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サブカル大蔵経288グレッグ・イーガン/山岸真編・訳『しあわせの理由』(ハヤカワ文庫)

科学の先の世界。人間が新しい苦しみを持つ世界。SFの生老病死。

SFの短編集。「適切な愛」と「しあわせの理由」が印象に残りました。

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その言葉に私は初めて激しく動揺して、そして思った。何がいけないの?p.11

 タブーは何故存在するのか。やはり理由はあるんだ。

クリスとはクリスの脳のことだ。p.11

 インドの説話にも似た台詞があります。

私は横になったまま何時間も、シーツの端で顔の汗を拭い、体の震えを止めようとしていた。p.28

 宿すことによる自分の身体の崩壊感。

私は死も踏みにじったし、母性も踏みにじった。ざまあみろだ。p.32

 この部分は、ターザン山本の台詞に似ている。「ざまあみろだ」は、誰に向けられた言葉なんだろう。〈かまって欲しい〉の裏返しか。

私はこの出来事のどこにも本気で感動していない。p.36

 バカ負けならぬ、奇跡負けか。

僕は急にめまいを感じて、声を上げて笑った。「つまり、僕が同意したら、大学の倫理委員会が僕の好きな音楽や、好物や、新しい天職を選ぶわけですか?僕がどんな人間になるかを、委員会が決める?」それはそんなに悪い話だろうか?p.391

 「倫理委員会」が患者にとってどんな位置づけなのかよくわかるセリフ。


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