ月はかなり大きい。10ヶ月上の大先輩と比べられて、「あの子は勉強が苦手」なんて思われたら「そんな殺生な…」と思う。小学生が「まだ私10ヶ月若いのに殺生ですわ…」と言えたらまだいいが、そんなことは露も思わず自信を失う可能性があるし、先生たちからの評価もいいものにはならないかもしれない。

かと言って、4月生まれで成績が伸び悩んでいる子を心配しすぎるのも違うと思うし、ここは難しい。「なんか早生まれの成績が平均的に良い傾向っていうデータが出ているのね」とサラッと捉えておくくらいでもいいかもしれない。何が一番大事かというと、ちょっと間違えたりわからなかったからと言ってできない子と決めつけず、その子のバックグラウンドも考えながらきちんと向き合うことだ。できないと決めつけられるのが早生まれの子が多いという話であって、どの子にもそんな状況はあるべきじゃない。


絶望ではない。むしろ希望だ。

いま自分が"持たざる者"と思う人にとってマタイ効果は絶望的な話だ。しかし、この効果はちょっとだけ都合よく捉えると、結構前向きになれる考え方だと思う。
もしかしたら、いままで培ってきた知識や経験の量が違うだけなんじゃないか。彼らのほうが多くのことを学んだなら、自分が彼らよりできないのは、ある意味当たり前のことで、自分の潜在能力の低さが露呈したものとは違うと考えることができる。いずれにしてもそこから鍛錬を積む必要があるし、それには結局お金があったほうが良かったりする。しかし私が思うに、人が努力するために一番大事なものは、お金や仲間の前に、何より「活力」である。今からやったって遅いとか、お金がないから何もできないといった負の感情を打破するには活力が必要で、活力を持つためには自己肯定感が絶対的に必要なのだ。


持たざる者から持つ者となった2人

マタイ効果の反対例になっているかはさておき、貧しい環境から財を成した有名人の話で、結構好きなものを2つをピックアップしておく。

スティーブジョブズの養父母は決して裕福ではなかったが、彼は無邪気にも学費が高額な大学に入学した。経済面の負担と大学で得られるものを天秤にかけ、彼が中退を選択したのは有名な話だ。私が好きなのは、彼は中退後も暫くモグリで大学の授業を受けていることである。学費を払って通っている人たちが馬鹿馬鹿しくなりそうだが、今となっては世界のスティーブジョブズなので、まあいっかとなるというか、最早なんだか愛おしい話である。

エルヴィスプレスリーはとても面白い例だと思う。彼も貧しい家庭に育ったが、14歳ごろから黒人居住区の白人用住宅で生活していたという特徴がある。この環境があったからこそ、カントリーとブルースを融合した新しいジャンルは生まれたのかもしれない。これはマタイ効果とか努力とかより、運が大きい。

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