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【睡眠】痛む身体と眠ること

朝起きて、仕事に行き、帰宅して夫とご飯を食べ、お風呂に入って寝る。こんな普通の毎日の繰り返しのなか、私の体は、カチカチに凝り固まっている。
今に始まったことではない。自覚したのは、2年前。夫と住み始めてすぐの9月1日の朝、朝起きると、首が右にも左にも動かなくなっていた。寝違えることはよくあったので、すぐ治るだろうと放っておいても一向に治らなかった。痛すぎて朝身体を起こすのに5分以上かかった。なにをしても痛くて、どうしようもなかったので、知人におすすめされた整体にはじめて行ってみた。
その整体は痛いことはしないところだった。変わり者のおじさんが、決まった手順で施術してくれる。その時はあまり良くなった気がしないのに帰って一晩寝ると、かなり楽になる。通い始めてしばらくは整体依存みたいになって、毎月のように通っていた。
整体のおじさんによると、運動不足に加えて、リラックス状態を作れていないからずっと緊張状態にあるので体が悲鳴を上げるのは当たり前だと言われた。しきりに「呼吸を意識するように」「リラックスして」と言われた。そう言われて初めて、リラックス状態を作れないことに気が付いた。整体の施術後以外、体中の力が抜けるということがほとんどなかった。深呼吸をしてみても、なんだか抜けきらない。気持ちだけでなく、身体もずっと力を入れてきたんだなとはじめて気が付いた。
思い出してみれば、わたしは眠るのが苦手だった。母の話ではわたしは本当に寝ない赤ちゃんだったそうだ。生まれた場所は、雪がたくさん降る所で、私が生まれたのは大寒の頃。小学生のころ、とても寒がりなわたしを見て母が「もしかしたらあんたは赤ちゃんの時、寒くて泣いてたんかもしれんなあ」と言われたことがある。
はっきり記憶にあるのは、小学生のころ。家の外に出されることの多かったわたしは、身体が芯まで冷え切ってよく眠れないことが多かった。そのために日中も眠たくて、リビングで寝ていると、「ママはこんなに大変なのに」と怒られた。ならばと寝室や自室で眠っていると、リビング以外の場所にいることを嫌う母が、怒って私を呼ぶ。夜は寒くてよく眠れない。そんな生活だった。
中学生のころ、母がわたしに告白した。「あんたたちが寝た後、あの人(父が)が変なことしに来る」「いつも無理やりされる」「だからあんたたちと寝とる」「子どもができたのも無理やりされたせい。ほんとは子ども欲しくなかった」家を出るまで母と兄弟と同じ部屋で寝ていたわたしは余計に眠れなくなった。夜になり、父が帰ってくると父は母の作ったごはんを食べずに自分の好きなものを私に作らせた。つまみも作った。食べ終わったものを洗って片づけた。父が起きている間は、夜遅くまで勉強した。母が起きていると家事を手伝わないと怒るので、勉強時間が確保できなかったこともあるが、今思うとなぜそうしていたのか思い出せない。どこかで母を守りたい気持ちがあったのかもしれない。
眠れない夜、眠ろうと思うと余計に眠れない。眠れない夜に夜な夜な本を読むことを覚えた。
高校生になると、携帯を持った。母の起きている間は、家事をしないといけない。見えるところで自分の時間を持つと怒って没収されるので日中家では携帯は触れない。母が寝た後に、父が寝るまで勉強しながらメールやチャットをした。
昼でも夜でも、母の声が追いかけてくる気がして、常にイヤホンをした。ELLEGARDENやRADWIMPS、ONE OK ROCKを大きな音でかけた。音楽しか聞こえない空間は落ち着いた。
家を出て一人暮らしを始めてからも、ぐっすり生活は変えられなかった。眠れない理由はなくなったので、寝てはいたけれど、横向きで身体を縮めて眠る癖は抜けなくて、あまりぐっすり眠れないことが多かった。疲れの取れない日がつもりつもってと死んだように眠る日もあった。
大学時代は、20時から先輩と飲みに行き、朝4時まで先輩の家でゲームをして、先輩の家のこたつで眠りについた。なにもしてこない人の寝息が聞こえると寝やすいことに、気が付いた。一人眠れない夜になぜか涙が出て止まらないこともあった。
夫と一緒に暮らし始めてから、ベッドを並べていること、私がいなくなると気が付かれるし心配されること、家事があるので帰宅してすぐ寝るわけにはいかなくなったこと、一人ではないのでベッドでスマホを見れないこと、などが重なって、「寝ないとどうしようもない」状態になった。困ったけれど、良いことだったと思う。夫の寝息が聞こえると眠りやすかった。だんだん気が付くと朝になっている日が増えた。
そんな矢先にわたしの首は悲鳴を上げた。「きっと今まで言い出せなかったんだな」「やっと声をあげれるようになったんだな」と思った。今まで我慢させてごめんね。
整体に加えて、靴の改善、リングフィットアドベンチャー(ガッキーのCMが流れているNintendoのゲーム)に作った首と腰を復活させるカスタム体操、週1回を目指している夫との散歩。いろんな試行錯誤を経て、体の痛みを減らした。Meditopia(瞑想アプリ)を使って、リラックスする練習をして、ぐっすり眠れる日が増えた。今までの睡眠負債を返して、健やかな自分を作り直すかのように、いくらでも眠れる日々が続いた。
少しでもさぼると、身体がバキバキになって、こわばった状態で寝た感じがしないようになる。毎日、自分の身体の状態を見ながら、「そろそろリングフィットしないとやばいな」「そろそろ散歩がいるな」「緊張を抜けれなくなってるからMeditopiaするか」と調整しながら暮らしている。引っ越して整体に通えなくなって、なかなかあたらしい整体に巡り合えずにいるので、自分で修復するしかない。
ここまでやって生活していても、今、1週間前に畑の草抜きをした日からずっと腰が痛い。しゃがめない。
20年近く身体の声を無視してきた分、身体からの苦情はしばらく絶えないのだろうなと思う。
あまりにも毎日身体が痛いので、この酷使した身体であと何年生きていけるんだろうか、ずっと痛いままなのかなと悲しくなる時もある。それでも今まで一緒に我慢してきてくれて、やっと声をあげられるようになったと思って、リラックスすることに慣れていきたい。毎日地道に修復して、痛みのない、必要な時に緊張して、適度にリラックスした身体を手に入れたい。道のりは長そうだ。

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