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【絵本野山草】(3) 午時花/錦帯花/鹿子百合/仙翁花/のこぎり草

出典:国立国会図書館デジタルコレクション『畫本野山草 [1]


出典:国立国会図書館デジタルコレクション『畫本野山草 [1]

午時ごじくは

花六七月
一名 金銭花 又、子午花

葉のかたち、ずた草に似たれども、のこぎり小く、はなにこはみあり。花のかたち ぼけの花に似て、さきとがり、よこ花開。赤ぼけに似て、色又濃紅にして見事也。花がくへさき至極いかりつよく、うちにあかき ざい五つたち、中心まんなかしべ一つたつ。しべともにあかし。はなびらそこにもゝいろあり。其つぎに少し紫有。此しべ そうあかし。うてな  長春ちやうしゆんて、又、たねのふくらなし。つぼみたねに似て、たね又つぼみに似たり。長一二尺ばかり也。

午時花 ごじくは

※ 「ずた草」は、喘息ずだ薬種やくしゅ(ユキノシタ科)のことでしょうか。
※ 「ぼけ」は、木瓜ぼけのこと。
※ 「長春ちやうしゆん」は、長春ちょうしゅんのことと思われます。金盞花きんせんかの別名。


錦帯花きんたいくは

一名 夕錦草ゆふにしき

葉、蕃椒とうがらし に似たり。葉に大小有。はなは山さくらに似たり。又、花のくきながくして、はるか下に うてなあり。花のいろ黄あり。又、紅有。半黄はんき半紅はんあかあり。とびいりあり。一本のうちにいろ/\有。また黄ばかり、べにばかりあり。葉むかひあひ出て、えだも両方へはびこる。はな七八月にさくなり。

夕錦草 ゆふにしき

※ 「夕錦草ゆふにしき」は、オシロイバナの別名。
※ 「うてな」はがくのこと。


出典:国立国会図書館デジタルコレクション『畫本野山草 [1]

鹿子かのこ百合ゆり

六七月花有。

葉、ほとゝぎす草に 似たり。花白にして紅のくまあり。又、紅むらさきのほしかのこあり。はなびらまい、花大さ をに百合ゆりのごとく、くき同じ。高さ四五尺ばかりなり。

鹿子百合 かのこゆり

せんのうげ

剪秋羅せんしうら
花葉とも がんぴに似、色本紅有。白あり。うすきあり。紫有。むらさきしぼり有。とびいり有。高さ二尺斗。六七月花さく。

剪春羅花有五種 春夏秋冬各以時名
春夏二羅色黄紅不佳 獨秋冬紅深色美
亦在春時分種 又一種色金黄美甚名金剪羅

※ 「がんぴ」は、岩菲がんぴ。ナデシコ科の多年草。前春羅、前夏羅と書いて「がんぴ」とも読むようです。

仙翁花 せんをうげ

剪春羅、花五種あり。
春夏秋冬、おのおの時を以て名づく。
春夏の二羅、色黄、紅。佳ならず。
ひとり秋冬のものは、紅深く色美なり。
又、春時種を分かつ。
又、一種、色、金黄、美 はなはだだし。金剪羅と名づく。


のこぎり草

一名 がんぎ草
 又、もしほ草  又、はごろもといふ

もとに二三十けうをひたつ。たかさ二尺ばかり。葉せまく ながふして、ふちに鳫歯がんぎ有。なつあきあいだはなをひろく。細小さいせうの菊花にたり。いろ紅白二いろあり。紅花を 上品じやうひんとす。はな五月にあり。また 九月すえにあるは べにむらさき色なり。

※ 「鳫歯がんぎ」は、雁歯がんし雁木がんぎ)でしょうか。橋の上の横板のこと。雁の列や、歯並びのように一枚一枚食い違って並ぶところから。

羽衣草 はごろもさう

此『本草圖經』等其生如蒿作叢高五六尺一本一二十莖秋後有花出於枝端紅紫色形如菊形能合之。『史記龜策傳』言蓍状極 ■[忄+癶+土] ■[匕+女]
悉不可信惟神之爾。『詩經』浸彼苞蓍葛風下泉章。『朱註』著筮草也。

これ『本草圖ほんさうづきやうとうに、その せい よもぎの如し。くさむらを作るに、高さ五六尺、一本 一二十莖、秋後 花あり。於 枝端しさんよりづ。紅紫色形、菊の形の如し。よくこれがつす。

史記しき龜策きさくでん』に言ふこと、蓍状めどのかたちきはめて   あやしみぎりことごとく信ずべからず。惟 之をのみ神にする。『詩經』かの 苞蓍はうきひたす。葛風かつふうせんしやう。『朱註しゆちう』にめと筮草ふさうなり。

※ 「めと」は、めどのことのように思われます。
※ 「筮草ふさう」の「めどぎ」は、易で占筮せんぜいのために用いる五十本の細い棒で、蓍萩めどはぎの茎が使われたそうです。



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