【第11回】岸田首相「外国人と共生社会」は世界と逆行している 

 岸田文雄首相は、令和国民会議(令和臨調)の発足1周年大会で、人口減少を踏まえて「外国人と共生する社会を考えていかなければならない」と語った。

 岸田首相は冒頭の挨拶で、次元の異なる少子化対策とデジタル社会への変革を掲げている。これらをあわせて読めば、人口減少には、少子化対策、デジタル改革、外国人受け入れということになる。

 少子化対策には時間がかかるから、当面の間外国人受け入れというロジックを話しているが、当面とは言え、外国人受け入れの社会的リスクは大きい。その理由を考える材料として、まず世界の移民政策がどうなっているか見てみよう。

 国際比較するものとして「移民統合政策指数(MIPEX)」というものがある。これは、イギリスの国際文化交流機関であるブリティッシュ・カウンシルが、労働市場へのアクセス、家族呼び寄せ、教育、政治参加、長期滞在許可、国籍取得、差別防止措置の7分野について、167の政策指数を設けて数値化し、移民政策について国際比較を可能にしたものだ。

 2020年の最新の調査では、52カ国が対象となった。指標の数値が高い、つまり移民を受け入れる傾向が強い上位10カ国は、スウェーデン、フィンランド、カナダ、ニュージーランド、アメリカ、ノルウェー、ベルギー、オーストラリア、ルクセンブルクだ。そして、日本は35位だった。

 総じて、欧米の水準が高いが、最近では従来の移民政策を見直す動きも出てきた。

 スウェーデンは移民解放国として有名で、紛争国からイスラム教徒などの難民などを受け入れている。しかし、政策費用がかかる他、高い失業率を招いているとも批判されている。そのため、2022年9月に行われた総選挙では、移民排斥を訴える政党を含む保守勢力が過半数を獲得し、8年ぶりに政権交代した。

 米国ではトランプ氏が大統領就任早々、「メキシコ国境に壁を造る」とし、不法移民を取り締まる姿勢を示した。また、2018年5月頃には、メキシコ国境を越えて不法入国するあらゆる不法移民について、難民登録申請中かどうかにかかわらず、逮捕し訴追する「ゼロ・トレランス(不寛容=一切の例外を認めない)」との方針を打ち出した。

 後のバイデン政権により、トランプ政権の移民政策は見直しや廃止がされたが、いずれにしても世界では移民政策の厳格化が主流だ。

 だが、日本はそれに逆行している。移民受け入れの議論が浮上してきた発端は、2014年3月の経済財政諮問会議の下の「選択する未来」委員会において人口減少などを議論する中で、一部の有識者が外国人労働者活用の拡大という選択肢が提起されたことだ。

 確かに、外国人労働者を受け入れないと成り立たない国もあるが、日本はそうしなくても国として十分成り立っている。

 リベラル派は「外国人を受け入れないのは人権侵害だ」とよく煽るが、MIPEXの上位国を見れば、外国人の流入問題で困っているところばかりだ。決してそれに乗ってはいけない。

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