素敵な密着(エッセイ)
テレビ番組で、125年愛された中目黒にある家族経営の書店さんの閉店する前までと、最後の一日に密着をしていた。
お店の前にビデオカメラを置き、ここの常連さんの人達に思い出などを語ってもらいながら、買い物の様子を撮影してもらうというのもあった。
そのVTRを見ていて思ったのは小学生の男の子も、30年ここに通っているという人も、みんな本当に心からこの書店さんを愛していたという事。
『よくオススメの本を聞いてたんです』
『ここの店員さん皆優しくて』
『毎日通ってました』
ここの書店さんが、どれだけ常連の人達に愛されていたか。
話す言葉から伝わる優しさや感謝が溢れていて、なんて素敵な密着なんだろうと思った私。
そして、書店営業、最終日。
書店には沢山の人々が訪れ、今までの思い出や、感謝を伝えていく。
女性の店主さんも、最後まで明るくニコニコしてお客さんと接していて、とても幸せそうだった。
私の住んでいる場所でも、昔ながらの書店さんはなく、大型書店やネットで購入する事が増えてきた昨今。
それでも、昔ながら地域に根付き、築きあげてきた、ここならではの雰囲気や心遣いは確かにあり、ここを訪れていた人達にとても愛されていた。
周りの人々に大切にされていた。
ここはもう閉店しまうけれど、そんな温かい気持ちや記憶は、目に見えなくても、これから先も、絶え間なく流れ続けていくのだろうなと思った。
『………なんか、いいな〜』
声には出さずとも、心の中が少し温かくなったのを微かに感じながら、とても素敵なお話で密着だったと、テレビを見つめながら思う、私なのだった。
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