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古典文学を現代語訳します(今は主に芭蕉です)。楽に読め、それでいて省略や余計な付け足し…

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古典文学を現代語訳します(今は主に芭蕉です)。楽に読め、それでいて省略や余計な付け足しのない訳を心掛けています。大学で文学を教えています。ヘッダー画像は、芭蕉も眺めた敦賀(福井県)の海です。 https://twitter.com/mo_okazaki

最近の記事

松尾芭蕉も敦賀を旅しました。敦賀滞在についての芭蕉の文・現代語訳

2024年3月16日、北陸新幹線の金沢~敦賀間が開業します。 敦賀を訪問する方も増えそうです。 今から330年あまり前の元禄2年(1689)8月(旧暦)に、芭蕉も敦賀を訪れていました。『おくのほそ道』の旅の終盤で、金沢・小松・福井などを経て敦賀に8月14日到着。ここに数日滞在しました。 以下に紹介するのは、俳人・東恕(とうじょ)が残しておいた芭蕉の文です。「デジタル版日本人名大辞典+Plus」(講談社)によると、東恕は敦賀の人で、支考(芭蕉の弟子)に俳諧を教わったのだそう

    • 伊賀上野で3月10日まで公開中の芭蕉真筆について

      三重県伊賀市・芭蕉翁記念館で開催中の「俳句が先か、絵が先か」展では現在、 芭蕉筆許六画「茸狩や」発句画賛 が公開されています。芭蕉の弟子・許六(きょりく・絵においては芭蕉の師匠でした)が小枝に刺された二つの茸(松茸?)の絵を描き、そこに芭蕉が句を記しています。今回はこの句をご紹介します。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 〈茸狩やあぶなきことにゆふしぐれ〉たけがりやあぶなきことにゆうしぐれ (きのこ狩りをしたが、帰ったら夕しぐれが降ってきた。あぶないところだった

      • 山形の展覧会案内に掲載されている芭蕉の句

        現在、山形市の山寺芭蕉記念館では企画展「収蔵名品展」が開催されています(2月5日まで、水曜休館)。 記念館の企画展案内ページに画像として掲載されている芭蕉の句をご紹介します。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 〈はるもややけしきととのふ月と梅〉はるもややけしきととのうつきとうめ (月と梅が同時に楽しめる。ようやく春の情景も整ったのだ) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ この句は元禄6年(1693)の作です。記念館の画像を見ると、弟子の許六(きょりく・絵にお

        • 伊賀の展覧会で見られる芭蕉真筆の短冊!

          現在、伊賀市の芭蕉翁記念館では、 【芭蕉翁生誕380年記念 俳句が先か、絵が先か】展が開催されています。 会期は1月6日から3月10日まで、会期中の休館日はありません。 (共催するミュージアム青山讃頌舎(あおやまうたのいえ)は1月13日~2月18日、火曜休館) 詳細は伊賀市サイトへ 会期中に展示替えが行われますが、 まず1月6日~2月1日までは、芭蕉翁記念館で 芭蕉筆「木のもとに」発句短冊が公開されます。今回はこの句をご紹介します。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・

        松尾芭蕉も敦賀を旅しました。敦賀滞在についての芭蕉の文・現代語訳

          冬の夜の芭蕉【その3】。『寒夜の辞(かんやのじ)』現代語訳

          3回目は、『寒夜の辞』をご紹介します。天和3年(1681)の作ですので、以前ご紹介した2作より5年ほど前のものです。 この前年(天和2年)の冬に、芭蕉は江戸の市中から深川に移り、詩人としての歩みを本格的に始めました。 この『寒夜の辞』発表の年には、弟子から芭蕉(植物)を贈られて気に入り、「芭蕉」という俳号を使うようになりました。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 深川三股(みつまた・隅田川と小名木川の合流地点を指す地名)のそばの草庵でもの静かに暮らし、遠くは富士の

          冬の夜の芭蕉【その3】。『寒夜の辞(かんやのじ)』現代語訳

          冬の夜の芭蕉【その2】。『雪丸げ(ゆきまるげ)』現代語訳

          前回は、『閑居の箴(かんきょのしん)』という松尾芭蕉の短文を訳しました。 今回はそれよりも明るい雰囲気の短文(句を含む)をご紹介します。『閑居の箴』と同じ冬(貞享3年、1686年)の作と考えられています。 「雪丸げ」は「ゆきまろげ」とも言いますが、雪を丸めてころがし大きな玉をつくる子供の遊び(あるいは、その玉)のことです。 文中に出てくる曾良(そら)は信州出身の芭蕉の弟子で、『おくのほそ道』の旅に同行した人物として有名です。今回ご紹介するのは、曾良が37歳になる年(現在

          冬の夜の芭蕉【その2】。『雪丸げ(ゆきまるげ)』現代語訳

          冬の夜の芭蕉。『閑居の箴(かんきょのしん)』現代語訳

          松尾芭蕉の短い文(句を含む)をご紹介します。 『閑居の箴(かんきょのしん)』というタイトルは芭蕉ではなく、後に弟子の支考がつけたものと考えられているようです。「閑居」は世間と離れて静かに住むこと、「箴(もとの意味は「治療に使う針」)」は戒(いまし)めの文章(や、その文体)を指します。でも、内容から戒めというほどのものが読み取れるかどうか・・・。 貞享3年(1686)、現在の年齢の数え方で芭蕉が42歳になる年の作です。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ああ、自分は

          冬の夜の芭蕉。『閑居の箴(かんきょのしん)』現代語訳

          松尾芭蕉は松島で句を詠んでいた!〈松島〉現代語訳

          『おくのほそ道』で芭蕉は、「松島で見る月はどんなに良いだろうか」と、松島を訪れることを旅の目的のひとつとしていました。そしてついに松島の絶景を目の前にした時のことを、 「神がつくられたすばらしい景色を、誰が十分に絵にしたり詩文に表現したりできるだろうか。(中略)私の方は、句を作るのをあきらめて眠ろうとしたが寝られない」 と記し、同行者の曾良(そら・芭蕉の弟子。信濃の人)の句のみを載せました。句を作ることができなかった、ということになっています。 詳細(『おくのほそ道』現

          松尾芭蕉は松島で句を詠んでいた!〈松島〉現代語訳

          松尾芭蕉「古池や・・・」の「古池」はどこ?

          先日は、「名月や池をめぐりて夜もすがら」の「池」について紹介しました。 今回は、芭蕉の句に詠まれた池としてはもっと有名な、 古池や蛙飛こむ水のおと ふるいけやかわずとびこむみずのおと の「古池」について考えたいと思います。実は滋賀県と京都府の境近くにある岩間寺(西国三十三所の第十二番札所)に、芭蕉がそこでこの句を詠んだと伝わる「芭蕉の池」が存在します! そこにある石碑の説明では、 芭蕉が岩間寺に参籠して供養塔を建てた「霊験」(れいげん・祈願することによって神仏から与

          松尾芭蕉「古池や・・・」の「古池」はどこ?

          〈展示替え重要情報〉「月を愛でる俳人たち」展(奥の細道むすびの地記念館・大垣市)で展示中の芭蕉直筆短冊2点のうち1点(「三日月や」)は、明日10月29日までの公開です!この情報は記念館サイトにもありません。ご覧になりたい方は、お急ぎください!

          〈展示替え重要情報〉「月を愛でる俳人たち」展(奥の細道むすびの地記念館・大垣市)で展示中の芭蕉直筆短冊2点のうち1点(「三日月や」)は、明日10月29日までの公開です!この情報は記念館サイトにもありません。ご覧になりたい方は、お急ぎください!

          大垣の展覧会で見られる!芭蕉短冊について(その2)

          前回(その1)に引き続き、「月を愛でる俳人たち」展(大垣市奥の細道むすびの地記念館、2023年10月7日~11月19日)で展示される芭蕉筆短冊の2つ目をご紹介します。 〈月清し遊行のもてる砂の上〉つききよしゆぎょうのもてるすなのうえ この句は「おくのほそ道」に出てきます。現福井県敦賀市で詠まれたものですが、作句の事情も分かりやすいかと思いますので、以前に訳した「おくのほそ道(下)」の「55・敦賀」章の一部を紹介します。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ その夜、

          大垣の展覧会で見られる!芭蕉短冊について(その2)

          大垣の展覧会で見られる!芭蕉短冊について(その1)

          現在、岐阜県大垣市の奥の細道むすびの地記念館で、「月を愛でる俳人たち」展が開催されています。 (2023年10月7日~11月19日) 大垣市奥の細道むすびの地記念館・展示案内のページ 展示品には芭蕉筆の短冊もありますが、今回はそのうちの1つをご紹介します。 展覧会のチラシには〈芭蕉筆「三日月や」句短冊〉が展示されるとありますが、「三日月や」ではじまる、ということで考えられる芭蕉の句は2つあります。 私はまだ展示を見に行っていませんが、伊賀市(三重県)が所蔵しているものだ

          大垣の展覧会で見られる!芭蕉短冊について(その1)

          「中秋の名月」と「仲秋の名月」

          陰暦8月15日の月は中秋の名月といい、「中秋」という文字が使われることが多いようです。 「名月」は、陰暦8月15日か9月13日の月を指します(両日とも月見の行事の日)。 「中秋」は陰暦8月15日のことなので、「中秋の名月」は、いわば〈8月15日の方の「名月」〉(9月13日の方の「名月」ではなく)ということでしょうか。 もうひとつ、「仲秋」という表記がありますが、これは陰暦8月を意味します。 「仲秋の名月」の方も目にすることがありますが、この場合は〈8月の方の「名月」〉(

          「中秋の名月」と「仲秋の名月」

          松尾芭蕉の有名な句「名月や池をめぐりて夜もすがら」の「池」はどこ?

          京都・嵯峨の広沢池(ひろさわのいけ)に、下の写真のような石碑があります。 よく見ると、碑の右側面に芭蕉の句が。 〈名月や池をめぐりて夜もすがら〉とあるようです。貞享3年(1686)、芭蕉が42歳(今の数え方で)になる年に作った、よく知られている作品です。この句は、 (中秋の名月が出ている。月を映す池の周りを一晩中歩き、飽きることなく月を眺めたことだ) というような意味です。 広沢池は古くから観月の名所で、歌にも詠まれてきました。そこに芭蕉の句が刻まれた石碑が設置され

          松尾芭蕉の有名な句「名月や池をめぐりて夜もすがら」の「池」はどこ?

          特別公開される芭蕉の有名な手紙の概要―第77回芭蕉祭特別展「手紙のひと 芭蕉」

          2023年9月15日から12月24日まで、伊賀市の芭蕉翁記念館で 第77回芭蕉祭特別展「手紙のひと 芭蕉」が開催されています。 詳細は伊賀市公式サイト・特別展情報 会場には特別公開資料があるのですが、そのうちの1つが、 「元禄5年2月18日付芭蕉筆曲水宛書簡」です。 (展示期間は9月15日~10月12日です。ご注意ください!) 元禄5年(1692)2月18日、江戸にいる芭蕉が弟子の曲水(きょくすい)に宛てて書いた手紙です。曲水は本名・菅沼定常、近江・膳所藩(現・滋賀県)

          特別公開される芭蕉の有名な手紙の概要―第77回芭蕉祭特別展「手紙のひと 芭蕉」

          松尾芭蕉関連記念館・資料館のサイト一覧

          芭蕉関連の記念館・資料館のサイトを以下にご紹介します。 訪問される際に参考にしていただければ幸いです。 上の写真は三重県伊賀市の芭蕉翁記念館です。 ================================================== 【1】芭蕉翁記念館・芭蕉翁生家・蓑虫庵(芭蕉翁顕彰会のサイト。三重県伊賀市) 芭蕉と故郷伊賀上野についての説明、略年譜、上記3施設の説明、伊賀上野の芭蕉ゆかりの地案内、販売品の紹介、伊賀の芭蕉句碑めぐりなど。 ======

          松尾芭蕉関連記念館・資料館のサイト一覧