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きみを嫌いな奴はクズだよ

 なんの予定もない休日、いつもの本屋さん。いつもは好きな作家さんの本や、SNSで見つけた気になる小説を目的としてそのコーナーへ向かう。
 いつもは行かない奥側の本棚へなんとなく向かった。そこは短歌の世界。タイトルと本のデザイン惹かれて手に取りパラパラ捲ると衝撃だった。
 そこには凡人では決して思いつかない一文が永遠に記されていた。早々と本屋さんを後にした。早くこの本を読みたかったからだ。

火葬場の煙が午後に溶けてゆく麻痺することが強くなること
筆圧を最弱にして一枚のティシュに十一桁を並べる
悪人も悪人なりのめでたしで終わる話でありますように
花瓶 その花の終わりにふさわしくまた美しいお墓でしたね

きみを嫌いな奴はクズだよ/木下龍也

 短歌は学生時代に習ったはずだが、初めての出逢いのような感覚だった。思わぬところで思わぬときにビビッとくる感覚がなんだか久しぶりでとても嬉しかった。
 わたしは心の中にあるモノをこんな風に言葉にできない。だからこそ羨ましくなったし少し悔しかった。いつの日からか、音楽を聴くときはメロディーと合わせて歌詞も見るようになった。音として入ってくるものと、目で追うものは少し違う。だからこそ両方の観点から見るとより楽しむことができる。
 この本は音楽ではないが、どこからかメロディが流れて聴こえてくる。そんな不思議な感覚に包まれる本だった。間違いなく大切な本になったし、人におすすめを聞かれたときに、教えたくないけれど教えたくなる一冊となった。
 p s.尾崎さんが本の帯を書いていたのを見つけたとき、同じ感性で一歩近づけたような気がして嬉しかった。これだから本を買うのやめられない。

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