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大山陵古墳発掘事件──なぜ石室は暴かれたのか

 歴史雑記069
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はじめに

 今年最初のネタは、いわゆる「仁徳天皇陵」こと大仙陵古墳についてである。
 この古墳を含む古市・百舌鳥古墳群は周知の通り世界遺産にも登録されており、なにをもって比較するのかという問題はあるが、「世界一の巨大墳墓」とも言われる。
 また、ボストン美術館には大仙陵古墳出土と言われる収蔵品がある。環頭大刀や、渡来品と思しき細線式獣帯鏡がそれである。
 このボストン美術館収蔵品が大仙陵古墳出土品かどうかは措いても、同古墳は実は掘られたことがある。
 明治5年(1872)に、前方部の「埋葬施設が露出」したというものがそれであり、現在に至るも宮内庁はこれが意図的な「発掘」であったとはしていないが、断片的に遺された資料から、誰が掘らせたかもわかっている。
 森浩一によると、首謀者は当時の堺県令であった薩摩の巨頭・税所篤である。

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