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八月の俳句など

七月の獅子身中をいづるなり

歳一つとればはちぐわつ来たるといふ

七月のいうれい八月のぞんび

八月の荼毘 八月の最中皮

ひまはりの下がわらつて待つてゐる

俯けばすぐに切らるる向日葵よ

会議して向きを決めたるひまはりか

ひまはりにマイクスタンド届かない

向日葵に音楽性の違いかな

七月晦日は誕生日なり

七月の獅子身中をいづるなり

歳一つとればはちぐわつ来たるといふ

七月のいうれい八月のぞんび

八月の荼毘 八月の最中皮

水菓子と云うてくださる水蜜桃

たつぷりと水菓子抱へあつぱつぱ

擂り鉢に豆腐すりたり秋近し

呉汁して手拭ひぱんと立ち上がる

差入れの肉じやがにはや秋立ちぬ

かやくご飯冷めしを好む残暑かな

クレーン車のクレーンに吊らる朝曇

シヨベルカーシヨベルで動く夏燕

炎天にパワーリフトのパワーかな

ダンプカー転がす香水をたたき

玉掛けのたまは命ぞ玉の汗

鉄筋の灼けて肩背に毛の生えて

夏痩せと思へず老の隆起せる

夏風邪に一トン担ぐ元ラガーメン

飯しよと監督の片肌脱ぎつ

三尺寝本読む変わりものもゐて

差入れの氷菓年功序列あり

現場見る小学生の麦茶かな

憧れの眼差しそらす汗ぬぐひ

労働を知らぬ子なるか甲虫

鍵つ子の三角座り片蔭に

仕事の音に遊びの音や風青し

生コンクリートの恒河沙に咲く夏休み

若いのは運転あとはビールなり

日当の流るる黒姫のお店

やもさんと家守に云うてアパートよ

名づけてより現れざりし守宮かな

目覚めればおぼゆ尿意ややもり鳴く

夕立晴カレーを作る手の止まる

雷やじやがいもルーに呑まれしか

濃紫陽花カレーにソースマヨネーズ

福神漬切らしてゐたり金魚玉

らつきようの偶のやはきに当りたり

台風の居坐る八月十五日

働かず済んでしまへり終戦日

狡き祖父持ちて吾あり敗戦日

終戦の日窓とざす家家ならび

目覚めればパンと珈琲八・一五

喫茶店永遠に老いたり敗戦忌

アラレちやん音頭は二回小学校

盆踊捌きのちがふひと一人

踊場の外を青年ふらふらす

をどりつつ過る役員らしきひと

なんとなく覚えありてふ生身魂

お澄ましにたこ焼き沈む晩夏光

夏氷かく店長のみにゆるされし

かき氷移民の歌で搔かれをり

黒蜜にしづもる氷みづの光

氷みづ焦土のごとく烟りたる

宇治金時その寂光土を侵しけり

秋暑し洗濯機より異物音

天行や律の調べやコインランドリー

遠砧ピンポン玉の微動止め

千秋楽なべて歪みし缶の蓋

ゆく夏をフランス落しを忘れたき

傷秋にとよむフランス落しかな

漂着の神のまぐはひ火恋し

サボタージユすれば人くる秋の薔薇

秋薔薇たまに居留守もしてみむと

夜ふかしの目に不在票秋さうび

秋薔薇や居留守をそつとしてあげし

駄菓子屋のクレープ大き八月か

悪いこと教えるビール

駄菓子屋に悪い大人としてビール

駄菓子屋の迷宮にあり秋かわき

駄菓子の大迷宮に秋かわき

一草忌手袋固く濡れゐたる

手袋の何をも持たず秋うらら

かたしろに軍手落ちたる秋旱


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