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サブカル大蔵経424白石豊『本番に強くなる』(ちくま文庫)

 プレッシャーという言葉を不意に意識する時があります。意識なんかしていないと思う時ほど、うまくいかない気もします。

 スポーツ選手のメンタルトレーニングという分野に、内観、ヨーガ、正法眼蔵という東洋思想の知識が活用されていく本書。

 著者の白石先生が、元阪神の下柳を支えていく姿は往年の王=荒川コンビのよう。ここまで親身にコーチングしてくれたら心強いだろうなぁと思いました。下柳はそれをPRIDEのセコンドで桜庭に伝授してたのかなぁと妄想しました。

 知見が方程式やマニュアルにビジネス転化されていくことへの抵抗や、内観などの宗教的実践に怪しさを感じたりもしましたが、こころと向き合うことがこうやって考えられ、こうやって現場に生かされるのはすごいなぁと思いました。

 そして、精神統一とか瞑想という言葉よりも、メンタルトレーニングやマインドフルネスという言葉の方がメジャーなんだと認識しました。インド哲学や仏教はそうやって現代に咲いているのかもしれません。

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うちはね、80%位出せば日本一になるよう日ごろから教えているんですよ。【能代工業加藤監督】。p.13

 全国の名監督のスタイルに学ぶ。プロよりアマチュアの方が、コーチのプロかも。

挑戦だけが成功や勝利につながるものだと言ってよい。p.75

 挑戦という言葉に奮い立たされる。

スポーツ選手の心が乱れるのは、インプレイの時よりも、その前後にあるインターバルタイムにある。ゴルフはメンタルのスポーツとよくいわれるが、それはこのインターバルタイムが非常に長くまた不規則だからである。p.81

 この文章が印象深く、休憩という時間の良さと難しさを知らされました。

人間の心には、セルフ1 (自我)とセルフ2(自己)という2人の自分が住んでおり、セルフ2の働きに任せておけば、運動を自然に習得したり修正したりする能力を本来持っている。しかし通常はセルフ1がそれを妨害しているために、学習効率が落ちてしまう。p.174

 大脳と小脳か、阿頼耶識と末那識か。考えるな、感じろ。

この五感のうちの1つの感覚の働きだけを鋭敏にし、残りの4つの働きを止めると、外部から入ってくる情報は極端に少なくなり、その結果、比較的容易に精神集中の状態に入っていくことができる。p.182

 男塾でも語られそうな真理に学ぶ

ヨーガ本来の目的は、自らに気づき、心と体を整えると言う点にある。p.186

 インド哲学のヨーガ学派本来の姿勢。

内観は吉本伊信氏が自身で体験した浄土真宗の「身調べ」をベースにして、苦行性や宗教性を除いて、誰もが行えるようにした日本製の精神療法である。1953年奈良の大和郡山市に日本ではじめての内観道場を開設。p.249

 内観のことはよく知らなかったんですが浄土真宗ルーツなんですね。宗教が会社の修養に転移した形なのかな?

自分にありがとうと言ってあげれば、言われた自分が嬉しくなる。p.255

 ありがとうという言葉の力

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