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231102_里山資本主義 / 藻谷浩介•NHK広島取材班

2013年に刊行された書籍なので評判は耳にしていたが、縁あって今回ようやく手にしたことになる。ずっと敬遠してきたのは、タイトルからしてよくある「田舎暮らし礼賛本」かと思っていたからだろう。もちろん、幸いそうではなかった。里山資本主義の存在理由について、著者は次のように記している。「里山資本主義は、マネー資本主義の生む歪みを補うサブシステムとして、そして非常時にはマネー資本主義に代わって表に立つバックアップシステムとして、日本とそして世界の脆弱性を補完し、人類の生きる道を示していく」。つまりありていに言ってしまえば、ひと昔前の反文明論的な言説とはまるで違う、新しい資本主義のモデルケースがそこに記されていたことになる。

藻谷浩介とNHK広島取材班の共著となっているが、とにかく熱量がすごい。おそらくそれは、東日本大震災直後、日本人全体がこれまでの自分たちの来し方をもう一度見直してみようという機運が高まっていたこととも深く関係しているのだろう。またコロナ禍をはじめ、民主主義の根幹を揺るがすような日本政治の劣化、経済の停滞、少子化問題、など、まだ余力があった当時の希望のようなものが取材をあと押ししていたところもあったかもしれない。

いずれにしろ、当時より時代状況は悪くなっているかもしないけれど、この「里山資本主義」の方向にシフトして行かなければ先がないのは間違いない。利権を手放さないオッサンたちには早くご退場願わないと、本当にもう間に合わないところまで来ているでは、とつい感じてしまった次第です。



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