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外資系の年収が高い理由

「スマートフォンといえば、日本ではどのメーカーのシェアが高いか」と聞かれたら、どのメーカーを想起しますか?おそらく多くの方々は某外資系ブランドを想起するでしょう。

技術力が高い日本企業が数多く存在する中でも、外資系の製品が日本で高いシェアを獲得できたのは、世界的に高いブランド力と独自の製品開発戦略に加え、優秀な人材を採用し、緻密な販売戦略を立て、市場の開拓に成功したことは容易に想像できます。外資系企業は「それなりに高い給料を提示した上で、いろいろと工夫しなければ優秀な人材は採用できない」という原則・原理を理解し、それを実践しているのです。


1、外資系企業の中途採用年収が日系より高い理由


「外資系企業は日系企業より給与が高い」というイメージを持っているのではないでしょうか。
そのイメージはおおむね正しいです。

英語と年収の関係の大きな要素を占める「外資系の年収」

転職時の年収と英語力が相関する背景には、英語力のレベルが大きく関係する「外資系」ならではの要素があります。外資系企業といっても、海外の方針や文化が浸透している外資色の濃い企業から、日本に長年定着している日本的な外資系企業までさまざまですが、ここでは一般的な視点でご説明します。


2、日系企業の高給ポジション、内部昇格が中心


外資系の年収が高い理由は4つ。

●外資系は高給なポジションを外部から採用するケースが多い
●採用の際、日系より外資系の方が高いポジションに就きやすい
●日本に進出してくる外資系は生産性が高い高成長企業が多い
●外資系は職務の大きさに対して給与を支払う傾向がある


日系企業は給与の高い上級管理職などのポジションは内部昇進が中心のため、社外に求人が出にくいです。一方、外資系企業の高い給与のポジションは比較的社外に求人を出すことが多くなります。

日系企業はポジションに空きが出た場合、基本的に社員を上のポジションに異動させ、それで不都合がある場合は別部署から横や斜めの玉突き異動を実施してポジションを埋めます。これに対し、外資系企業は該当するポジションの人材を社内外から探します。特に、短期の視点で考えた場合、即戦力としてベストの人材は同業他社で同じポジションを務めている人材であることが多く、結果的に社外から採用するケースが多くなります。最近のはやりの用語でいえば、「ジョブ型」の採用です。

さらに、多くの外資系企業は本国からの駐在赴任者(エクスパット)が日本法人のトップに就任しています。このトップの人材は本国からの派遣者であるため、数年で本国へ帰任するケースや、別の国へ赴任していくことも多いです。その際、後任として本国から来る新トップは新しい自分のチームを一から編成することも多いため、幹部候補などの高給ポジションがよく外部に求人として出てくることになります。当然、そのポジションに転職できる機会が増えるというわけです。

また、外資系企業では本国からの赴任者だけでなく、日本人のトップも同業他社へ転職することがよくあります。その際、属人的なやり方が互いに分かっている幹部たちも追随して転職することが多くあります。それにより、このケースでも高給な幹部ポジションの空席が外部に出てくることになり、そのポジションに転職できる機会が増えるのです。


3、日本進出の外資系は生産性が高い


海外に進出して事業を展開する外資系は一般的に単一国だけで運営する企業より生産性が高く、海外でも製品やサービスを販売・展開できる企業です。

地場の企業と同レベルではなく、それを凌駕(りょうが)する強みと海外進出する確証や自信を持っています。

もちろん、これは外資系だけでなく、日系グローバル企業にも当てはまります。

生産性とは別の話になりますが、国境を越えて進出できる体力がある成長企業が多いことから、進出する国で成長するための投資の目的も込め、高い年収を提示して人材を外部採用するのです。


4、外資系は人事より採用部門が待遇の裁量権を持つ


日系が人材を採用する場合、一般的に本社の人事部が決めた給与体系の中から諸条件を決めてオファーを出します。

一方、外資系は給与体系の最低限の条件が相対的に緩く、基本的に人材を採用する部署の責任者が待遇を決めることができるなど、いわゆる採用の裁量権は各部門に属しています。
このため、もし採用される人材が高い市場価値の方であれば、高い年収のオファーを得やすくなるのです。これが日系と外資系の大きな違いです。

また、日系と外資系では給与の支払い方式の違いから、結果的に外資の方が高くなる要素もあります。

日系の特徴として「年功的昇進・昇給」「遅い昇進」などの文化が根強く、外資系はその逆です。特に、営業職や経営などのポジションでは成果主義の度合いが高いケースが多く、好成績の時はインセンティブで高い給与が支給されます。

外資系は日系に比べると人件費は固定費ではなく変動費的な扱いでもあるため、「人件費=固定費」と考えている日系に比べ会社側としてのリスクは低くなります。その分、高く給与を払ってもよく、個人にとっては変動リスクが高いだけに、期待値としては高い年収が得られることになります。

なお、外資系では図表の理論年収に加え、業績に応じて支払うインセンティブ・ボーナスやストックオプションなどの金額を加算して支給する企業も多く、これらを含めると給与額はさらに高くなります。これに対し、日系では当初は金額が未確定の時間外手当や社宅、退職金といった要素が図表の数字以外の金銭的な報酬として存在します。

日系が多く採用している「能力は下がらない前提かつ大抵年功的に運用される『能力給』」に比べ、外資系は「職務給」である企業が多いため、特に30代ぐらいまでの若手の候補者にとっては、日系の年功的給与に比べ、若くして高いポジションに就けば高い給与を得ることができます。


5、外資系は職務に対して給与支給


日系は部署異動をしても給与額が下がることはほぼありませんが、外資系は職務に対して給与を支給する考えのため、その職から外れるとその給与も支給されなくなります。これが会社側としては比較的容易に高い金額が出せる理由ですが、個人としてはその職から外されることを考えるとリスクになります。

ここまで述べた通り、外資系企業の年収が高いことにはさまざまな理由があり、読者の方々の中には「外資系は年収が高いけれど、その分だけ仕事は厳しいな」と思った方もいるかもしれません。しかし、外資系で高い年収のポジションが多く募集される理由は、転職を考える際の選択肢として十分に合理的なものです。

外資系の中途採用市場では比較的高年収の求人が多く出ており、これは現在の高給を維持もしくは年収アップの企業選びの選択肢が大幅に増えるということです。

従来から指摘されている通り、典型的な日本の大手企業のミドル層以上の人たちが、高い給与を維持したまま転職する手段がないため、我慢して会社にしがみつかなければならない状態、いわゆる「ホールドアップ」問題に悩まされている状況を鑑みると、転職して現状を打破できる機会が大幅に広がっていると言えます。

外資系は仕事の実力や結果を短期間で判断し、仕事自体に対して高い報酬を払う文化があり、それが魅力的と思う方にはチャレンジをする価値が十分にあります。これまで培った専門性や経験を生かし、高い年収で転職する手段として、英語を使う外資系を視野に入れることは選択肢の確保という点でも大きな価値があるでしょう。

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