隠れ貧困大学生
「隠れ貧困」とは、コトバンクによると
だそうだ。
今回わたしが綴るこのnoteは、この引用文とは少し意味合いが異なることを理解したうえで読んでいただきたい。
また、少々アダルトな過激な表現が含まれているが、創作物ではない事実であるため、今までに被害を受け苦しんだ方は無理に読むことを勧めない。
わたしは現在都内で姉と二人暮らしをしている大学4年生だ。両親のいる実家から離れて暮らしている。
実家は元々、裕福とは言えないかもしれないが、父が東証一部上場会社に勤めていたおかげもあり、お金に困ったことはあまりなかったように思う。
姉もわたしも高校までは公立に通っていたものの、大学は2人とも奨学金なしで都内の四年制私立大学に通わせてもらえた。姉は浪人したため、予備校費用も払ってもらえたくらいには、ある程度経済的には安定した家庭であったように思う。
わたしは大学生になり、1年の夏からアルバイトを始めた。1年の頃は姉とは離れて一人暮らしをしていた。
アルバイトを始めた理由としては、自分で稼いだお金である程度暮らしていく自立心を育てたかったからだ。
学費や家賃、光熱費はありがたくも親に払ってもらっていたため、アルバイトを始めてからはせめて生活費だけでも自分で稼ごうと思い、仕送りは送ってもらわないことにした。
1年の頃はまだお酒も飲める歳でなかったため、飲み会もなく、夏休みは特にバイト三昧の日々を過ごしていた。それもあり、1年生が終わる頃には貯金もある程度貯まっていた。
1年から2年になる春、キャンパスの移動と金銭面を考えて都内で姉と二人暮らしを始めた。
家賃は折半で、わたしの分の家賃は親が払ってくれた。わたしの家賃は親が払うということで、光熱費はわたし持ちになった。食費や日用品等にかかるお金は、わたしと姉、それぞれで自分が使う分だけ出すことにした。
しかし2年生になると新型コロナウイルスの感染拡大によって全ての活動が制限された。それは大学もアルバイトもだった。
アルバイト先は営業停止。給付金もあったが思っていたよりも僅かであり、貯金を崩しながら過ごした。
営業が再開して再びアルバイト先に出勤するようになると、以前は100人近くいたアルバイトの人たちが20人にまで減っていた。事情を聞くと、経営の問題で多くのアルバイトたちは切られ、優秀な人のみを残したという。
ラッキーなことに、なんとか切られずに済んだわたしは再びアルバイト生活に戻る予定だった。しかし、営業時間は短縮され、緊急事態宣言が発動するたびに営業停止。なかなかアルバイトから満足する収入を得ることができなかった。
大学は全てオンラインとなり、家で過ごす時間が急激に増えた。その分、光熱費は高くつく。
夏休みのアルバイトもそこそこに、秋がやってきた。まだオンライン授業であった中、実家に帰る予定ができたため一時帰省した。そんな時、コロナ感染が拡大し、親から「しばらく実家で暮らせばいい」と言われ、アルバイトを辞めて実家で過ごし始めた。実家での暮らしは、生活費を自分で払うことがあまりない。わたしのいない東京の家の光熱費は着々とわたしの預金から下ろされてはいたが、気になる程でもなかった。
実家には4.5ヶ月住んでいたと思う。
3年になるとゼミが対面になり、都内に戻ることになった。ゼミが始まるとほぼ同時に就職活動が動き始めた。
コロナで作ることができなかったガクチカを作るために学生団体に所属したり、とにかくオンラインのインターンに参加したり忙しい日々を送っていたため、新しくアルバイトをする余裕がなかった。そんな中でも生活費と光熱費だけは自分の貯金を崩して暮らしていた。
気づけば大学3年の3月。
初の内々定をもらった。
大学4年の5月。
完全に就職活動を終えた。
1年の頃に貯めた貯金は底をつきそうだった。
急いでアルバイトを探し、なんとか5月後半から働き始めることができた。
しかし、夏になるとそのアルバイト先には新人が絶えず増えていき、アルバイトの人たちはみなシフトが削られるようになっていた。
正直、生活が苦しくなった。
赤字となる月が増え、すでにない貯金も底をつく。
アルバイトを掛け持ちしようとも考えた。しかし大学4年生。今から雇ってくれるアルバイト先は少ない。アルバイト探して応募して面接している時間があるなら別の稼ぎ方をした方が早い、そう思った。
お金がない
というのはなかなかセンシティブな話になる。
相談できる友人も多くはない。
それでも何か方法がないかを知りたくて信頼する友人数人に話した。
1人はキャバ嬢として働く友人。
「ガルバかラウンジでまず働けばいいよ」
ガルバの面接には何回か行ったことがある。しかし、お酒が弱く早寝早起きの習慣があるわたしにはキツいことが面接だけでわかった。
次に男の子の友人。
「Uber意外といいけど、バイクないとキツイ」
彼は貯金が来月の家賃分もないようだが、Uberと仕送りで上手く暮らしている。
最後の1人は学校で高時給で働く友人。
彼女はお金がないことに共感してくれた。彼女もお金がないことに困っていたようだ。彼女のアルバイト先は高時給であるが、時間や日数が不安定でかつ短い。
彼女に教えてもらったのはある配信サイト。
女の子が男性とビデオ通話をすると1分毎にお金が入る。
お金に困っていたわたしは自分が女であることを利用した。
そのサイトは完全ノンアダルト。
それでもセクハラ発言や行為を見せられること、セクハラ的な要求を求める人が9割以上を占めていた。
完全ノンアダルトといっても、女の子の映像のみがチェックされ、発言や男性の映像は運営には確認されない。
とりあえず、女の子の身は守れる、と。
それに完全に油断していた。
このサイトを始めて数日経ったある日、
ビデオ通話である男性が「自分で胸を触って」と言った。
そういった行為は禁止されている。
わたしは「無理です」と伝える。
すると男性は
「こっちはお金払ってんだ。早くやれ」と
捲し立てるように早口で言った。
わたしは、やった。
悪いとわかっていたけど、これくらいならという気持ちだった。特にお金が欲しくてこのサイトをしているわたしにとって、「お金を払っている」という発言は突き刺さった。
わたしにとって、今一番欲しいお金を彼は今消費してわたしの映像を見ている。
お金の価値は人それぞれなのに、わたしの価値観で考えてしまった。
次に男性は、下着を脱いで洋服を着てまた画面の前に来るよう要求した。
わたしはもうその時には自我を持っていなかった。
元々断ることが苦手な性格。加えて早口で言われると頭が真っ白になる。
そしてわたしはその通りにした。
続けて男性は早口でこう言った。
「服の両端の裾を持って、一瞬だけ上にあげて胸を見せて。みんなやってる。こっちはお金払ってる。一瞬なら運営も気づかないし何もしない」
むり。嫌。怖い。気持ち悪い。ふざけるな。
早口な言葉にそのような感情は無くなっていた。
「3、2、1」男の急かす声。
一瞬捲り上げる裾。
画面に映るわたしの胸。
わたしがわたしの目で確認した。
今、この記事を書いているのは、これが今日あった出来事であり、今も眠れず不安な気持ちを抱いているからだ。苦しくて苦しくてたまらない。明日が怖くて、未来が不安で眠れない。
本当にわたしは馬鹿だった。
あれは画面録画されていると思う。
要求してくる前に「画面が明るすぎるから暗くできないか」「頭の上にあるライトで頭が切れて見えるからスマホをもっと立ててくれないか」
そういったカメラワークの要求があったからだ。
どこかでわたしの顔と身体がばら撒かれている。
きっと、いや、絶対に消えることのない大きな傷がついた。
わかっている。馬鹿なのはわたしで、すべてわたしが悪くて、自業自得であるということ。
お金欲しさで始めた副業のようなもの。
危険と隣り合わせでセクハラに耐える日々。
わたしの意思で始めたもの。
わたしの意思は消えていたけれど、わたし自身がやったこと。
運営は守ってくれない。あくまで見ているだけ。
自分の身は自分で守るしかない。
大人なら誰もが知っている常識ではないか。
たった今、親に仕送りをしてくれないかと頼んだ。
お金が足りない。毎月なんとかやりくりしている。
貯金はもうない。どうにかして稼がなくちゃ。
生活が苦しいから始めた。
生活は苦しいけど、明日を生きていくお金はあるし、来月だって生きれると思う。再来月は今のままだと厳しいかもしれないけど。
ただ、その先の未来が不安で、どうにか変えなくちゃいけなくて、変わろうと思って始めた。
周りには貧困に見えていないと思う。だって、おそらくこれは貧困とは言えないから。もっと苦しい貧困の人だっている中で、こんなちっぽけな金のない大学生がお金を求めて声を上げるなんてとてもじゃないけどできない。
お金を求める声は上げない代わりに、そこでの失敗談だけは声を大にして人に伝えよう。誰も同じ失敗をしないように。精神的に苦しまないように。
わたしに残ったのは、サイトで貯めた僅かな金額と、ズタズタになった心、一生消えないデジタルタトゥーだった。
明日も明後日も、それだけじゃなくて来月も再来月も、来年も再来年も、ちゃんと満足に生きていたいという思いだけが先走ってしまうと、思わぬ方向に向かってしまい大きな過ちを犯すかもしれない。
どうか未来のわたしがお金だけでなく、自分のことも大切であるということを十分に理解していますように。
わたしからわたしへ、愛を込めて。
この文章は深夜2時に勢いだけで綴った文章です。おかしな文章があればお知らせください。
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