英国に海洋冒険小説あれば本邦に仮想戦記あり。
そもそも仮想戦記というカテゴリは、
日本軍が大戦で逆転勝利してカタルシスを提供するという安直な娯楽作品であること、これが基本的な主流です。

しかしこの仮想戦記というカテゴリの最初の一冊は、
なんと幻の日本本土決戦を扱ったものでした。

渋い。
今だったら絶対に採用されない系かもしれません。
編集者がエディターストップを出す。編集権の濫用はこのためにあるのだ。

当然ながら日本軍が勝てるはずもなく、圧倒的な物量を誇る米軍に対して、せいぜい甚大な被害を与えつつも敗北し、民間人を道連れにしつつ、玉砕していくという話がメインの筋になります。
渋い。
一見、売れる気がしない。

この人の２作目がアメリカ本土決戦で、逆に日本軍がアメリカ本土に上陸するという話です。いわゆる日本軍逆転勝利の仮想戦記のパターンが始まったのはここからですね。
趣深い。

単なる大衆娯楽作品なので、わざわざ紹介するべくもないのかもしれませんが、ひたすら渋いので紹介してみました。

秋水や五式重戦車とかも出てきます。
対する米軍も空挺戦車ローカスト、Ｍ２８パーシング重戦車などが登場。
パーシング以外は活躍したことがありません。

米軍の原爆は開発に失敗。
８月１５日のクーデターが成功し、徹底抗戦派が政府の主導権を取ります。
阿南陸相が首相に就任。
天皇は松代大本営に遷都して、
石原莞爾が帝都防衛司令官として軍に復帰します。
マッカーサーとその軍閥といっていいくらいの部下たち、
クルーガーやアイケルバーガーも揃い踏み。

まずは南九州侵攻作戦（オリンピック作戦）
ついで関東侵攻作戦（コロネット作戦）

子どもたちもアンパンと呼ばれる徹甲爆弾を持って先生と一緒に特攻しますが、機関銃掃射で一掃され、米兵たちも次から次へと頭がおかしくなっていきます。
うずくまっている日本人の女の子におもわず優しくしてしまった米兵は、実はそれが若い兵士だったということに気がつかないうちに死んでゆきます。

主人公？的ポジションの海軍大尉はこれ以上の無益な戦争を止めさせるべく行動しますが、左遷されてしまいます。
しかし左遷先から脱走して一念発起。
米軍のダウンフォール部隊という日系米兵で構成された特殊部隊と一緒になり、松代を目指します。
天皇を説得して、戦争を終わらせるために。
これは日本軍からすれば裏切り行為ですが。
大尉にとっては信念ゆえに行動なのです。
そして何よりも大本営の職員でもある愛する婚約者を救うために。
しかし狂信と戦争の愚劣さはすべてを挫折せしめ・・・

ああ、無残。

ｾﾝｿｳﾊｾﾞｯﾀｲﾆｲｹﾅｲ！
というテーマを白目をむいて叫びましょう！早口で！そんな感じ。
たぶんそういうテーマが込められてないわけではないのだろうけど、
まだ人類には早すぎたというか、発想がぶっとびすぎたんだ。
コレガ戦争ノ現実ナンダヨ！
逆に勇壮感とかは皆無の作品ですね。敵味方共に。

まあでも、マブラブオルタとかガンパレードマーチとかも、似たような話なのかな？（あれは相手がエイリアンだけど）

洋画でも宇宙人相手にひたすら地球人が玉砕していく話が、少し前には流行っていましたけど。（まあ最後は逆転勝利するみたいですが）

負け戦にもカタルシスがあるという意外な発見。
人類は発見しました。負けるのもいい！

変態だあああー！

でもしょうがないんだ。だって一億いや、百億人類皆変態なんだもん。

本来の仮想戦記というのは、マンネリ化した安直な商業主義とは根本的に違う、異質すぎる挑戦だったのだ。
こんな作品を誰があえて挑戦するだろうか？
さすがはバブル時代の作品。今とは精神が違う（なにいってんだ？）

末期戦の話って、意外と固定ファンがいるので、やっぱりやれば当たるんだな。これは同じネタで海外でもいける。
ＮＹ最終決戦１９４６、ナチス米本土侵攻す！とかはいつになったらネトフリで制作されるんだろうか？

ソ連軍がアメリカを占領する話は、前にそんなんあったな。
リメイク版映画だとなぜか北朝鮮がアメリカを占領する話になってたけど。

・・・これはちょっと違うか。
では今回はこの辺で。あでゆー。

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