イスラエル・ハマス及び関連する国家、組織の関係

報道ベースで各国・組織の関係図をなるべく簡潔に図にしてみました。
なるべく簡潔に主要なところだけを抜き出して整理したつもりですが、見ずらい複雑怪奇な図となってしまった。

なお、線の繋がりが無い国家・組織間においても何ら協力関係もしくは対立関係がないと言う意味ではありません。あくまで今回の紛争を中心に据えて主に関わりのある関係を図示したものです。何を中心に据えるかによっても図の内容は変わるでしょうし、時系列によっても変化するため、下図はこれを書いた時点での各国・組織の関係の一側面に過ぎません

関係図

報道でも物事をわかりやすく伝えるためにこういった関係図などが示されますが、その図は何に主眼を置いて書かれているものかという事を考えた上で理解することが大切です。主眼とするものが変われば自ずとまたその図も変わる事が大いに有り得るからです。立ち位置や時刻を変えるだけで、同じ風景でもガラッと変わって見えることがあるように、関係を図示すると言う行為はある時点での一側面を切り取ったものに過ぎません。



最初にイスラエル及び、イスラエルと直接戦闘状態にある各武装組織について、簡単に概略を記載します。


イスラエル

1947年、国連はパレスチナをユダヤ人国家とアラブ人国家に分割する「パレスチナ分割決議」を採択。しかし、アラブ諸国は決議を拒否し、イスラエル建国を承認しませんでした。

1948年5月、イスラエルは建国宣言を発表、これを受けて、アラブ諸国はイスラエルに侵攻し、第1次中東戦争が勃発しました。この戦いに勝利したイスラエルはパレスチナの一部を占領。その後、イスラエルとアラブ諸国は、第2次中東戦争(1956年)、第3次中東戦争(1967年)、第4次中東戦争(1973年)を戦い、イスラエルはいずれの戦争も勝利し、パレスチナの占領地をさらに拡大しました。

これらの出来事により、米国の強い支持を受けているイスラエルは中東地域の強国としての立場を築きました。現イラン政権とは対立関係にあり、小規模ながら直接・間接的な軍事衝突を繰り返しています。

1993年、イスラエルとパレスチナ解放機構(PLO)はオスロ合意を締結し、和平プロセスが始まりましたが、その後も両者の対立は続いており、完全な和平は実現していません。

建国当初、アラブ諸国もパレスチナの側に立ちイスラエルと激しく対立しましたが、米国の仲介により1979年にエジプト、1994年にヨルダンと国交を正常化。さらに、2020年にUAE、バーレーン、スーダン、モロッコとも国交正常化が行われました。

これに加え、2023年時点で同じく米国の仲介でサウジアラビアとの国交正常化交渉が進められていましたが、10月7日のハマスのイスラエルに対する大規模テロ(報道によると犠牲者1400名以上)をうけ、イスラエルはハマスの殲滅を宣言し、自衛権の行使としてガザ自治区に激しい空爆と地上軍による侵攻を開始。

これによりガザ地区において多くの民間人(パレスチナ人)の死傷者が発生したことから、イスラエルとサウジアラビアの国交正常化交渉は凍結されることとなりました。


ハマス

ハマスは、1987年に、ガザ地区のシャティー難民キャンプで活動していた社会福祉団体「イスラーム慈善協会」が、第1次インティファーダ(イスラエルに対するパレスチナ住民の大規模な蜂起)の発生を受けて、実力行使部隊を伴って形成されたのが始まりです。

ハマスの思想的背景には、イスラム原理主義思想の影響があり、イスラム法に基づく社会秩序の樹立を目指しており、イスラム教をパレスチナの国家宗教とすることを主張しています。また、イスラエルとの武力闘争を容認しており、イスラエルの占領からのパレスチナの解放を掲げています。

ハマスは、ガザ地区の自治評議会選挙で2006年に勝利しますが、穏健派と言われるアッバス議長率いるヨルダン川西岸のパレスチナ自治政府と対立。パレスチナ自治政府と袂を分かち、ガザ地区を実効支配しています。しかし、イスラエルはハマスをテロ組織とみなしており、対立が続いています。

ハマスはパレスチナ人を代表する組織ではないと言うのがパレスチナ自治政府の公式な見解です。しかし、残念ながらパレスチナ自治政府事態もパレスチナの人々から十分な指示を得られていないと言うのが現状のようです。

ハマスの組織は、大きく分けて政治部門と軍事部門の2つに分けられます。政治部門は、自治政府の行政府や立法府を担当しています。軍事部門は、イスラエル軍や入植者に対するテロ攻撃を実行しています。

2023年10月7日にイスラエスの大規模なテロ攻撃を実施。1万発近いロケット弾をガザ地区よりイスラエル国内に発射。同時に複数箇所からイスラエル国内に侵入し銃撃戦を行い、イスラエル側の被害者は1400以上とも言われ、200名以上の人々を誘拐したとされています。


ヒズボラ(レバノン)

ヒズボラは、レバノンのイスラム教シーア派の武装組織・政治組織です。1982年に、レバノン南部に侵攻したイスラエルに対して抵抗する目的で設立されました。

ヒズボラの設立の背景には、1975年から1990年にかけて続いたレバノン内戦があります。この内戦で、レバノン南部はイスラエル軍の占領下に置かれ、シーア派の住民は大きな被害を受けました。

こうした状況の中で結成された急進的シーア派イスラム主義組織で、非イスラム勢力(イスラエル、欧米など)に対する抵抗運動をするために結成されました。

ヒズボラは、イスラム革命を掲げ、レバノンのイスラム化と、イスラエルからの解放及びイスラエルの殲滅を目標としています。そのため、イスラエルや、レバノンの穏健派政党であるレバノン共和国自由党(LFP)とは対立しています。

ヒズボラは、武装闘争と社会福祉活動の両面で活動を行っています。武装闘争では、イスラエル軍に対するゲリラ戦を展開し、数多くの戦果を挙げています。また、社会福祉活動では、学校や病院などの施設を運営し、レバノン南部のシーア派住民の生活を支えています。

ヒズボラは、レバノン南部で大きな影響力を持ち、レバノンの政治にも大きな影響を与えています。

ヒズボラはイランの支援を受けている世界最大の武装組織とみなされています。ハマスとは協力関係にあると言われており、ハマスはヒズボラを通してイランから軍事技術の供与を受けたとも言われています。

ハマスによるテロ攻撃が行われて以降、散発的ながら国境越しにイスラエルへの攻撃を行っていますが、これを書いている時点では本格的なイスラエルとの戦闘には発展していません。


フーシ派(イエメン)

フーシ派は、イエメンのシーア派の武装組織です。正式名称は「イエメン革命最高評議会」であり、アブドゥルマリク・フーシが最高指導者を務めています。

フーシ派は、1990年代に、サウジアラビア国境付近のイエメン北部で、シーア派のイスラム教学者であるフーシの周りに結集した学生や活動家によって結成されました。

フーシ派は、イエメンの政治的・経済的・社会的不正を批判し、改革を求めていました。しかし、サウジアラビアを中心とするアラブ諸国による支援を受けるイエメン政府との間で対立が激化し、2015年から内戦状態に突入しました。

フーシ派は、内戦の中で、イエメンの首都サヌアを制圧し、政府を追放しました。その後、イエメン北部と西部を支配下に置き、実質的にイエメンの政権を握っています。

フーシ派は、イランの支援を受けているとされており、ハマスによるテロ攻撃が行われて以降、散発的ながらイスラエルに対するミサイル攻撃を行っています。


忘れ去られようとしていたパレスチナ問題

イスラエルによるパレスチナの占領は、第4次中東戦争以降も密かに進み続けています。パレスチナ自治政府の統治下のヨルダン川西岸地区においても、イスラエルの浸透は進められており、その60%近くがすでにイスラエルの実質的な占領下にあると言われています。

ガザ地区においても高い塀に分断され、人や物の出入りが厳しく制限され国連や支援団体の支援物資にて辛うじて最低限の生活が保たれていると言った状態が続いていました。

第2次世界大戦終了直後(1947年)、パレスチナをユダヤ人国家とアラブ人国家に分割する「パレスチナ分割決議」によってこの地にイスラエルと言うユダヤ人国家が建国され、その後の第一次~四次中東戦争において、イスラエルはパレスチナにおける占領地を拡大し、大量のパレスチナ難民が発生しました。

現在、ガザ地区にいるパレスチナ人の7割は戦火を逃れて避難してきた人々であり、エジプト側がパレスチナ難民の入国を拒否したこともあり、現在の狭い地域に200万人を超える人々が押し込められる結果となっています。

イスラエル建国当初、パレスチナ側に組みしていたアラブ諸国も次第にイスラエルとの国交正常化を進めていった。中東における和平と言う観点からはこれは決して悪い事ではないとも言えるが、そこにはパレスチナと言う存在が置き去りにされ、忘れ去られようとしていたのも事実であるようにも見うけられます。

2023年10月7日に行われたハマスによる大規模テロ攻撃により、世界の多くの人々がそこの事を思い出したと言うより、直視せざるを得ない状況が生み出されたとも言えるのではないでしょうか。

長らくイスラエルと衝突を繰り返してきたハマスにとって、今回のイスラエルの反撃は想定されたものでしょう。多くの人質をとったのも状況を長引かせつつ世界の関心を自分たちに向けるためあり、そういう意味では現状は大筋においてハマスの意図した通りの状況を生み出しているのではないでしょうか。

しかし、その代償は大きく既に1万人以上の人々が犠牲になっており、その多くはイスラエル側においてもパレスチナ側においても、非戦闘員である一般市民です。(イスラエル側1,400名、パレスチナ側1万名以上)


各国の反応

米国、イギリス、ドイツなどを中心にG7加盟国のうち日本を除く6カ国(前述した3カ国に加えフランス、イタリア、カナダ)においてイスラエルの自衛権を支持。積極的な停戦には同意していないが、イスラエルに対し強く人道的な配慮を求めており、人道的な支援目的での一時停戦を働きかけています。

米国、イギリスはイスラエル建国にたいして大きく寄与した国家であり、ドイツは御存知の通り先の大戦中にホロコーストに大きく関わった国である。しかし、これらの国々の国内においても今回のイスラエルの行い、ガザ地区において多くの一般市民に犠牲者が出ている件に対する抗議の声は日々高まっています。

イスラム国家であるトルコ(エルドアン政権)、イラン、アラブ諸国においては国内においてもイスラエル非難の声が強く、即時停戦を求めイスラエルに対して強い非難の声明を発表しています。トルコにおいてはイスラエルの行為は戦争犯罪であるとしています。

中国、ロシアについてはイスラエルとの関係もありますが、今回の件に関してはパレスチナよりの声明を発表しており、停戦を求めています。ロシアとイスラエルの関係として、イスラエル建国時にロシアから移住したユダヤ人も多いと言われており、中国はイスラエルから軍事技術の移転を受けているとも言われています。

インドに関してはハマスのテロ攻撃を非難しイスラエルとの連帯を示しつつも、イスラエル、ハマスの戦闘による市民への犠牲についての非難及び、人道状況の改善を訴えています。モディ首相は2017年7月にインド首相として初めてイスラエルを訪問し、両国の関係を「戦略的パートナーシップ」に格上げすると宣言、幅広い分野での協力を目指すほか、世界平和と安定のためにテロ撲滅に向けた協調を図るとしてます。

インドもまた国内テロの経験を持ちイスラエルとは協力関係にあり、パキスタン、中国と対立する国家に隣接していることからも、中立を国是とするインドとしては珍しく、イスラエルにいち早く連帯を示しつつ、人道状況の改善を訴えるという立場を取っているのではないでしょうか。

日本においてはイスラエルの自衛権を認めつつも、双方に対して即時停戦を求める声明を発表しているが、現在のところ積極的な関与の姿勢は見られません。日本は今回の権威関しては他のG7加盟国よりは一歩引いた立ち位置を取っているようです。これは、ユダヤ人との関係が欧米ほど深い訳では無いからだけではなく防衛を米国に、エネルギーを中東に大きく依存していることも無関係ではないでしょう。


国連安全保障理事会

ロシアのウクライナへの侵攻以降、機能不全を指摘され続けていた国連安全保障理事会において、ロシア、ブラジル、米国がそれぞれ決議案を提出したが、否決もしくは米国やロシア、中国の拒否権の行使により否決され、非常任理事国のマルタが提出した決議案が11月15日にようやく採択された。

可決までに一月以上の時間がかかっているだけでなく、その内容は『パレスチナ自治区ガザにおける戦闘の「緊急かつ人道的な一時休止」を要請』と言ったものに留まるものだった。この決議に際し、米国、ロシア、中国と先の決議案で拒否権を行使した国は棄権しています。

今の国連安保理の状態を表すなかなか象徴的な決議ではないでしょうか。常任理事国であり拒否権を持ち、今回の決議においてもそれぞれの理由から拒否権を行使した米国、ロシア、中国がこぞって棄権することで漸く決議案の採択にこぎ着けることができました。逆に言えばこの3カ国の主導権争いが続く限り、国連安保理の機能不全は続くということです。

ウクライナの件と大きく異なるのは、常任理事国が直接の当事国では無いということです。


米国にとっての10月7日

今回のハマスのテロは、米国にとって最悪のタイミングで発生した事件ではないでしょうか。折しも予算審議中、しかもウクライナ支援に関して議会が割れ予算が決まらないといった状況の中での出来事です。更に言えばイスラエル、サウジアラビアの国交正常化の交渉も暗礁に乗り上げる結果となっています。

ウクライナに続きイスラエル支援、更に中国への備えも怠ることができないとなれば、実質的に3正面を抱える事になります。ウクライナに対しては直接軍は派遣していませんが、現状、最大の武器支援国でありNATO加盟国(東欧地域)への増派も行っています。イスラエルに対しても武器支援に加え、空母打撃群の派遣、中東地域の米軍基地への増派も行っています。

米国はイスラエルの最大の支援国であり、米国内においてもユダヤ人の影響力は大きいと言う話は日本の報道でもよく報道されており、テロ発生直後にイスラエルの自衛権を指示しています。しかし、今回のイスラエルの自衛権に基づく軍事行動では一般市民への被害が大きく、国際的な世論のみならず国内でもイスラエルの行き過ぎた行いに対する非難の声が高まっており、イスラエルに対しても人道的な配慮や人道目的の一時停戦の説得を行っています。

中東地域において米国はイランと対立しており、その正面に立っていたのがイスラエルとサウジアラビアです。イスラエルとサウジアラビアには国交はありませんが、イスラエルとアラブ諸国の対立は米国にとっても大きな問題であったため、時間をかけ国交正常化交渉を進めていた米国にとって、イスラエルとサウジアラビアの国交正常化は中東における米国外交の一つの集大成とも言える事業でした。

米国はリソースをアジアへとシフトさせており、その分、中東に割くリソースを減少させたいと考え、事実そのように進めています。そのため、中東の安定においても対イラン体制を整えるためにもイスラエルとアラブ国家の国交の正常化は必須事項でした。

しかし、米国の影響力が低下した中東ではイラン、ロシア、中国の影響が増し始めると言う結果にもなっています。シリア内戦では及び腰であった米国に代わりロシア、イランが存在感を増し、長らく対立関係にあったイランとサウジアラビアが中国の仲介で国交正常化を果たしています。イランとサウジアラビアの国交正常化が行われ、イスラエルとサウジアラビアの国交正常化が失敗したことで、米国が中東に描いていたグランドデザインを大きく修正する必要が出てきたのではないでしょうか。

米国にとってのイスラエルは中東におけるジョーカーです。大きな力を持つカードにもなれば、大きな問題を持ち込むカードでもあります。米国のリソースが分散されることや、ウクライナ、イスラエルの問題で米国内の分断がされることは、ロシア、中国とっては都合の良いことです。

中国、ロシアは国際世論の強い方によるだけで、米国の影響力を低下させることができるだけでなく、米国はウクライナへの最大の武器供与国であり、中国は南シナ海、東シナ海の領有問題や台湾問題で米国と対立する立場から、ロシア、中国にとって米国のリソースが多方面に分散されること、また、これらの問題を通して米国国内の分断に拍車がかかることは歓迎すべき事柄です。

昨今、注目を集めることが多くなってきたグローバルサウスと呼ばれる国々への影響力と言う意味では、ロシア、中国、欧米に加えインドも動き出し始めている中での出来事であり、今回の出来事は米国にとって、ウクライナ問題以上に大きな問題になるかもしれません。


イランにとっての10月7日

イスラエルと対立するイランは、ヒズボラを通じハマスを支援していると言われています。ガザ地区だけでなくヨルダン川西岸へも大量の武器が持ち込まれていると言ったような報道も聞こえてきます。

欧米や他のアラブ諸国政府にとっても戦果が中東全体に広がることは望ましくない事態でしょう。現状、イランが支援していると言われているヒズボラも国境越しに散発的な攻撃を行っているのみです。

また、イランの支援を受けている民兵組織もイラク等で米軍の駐留拠点に攻撃を仕掛けていますが、こちらも散発的なものに留まっていることから、イランとイスラエル・米国の全面的な衝突にまで発展する可能性は低いと見なされています。

パレスチナの一般市民への被害が拡大するとともにアラブ諸国ではイスラエル対する非難の声は高まり、イスラエルの最大の支援国である米国に対する反感から反米感情も高まっており、イランにとっては望ましい流れになっているのは確かでしょう。

イランはロシアへドローン兵器などの供与を行うなど、ロシアと急速に接近しており、中国の仲介で長年対立してきたサウジアラビアとも国交正常化をおこなうなど、中・ロと接近しており、BRICSへの加盟も行っています。

イランにとっては矢面に立つことなく、イスラム世界で反イスラエル、反米感情が高まることは悪いことではないでしょう。また、国内の石油資源依存を減らし経済発展を優先するサウジアラビアにとって、海外からの国内への投資を呼び込むためにも中東の安定は重要なファクターであり、イラン、イスラエルとの国交正常化はその一環として進められていたものです。

イスラエルとの国交正常化に先立ち、中国の仲介によりイランはサウジアラビアとの国交正常化を果たしました。対して10月7日以降の出来事により国内での反イスラエル、反米感情の高まりからアメリカ主導のサウジアラビア、イスラエルの交渉は暗礁に乗り上げる結果となっています。これらの出来事により、イランが一定程度、サウジアラビアへの影響力を確保すると言う意味においてはイランの側により有益であり、非常に都合の良いタイミングでの出来事であったことは確かでしょう。


日本にとっての10月7日

日本にとっても青天の霹靂といった事態だったのではないでしょうか。日本はイスラエル、アラブ諸国、イラン、パレスチナ自治政府ともそれぞれある程度の付き合いがあります。

日本はイスラエルを国家承認しており、ゴラン高原へ国連平和維持活動(PKO)の一員として少数ながら1996年(平成8年)から2013年(平成25年)1月までの約16年間に渡って自衛隊を派遣してました。

パレスチナに対しては国家に準ずる自治地域とし友好関係を築いており、経済的な支援のほか、UNRWA( 国連パレスチナ難民救済事業機関)への支援を1953年より70年近く続けています。

日本は一貫してイスラエルとパレスチナの平和的な問題解決を支持しています。日本は特定の宗教色はなく、中東諸国とは国家としても民族的にも特に対立の歴史はなく、中東地域において比較的均等に友好関係を築います。

日本はアラブ諸国にエネルギー資源の多くを依存していることもありまた、各国とこれまで築いてきた関係からもイスラエル支持の米国とは完全に共同歩調を取ることは難しいと判断したためか、イスラエルの自衛権は認めつつも、一歩引いた立場を取っているようです。

ロシアのウクライナ侵攻もイスラエルとハマスの戦闘も地理的には遠くの出来事かもしれません。しかし、どちらも日本も無関係ではいられない出来事です。日本は軍事的な安全保障、食料、エネルギー、経済、様々な資源、その多くを海外に依存しています。世界が不安定化するほどその影響を多く受けます。

身近な例で言えばインフレ、特にエネルギーや食料品価格、建築資材価格の上昇です。もちろんこれらは国内事情に起因する円安も原因の一つですが、ロシアのウクライナ侵攻の影響が起因となったものでもあります。

現状、日本周辺も安定しているとは言い難い状況です。北朝鮮の核兵器問題、中国の周辺諸国との領有権問題。日本も尖閣諸島において中国と問題を抱えており、台湾問題は近年ますます大きな問題となりつつあります。

そうした中、イスラエルとパレスチナの問題が長引びく事は、中東地域の不安定化にも繋がりかねないだけでなく、米国内においてはウクライナ、イスラエルでの出来事が国内の分断に拍車をかけていることも事実であり、日本にとっても最大の同盟国である米国が部分的にでも機能不全に陥ることは日本にとっても憂慮すべき事態です。


ロシア、中国、イラン、北朝鮮

ロシアのウクライナ侵攻移行、ロシアとより急速国に接近し始めたのが中国、イラン、北朝鮮です。中東においてはそれぞれ異なった思惑があるのでしょうが、反米と言う点においては協力関係にあります。

もともと北朝鮮はイランへの弾道ミサイル技術の供与などで関係があると言われており、ロシアはイランの原子炉建設など原子力関係の技術支援などで協力関係があり、最近ではイランは中国の仲介でサウジアラビアとの国交正常化を行っています。

シリアにおいてはロシア、イランともアサド政権の支援者であり、イランはイラク、シリアなどの中東地域での影響力を増しつつあります。

アメリカのリソースが中東に分散されることで、ウクライナへの支援が厳しくなることや、アジア地域に割り振られる米国のリソースが低下することはロシア、中国・北朝鮮にとって歓迎すべき事柄です。イランにとっては中東やイスラム教徒の間に広がる反イスラエル、反米感情は歓迎すべき事柄です。これらの国々にとって矢面に立つことなくアメリカの中東での立場が悪化し影響力が低下することは都合の良い事柄であり、自らイスラエル・パレスチナ問題の解決に乗り出すことはあまり考えられません。


中東におけるパレスチナ問題

先にも書いた通り、イランはイスラエルと言う国家の存在そのものを認めていません。そして、イスラエルと交戦中のレバノンのヒズボラの最大の支援国はイランです。イランはイラク、シリアへの影響力が強まったことで、ヒズボラの拠点であるレバノンとは陸続きとなり、シリアにはイランの革命防衛隊が拠点を各地に構えており、イスラエルにとってはレバノン、シリア方面へも防衛のための戦力を割り振らなければならない状況です。

周辺のアラブ諸国の市民の間に反イスラエルの感情が広まることはイスラエルのみならず、当のアラブ諸国の政権にとっても大きな問題となっています。既にイスラエルと国交正常化を果たしている国にとっても、正常化を進めていたサウジアラビアにとっても。

イスラエルとアラブ諸国はイスラエル建国以降、4度にわたる戦争をおこない、何れもイスラエル側の勝利で終わっています。土地を奪われたパレスチナ側に同情的であった機運も次第に経済的な恩恵を優先してイスラエルとの国交正常化を進める方向に流れが代わりました。イスラエルとの国交正常化はその最大の支援国である米国及びその同盟国の欧州との関係を重視する方向に舵を切り直したということです。

イスラエルの打倒、パレスチナの独立を掲げるハマスにとってはイランを除く中東諸国がイスラエル側に歩み寄ることは看過できない事柄であった事は想像に固くありません。しかし、ハマスがあれほど大規模なテロを起こすとは想定していなかったのではないでしょうか。その事により、長らく放置され続けてきたパレスチナ問題に再び向き合う必要が出てきました。


イスラエルとパレスチナ

イスラエルにとって大規模なテロを起こしたハマスは放置する訳にはいかない問題であることは確かでしょう。ハマスとの戦闘は一般市民の密集する市街地での戦闘にならざるを得ないため、ハマスを殲滅するためにはガザ地区の一般市民に大きな被害が出る事は避けることができません。事実、イスラエルのガザ地区への空爆と地上軍の侵攻により、多くの一般市民が犠牲になっているだけでなく、ガザ地区全体が人道的な危機に追い込まれているのも事実です。

ハマスの行った大規模なテロ行為も、イスラエルの行き過ぎた自衛権の行使によって一般市民への被害が拡大している事の何れも非難されて然るべき事柄です。しかし、ユダヤ人、パレスチナ人のそれぞれ辿ってきた歴史を鑑みれば、国を持たず迫害やホロコーストを体験したユダヤ人、土地を追われ未だに自らの国家を持たないパレスチナ人、それぞれの人々にとっては生存権にも直結する問題でもあります。

そのため、どちらか片方を一方的に非難するという行為は問題解決に繋がりません。また、この混乱を歓迎する国家すら存在するるため、国連主導での解決は望むべくもありません。

公式にはパレスチナ自治政府がパレスチナ人を代表する機関とされていますが、残念ながらパレスチナ自治政府にもイスラエルと対等に交渉できる力があるようには見受けられません。また、双方が交渉の席につくにはイスラエルの政権も現在の極右よりな政党からより穏健な政党に移行する必要もあるでしょう。ハマスが行った事自体はいかなる理由があれ大規模なテロ行為にほかなりません。やむを得ない自衛の行為と認めることは、テロや誘拐という行為自体を正当化することに繋がりかねません。

現イスラエル政権が今後、ハマスに対して妥協的な立場を取ることは考えづらく、現在成立した一時的な休戦も国内からの人質開放を優先すべきという圧力や人道的な配慮を求めるアメリカなどからの圧力によるものと言われています。現イスラエル政権は右派と極右の連立政権であり、人質の救出やガザ地区の一般市民への人道的な配慮よりもハマスの殲滅を優先しており、ハマスへの攻撃継続の姿勢は崩していません。

現イスラエル政権については国内からも批判の声が強く、即座に退陣すべきと言う意見も出ているほどです。その事が帰って現政権の強硬姿勢を強めてしまっていることも否めません。退陣すればほぼ間違いなくテロを防げなかったことや今回の対応についての責任の追求がなされるだろうと予測されているからです。

仮にイスラエルの政権が交代したからと言っても問題が過解決に向かうことは簡単ではないでしょう。ハマスのテロによってイスラエル側も1,400名以上もの犠牲者を出しており、現在も多くの人々が誘拐された状態にあり、ハマス側と妥協することは簡単ではないでしょう。逆にイスラム諸国の国民の間にも、ガザ地区での多数のパレスチナの一般市民に被害が出ていることから反イスラエル感情が強く、現状、パレスチナ自治政府はあまり存在感が感じられず、人質開放の交渉もカタールの仲介でアメリカとハマス政治部が中心に行っているようです。

今回の紛争の直接的なきっかけを作ったのはハマスによるテロ行為ですが、イスラエル軍の攻撃によって家族、友人、知人の大くを失ったパレスチナの人々にとって見ればやはり、ハマスよりもイスラエルに強い怒りを覚える人が多いことでしょう。仮に停戦に至ったとしても両者の間の溝はより深まることになり、アメリカの主張する国連による暫定当地の後にパレスチナ自治政府にガザ地区の統治を移譲すると言う案も現実には難しいのではないかと思われます。

現在の国連が主導的な立場で問題を解決することは難しいでしょう。中国、ロシアはあえてこの問題に手を出すことはないでしょう。せいぜい遠巻きに自国にとって都合の良いポジションを維持するだけで。EUもまたその過去の歴史から中立的な立場で主導することは難しいでしょう。唯一、自国都合とはいえ主導的な立場を取らざるを得ないアメリカも、イスラエル側に立たざるを経ない状況では中立的な立場で問題を解決するのは難しいでしょう。この問題を解決するにはイスラエル側にも大きな譲歩を迫らなければならないからです。

日本は宗教的にも歴史的にも中立的という意味では問題ないでしょうが、これほど大規模な戦闘に発展している問題に積極的に寄与することはあまり想像できません。特に日本人は軍事に関わることにたいして拒否的な反応を示す国民も多いからです。平和維持のための派遣、つまり紛争地域での治安維持活動、それも戦闘が行われていない後方地域と他国の軍が派遣されている場所に比べれば比較的安全な地域への派遣であっても拒否的な反対運動が起こるため、結果、政府もこういった問題に関わることは非常に慎重になります。ガザ地区での停戦を求める声は日本国内にもありますが、仮に停戦となれば復興及び平和維持のため、国連軍をガザ地区など派遣することになる可能性は高い思われます。そうなった時、日本人はガザ地区に復興支援及び平和維持のために国連軍の一員として自衛隊を派遣することを受け入れ得るでしょうか。


最後に

大国(の政権)や中東地域の各国(の政権)の思惑や利害関係、さらに今回の紛争では双方に大勢の犠牲者もでており、問題の解決をさらに難しくしていることは確かでしょう。しかし、パレスチナの問題が解決に向かうにはパレスチナ人の国家成立に向け国際世論が大きく動き始めることが必要だと思われます。そうした動きが出てくれば、イスラエル側が大きく反発するかもしれませんが、個人的には長い目で見ればイスラエルにとっても良い結果になると信じたいと思います。

問題を先延ばしにするような解決案は、将来的には更に不幸な出来事に繋がるとしか思えません。イスラエル、パレスチナさらに言えばユダヤ人、アラブ人の和解の道のりは果てしなく長い道のりになるかもしれませんが。


何時ものごとく、タイトルとは関わりなく内容にまとまりがないのは素人が書いているだけの駄文のためご容赦ください。


2,023年12月1日


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