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向田邦子さんのエッセイ

2023年の最後は文春文庫「精選女性随筆集 向田邦子 小池真理子選」を読み終えた。

思えばここ数年、向田邦子さんをよく読むようになった。

ちくま文庫「向田邦子ベストエッセイ」
文春文庫「向田邦子を読む」
新潮文庫「向田邦子の恋文」
河出書房ムック「総特集 向田邦子 増補強版」

今回の本は、本屋さんで見るたびに気になっていて、先日購入した。

早速読んでみると、ページをめくる手が止まらず、1日であっという間に読み終えてしまった。読んだことあるエッセイもあったけど、新鮮な気持ちで読めて、楽しかった。

実は「向田邦子ベストエッセイ」を読み始めた当初、どんな人か分からずに読んでいたので、内容が頭に入らず、読み終えるのに3年も掛かったという思い出がある。

1回ムック本挟んでみて、また読むこと繰り返していくうちに、良さに目覚めて一気に好きになった。

一度好きになると面白いくらいスラスラと頭に入って、流れるように読めるから不思議。

選者の小池真理子さんによる、まえがきも良い。

向田さんの訃報を聞いた時の心境をこのように書いている。

きらびやかな美しい舞台を鑑賞している時に、いきなり何の予告もなく黒い緞帳が下ろされ、あたりが暗転してしまった時のような、虚を衝かれた悲しみ

「ふいに緞帳が下りて」P13より


向田さんの死はあまりにも突然で、しかもご本人にとってはこれからというタイミングだった。

この時の人々の心境は、当時を知らない私には想像するしかないけど、まえがきのタイトルにもなっている「ふいに緞帳が下りて」を読むと、かなり衝撃なニュースだったと思う。

向田さんの文って、人間を描いている、それも「らしさ」ではなく「くささ」であるところが好き。

日々の出来事を書く。しかもシンプルにあっさりと、そして1本筋が通った文章。それがまた良い。

解説にもあった言葉で気付いたこと。

向田邦子のエッセイにはおおむね心理描写がない。人間の行動が淡々と記述されているだけである。

解説 高橋行徳氏 P257


あれこれ細かく書かれていて、しかも濃度高めな文だと、読む時にかなりのパワーを使う。

個人的な好みだけど、それで疲れやすいので、昔から短編集やエッセイばかり読んできた。

だからか、向田さんの文章は読んでいて心地よい。何気ない日常の中にハッと気付く。そんな瞬間が好きなんだと思う。

母からもらった「思い出トランプ」、また読み返してみよう。