奥平旋

外資金融機関で働いています。個人的に社会的企業の研究をしています。気が向いたら映画や音…

奥平旋

外資金融機関で働いています。個人的に社会的企業の研究をしています。気が向いたら映画や音楽の事も書くかも知れません。

マガジン

  • 社会的企業(ソーシャル・エンタープライズ)を探る

    「社会的企業の法」という本を上梓しました。ここでは、社会的企業をできるだけわかりやすく、分析していきたいと思います。

最近の記事

第4セクターと社会的企業とPPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ)

第4セクターと社会的企業  最近、第4セクターという用語が用いられる事が多くなってきたようです。普通は公共部門である第1セクター、民間部門である第2セクターに対して、日本では第3セクターとは官民のジョイントベンチャーなどの公企業体を差すことが多いですが、英米では少し事情が異なります。  元々英米では、第3セクターとはチャリティー団体や非営利の組織を意味しています。非営利部門の事業体が地域の公共サービスに担い手となる事も多く、その重要性が高まっていたところ、さらにその中間的な

    • 社会的企業への批判(米国のベネフィット・コーポレーション批判)

      英米での批判の違い  英米を中心として、ある種、株主至上主義への抵抗として広がりを見せる社会的企業ですが、もちろん批判はあります。株主至上主義を支持する立場からの明確な拒否反応の他にも、いくつかの論点がありますが、この記事では、米国社会的企業であるベネフィット・コーポレーションへの批判を取り上げたいと思います。  既にNote上に、米国と英国の社会的企業ではそのあり方が異なるという記事を掲載していますが、あり方が違うという事は、当然、それに対する批判の内容も異なるわけです。

      • 高橋是清の知られざるペルー銀山事件- 【小説】紅銀(ルビーシルバー)解説

        【小説】紅銀(ルビーシルバー)の背景  【小説】紅銀(ルビーシルバー)は、高橋是清が起こしたペルー銀山事件という実話を元にしています。  ペルー銀山事件とは、1889年(明治22年)に高橋是清と当時の大物事業家達が集まって、南米ペルーのカラワクラ銀山に開発投資をしたものの、失敗し、高橋是清本人を含め、事業家達が多大な損失を被ったという事件です。そして、この時に鉱山の調査を行った田島晴雄という鉱山技師がその調査で虚偽の報告を行ったとして事業家達から詐欺で訴えられ、裁判の結果有

        • 【小説】 紅銀(ルビー・シルバー)

           小説を書いてみました。  以前からどんな形で公開するか悩んでいましたが、Noteに掲載してみることにしました。読んでいただければ幸いです。  話は、高橋是清が明治時代に実際に関わったペルー銀山事件を元にしています。これは日本発の本格的海外投資ですが、開発投資は失敗に終わります。この時の関係者はそれぞれの道を歩み、是清はご存じのように銀行家として日銀総裁、そして総理大臣にまで昇りつめます。投資家の一人である三浦梧楼は、朝鮮全権特命大使として朝鮮半島に渡り、そこで閔妃事件を

        第4セクターと社会的企業とPPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ)

        • 社会的企業への批判(米国のベネフィット・コーポレーション批判)

        • 高橋是清の知られざるペルー銀山事件- 【小説】紅銀(ルビーシルバー)解説

        • 【小説】 紅銀(ルビー・シルバー)

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        • 社会的企業(ソーシャル・エンタープライズ)を探る
          7本

        記事

          新しい資本主義と社会的企業

          これを書いているのが2022年7月の参議院議員選挙が終わったところで、岸田政権もこれから安定的に政策を進めることが期待されています。 その岸田政権の掲げる政策の目玉である「新しい資本主義」ですが、当初は一部の市場関係者の間に、市場や企業活動の自由が妨げられるのでは無いかという懸念が広がりました。特に自由を重視する立場の人たちの懸念が大きかったようです。もちろん、行き過ぎた株主至上主義を批判的に見ている人達からは「新しい資本主義」への期待も大きかったように思われます。 その後は

          新しい資本主義と社会的企業

          パブリック・ベネフィット・コーポレーションとは何か

           最近、俄かにパブリック・ベネフィット・コーポレーションというのが注目を浴びるようになりましたね。 公益重視の新たな会社形態 政府検討、短期利益偏り修正: 日本経済新聞 (nikkei.com) 公益重視の「第3の会社」って何?: 日本経済新聞 (nikkei.com)  このパブリック・ベネフィット・コーポレーションというのがどのような形態の会社なのかについて、簡単に説明したいと思います。  詳しくは拙著をお読みくださいと言いたいところですが、拙著でも簡単にしか触れていませ

          パブリック・ベネフィット・コーポレーションとは何か

          社会的企業の政治性ー社会的企業、右から見るか、左から見るか?

          近年、英米を中心に盛り上がっている社会的企業ですが、今回は、この政治的な位置づけについて書いてみたいと思います。 昔から企業の社会的責任というような議論はありましたし、企業が慈善団体などを支援するというのはこれまでも珍しくは無かったですよね。 だから、社会的企業というものについても、政治的な立場を離れて連帯できるものであると考えることも、そんなに夢想的ではないでしょう。 でも、一般的には、社会的企業、ESGとかSDGsというのは、左翼方面からのアプローチが多い様に思いま

          社会的企業の政治性ー社会的企業、右から見るか、左から見るか?

          社会的企業の実例(日本編 番外)

          社会的企業の実例として、アメリカの教育機関や英国のサッカークラブ、地域活性化事業などを紹介してきました。ここで、日本の例を紹介したいと思います。 と言っても、現代的な意味の社会的企業ではないです。現代的な意味の社会的企業とは、主として株式会社形式で、会社定款などで社会的目的を明確に示し、会社利益と社会的利益を同時に追求するものを言う事とします。英国の場合、CIC(コミュニティ・インタレスト・カンパニー)は、limited by guaranty(予め決めた額を限度として、そ

          社会的企業の実例(日本編 番外)

          社会的企業の実例(英国編その3)

          社会的企業の実例として、アメリカと英国の実例を紹介してきましたが、英国編ではサッカークラブの話ばかりになったので、もう一つ、実例を紹介します。もちろん、英国の社会的企業は、サッカークラブ以外にも沢山あります(笑)。 こういう例があります。 (綺麗な街ですね。) http://www.bewdleytowncouncil.org/community/bewdley-town-council-12549/visiting-and-events/ これについては、拙著「社会

          社会的企業の実例(英国編その3)

          社会的企業の実例(英国編その2)

          英国では、社会的企業(ソーシャル・エンタープライズ)をフットボール・クラブの運営に活用している例を、その1で紹介しました。もう一つ、フットボール・クラブの例を上げましょう。 英国では、社会的企業とはフットボール・クラブの事なのか、あるいは、フットボール以外に社会的なものはないのか、という揶揄が出そうですが、もちろん、もっといろんな分野で活用されています。フットボール・クラブの例は端的にわかりやすいので例として取り上げています。 その1で紹介したのは、CIC(コミュニティ・

          社会的企業の実例(英国編その2)

          社会的企業の実例(英国編その1)

          社会的企業は、世界的に広がりを見せていますが、近年、法的な意味での仕組みの整備は、英国が一番進んでいると思われます。アメリカでも先に紹介したように、Benefit Corporationという制定法による仕組みを有していますが、制定法による社会的企業については、英国の方が活発です。 英国には、Community Interest Company (CIC)と呼ばれる社会的企業の他、Community Benefit Society (CBS)などという法的仕組みが用意されて

          社会的企業の実例(英国編その1)

          社会的企業の実例(アメリカ編)

          社会的企業はどういうものか、実例を見て行く方が早いでしょう。 拙著の中で、アメリカとイギリスの社会的企業の違いについて説明しています。具体的にどう違うのか。 まず、アメリカでは、社会的企業は、株式を公開しているような、比較的規模の大きい企業をも対象となっています。 以下は、ローリエイト・インターナショナルというところのリンクです。 ローリエイトは、アメリカで大学を運営しており、世界中に大学のネットワークを張り巡らせています。そして、株式を公開しています。その大学ネット

          社会的企業の実例(アメリカ編)

          社会的企業(ソーシャル・エンタープライズ)とは?

          最近、「社会的企業の法」という本を上梓しました。 社会的企業(ソーシャル・エンタープライズ)について思うところを書いていきます。まず、社会的企業とは何か、ということから始めます。 社会的企業とは、通常の企業の利益の追求と社会的の目的を同時に追求する企業の事です。Dual Purposeの企業形態と言われています。 近年、欧米で盛り上がっていますが、この源流は、17世紀くらいまでに遡ることが出来ます。詳しくは拙著をお読みください。 本の副題が、「英米からみる株主至上主義の

          社会的企業(ソーシャル・エンタープライズ)とは?