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【ジェーン・オースティンが好き】BBC「高慢と偏見」(1995年)を見て感じたこと。

昨日、2023年 9月8日より、バースにて
ジェーン・オースティン・フェスティバル
がはじまりました!

これから2週間、バースではジョージ王朝時代の服装をした人たちが、街歩きツアーなど様々なイベントに繰り出します。

というわけで、私もお祭りムードに便乗!
今回はジェーン・オースティン関連のお話です。

バースのジェーン・オースティン・センター

ジェーン・オースティン(1775‐1817年)は、ジョージ王朝時代のイングランドでアッパーミドルクラスの人々について小説を書いた作家です。存命中、彼女は作者として自分の名前を公表することはありませんでしたが、ジョージ4世が、まだ皇太子だった頃にジェーンの作品の愛読者であったという話は有名です。彼女の作品が、その後の英国人小説家達に影響を与えたともいわれています。

ジェーン・オースティンの作品は、時代を経て読み継がれる名作となりましたが、近代になっていくつも映画化、テレビドラマ化されるほどのオースティン人気の火付け役となったのが、BBCテレビシリーズ「高慢と偏見」でしょう。

イギリスで、さらには世界中で大ブレイクしました。

このテレビドラマの大ヒットから、
オースティンの人気はうなぎのぼり!
数々のジェーン・オースティン作品、彼女の作品からインスパイアされた物語(ブリジット・ジョーンズの日記など)が映画化、テレビドラマ化します。

みなさんも、映画「プライドと偏見」「いつか晴れた日に」「エマ」をご覧になったことがあるのではないでしょうか?

「ブライドと偏見」(2005)
キーラ・ナイトレイがとにかく美しい!エリザベスがこんなに美人なのか?という声もありますが、映画としては見ごたえあり。長く愛され続ける名作。


「エマ」(1998年)
主人公は、「恋に落ちたシェイクスピア」で一気にスターになったグウィネス・パルトロー。美しさできらきらしてしている。


『エマ』(2020年)
ヒロインには、注目の若手女優アニャ・テイラー・ジョイ。衣装が素敵!


『説得』(2022年)
主人公のアン・エリオットにダコタ・ジョンソン。今勢いのあるネットフリックスの作品。アメリカ映画。賛否両論あり。私は好きな作品です。

では、ここからはBBCテレビシリーズの高慢と偏見についてです!


「高慢と偏見」Pride and Prejudice 1995年

この作品は、1995年にイギリスのBBC1で各話55分、6回シリーズで放映。
1996年にアメリカのA&E Networkで2話づつ、3夜連続で放映。

このBBCのテレビシリーズ「高慢と偏見」の大ブレイクからオースティンブームが始まり、1996年には北アメリカのジェーン・オースティン協会の会員が50%増。1997年には、4000人に達する。現在、世界中にジェーン・オースティンのファンクラブがあります。

オースティン家の子孫(親戚)にあたる男性に実際に聞いた話では、BBCのドラマ以前はジェーン・オースティンとつながりがあるといっても周りの人たちからほとんど反応がなかったのに、このドラマ以降、事態は急変したそうです。

主人公のエリザベス・ベネットにジェニファー・イーリー。
相手役のフィッツウィリアム・ダーシーにコリン・ファース。

正直言うと、エリザベス役の女優さんのことは今回の記事を書くにあたり調べるまで知りませんでした。実年齢は、当時26歳。作品中で、エリザベスの年齢は20歳。エリザベスの見た目が今の感覚からすると、20歳にしてはかなり落ち着いていて大人びている(というか老けて見える)のは私だけでしょうか?髪型とお化粧のせいかもしれません。

姉のジェインは、22歳という設定。落ち着いた性格というのを配慮しても、やはり今の感覚からするとかなり大人びています。
ジェーン・オースティンの作品は、この後いくつも映画化されていますが、この「高慢と偏見」の主人公エリザベスが作品中での実年齢と比べて一番落ち着いていて、大人びているような気がします。

さて、この作品は、エリザベスと姉のジェインが結婚に至るまでの心理と様子が描かれています。ジェイン・オースティンの小説は、女性の心理描写がほとんど。男性が何を考えているかにはついては触れられていません。これは、ジェーンが現実主義で自分のわかることしか描かないという信念のもと小説を作り上げたことが影響しています。

しかし、テレビドラマでは、男性(ダージー氏)にもスポットを当て、男性達が趣味的な交際をする場面などが加えられています。


もてキャラとなったダーシー様

ビングリー氏とダーシー氏

このテレビシリーズによって相手役のダーシー氏が、

かっこいい憧れの男性

として、もてはやされるようになりました。

大富豪なのは、ポイントが高いです。
見た目もいいです。(コリン・ファースはかっこいいです。)
誠実な人。
と、素敵な要素はたくさんあります。
しかし、

ぶっきらぼうで、コミュニケーション能力に欠け、愛情表現に乏しい。

こういう人が、現代で人気を得られるのか?

果たして、ダーシー氏の魅力とは(超)お金持ちでハンサムという以外に、どこなのでしょうか?

紆余曲折の上、エリザベスが感じたように(お金持ちでかっこいいけど)高慢で嫌な男だと思っていた人が、実はそうではなく情熱的で誠実。やさしく、思いやりのある人だった。

という、流れが、タイトル通りこの物語の本筋というわけです。
しかし、一緒に家事をして育児もし、やさしくて誠実なのが当たり前。と考える現代人が、このタイプの人を好きになるのか?

という疑問が私には正直あります。

では、ジェインのお相手となったビングリー氏はどうでしょう?
やさしくて、人当たりがよく、社交的。
まあまあお金持ち。
まあ、誠実。
かなりの優柔不断。
見た目良し。

現代人には、こちらのタイプのほうが人気があるのではないかと・・。

とにかく、「高慢と偏見」「ブリジット・ジョーンズの日記」「ブリジャートン家」など、主人公がお金持ちだけど性格が悪そうな男性を毛嫌いするも、次第に相手のいい面を理解して惹かれていく。。。というのが、この手のお話のプロットです。


コリンズ牧師は悪い人なのか?

エリザベスのいとこで牧師のコリンズ牧師。
ベネット家の子供達は4姉妹で、男の子がいないため、お父さんの家と財産はいとこのコリンズ氏が相続します。そこで、彼はベネット家の娘の一人と結婚して、相続する遺産をベネット家が享受できるようにと考え、花嫁探しにベネット家を訪れます。

朗読中のコリンズ氏を遮っておしゃべりを始めるリディア。

かなり癖のあるキャラクターで、周りの雰囲気は全く読めず、お世話になり尊敬するキャサリン・ド・バーグ夫人をなりふり構わず、どこでもほめたたえる変キャラ。物語での彼の描写は、かなり否定的で手厳しい。

しかし、彼の考えや行動というのは、筋が通っていて、私にはいい人にみえます。牧師という安定した職にもついています。お金持ちの夫人から気に入られ、住みやすく改装した牧師館も与えられました。
しかし、結婚について前向きなのはベネット夫人だけで、エリザベスをはじめ、ベネット家の娘たちは誰も彼と結婚しようとは考えません。ベネット氏も、そんなに乗り気じゃないようです。

結局、コリンズ氏はベネット家の近所に住むエリザベスの親友シャーロットと結婚。二人は、美しく整えられた牧師館で、静かな生活を営みます。

コリンズ氏が好意的に描かれていないことは明らかですが、愛はないが、安定した生活を手に入れたシャーロットについて、作者ジェーン・オースティンはどのように思っていたのでしょうか?

ちなみに、ドラマでのコリンズ氏を演じた役者さんは当時40歳!物語のコリンズ氏は大学を出たばかりの23~24歳ぐらい。しかし、この配役は素晴らしくて、コリンズ氏の演技はまさに本物???と思わせる名演技だったのではと思います。


ジェーン・オースティンの観察力

ジェーンは、個々の登場人物に癖のある個性を与え、その人間模様を客観的に、的確に、物語の中で描いています。

メリトンを去る直前、ロングボーン(ベネット家)でのディナーパーティー。エリザベスとウィッカムの様子。彼女の絶妙な話術で、嘘つきウィッカムをどきりとさせる。

主人公のエリザベスにしても、聡明で社交的、他人を思いやるいい面を持っていますが、ダーシー氏への偏見、勘違いは甚だしく、思ったことはっきり口にする。当時の女性にしてはかなりの気性が激しい面(高慢?)を持ち合わせていたように思います。対照的なのが、姉のジェイン。美人でひかえめ。優しい心の持ち主で、人を疑う前にいいところを見つけようとする。
ベネット夫人については、目も当てられない場面が続出。娘たちの評判がガタ落ちするような言動の連発です。妹のリディアも同様。そういう完ぺきではない人物がたくさん登場する物語の中で、魅力的な主人公を描き、読者を引き込む物語を作り出しています。

そして、当時の階級社会、女性の生き方をリアルに描く!

結婚することが女性が生き抜くための手段。そうしなければ、兄弟や親に頼るしかなかった時代に、各々の登場人物、主人公はどうするのか?
ジェーン自身は独身で、小説家としての情熱を持ち続けたまま生涯を終えたのに、物語の主人公たちは幸せな結婚をする。
心から愛する人を見つけて結婚するという人生(物語)がいかに奇跡に近く貴重であるのか。というのを描き続けたのが、ジェーン・オースティンだったのかもしれません。


湖から出てくるダーシー様

このドラマシリーズで一番話題を呼んだとされるシーンが、第4話。
ペンバリー邸の湖に飛び込んで水浸しになったダーシー氏がびしょぬれになって出てきて、敷地内の庭でエリザベスと鉢合わせになるシーン。これは、原作にはないテレビ用の演出です。

シャツとズボンをはいたままの姿で、水浸し・・・・。
これをセクシーととらえるのか、間が抜けているととらえるのかは視聴者次第ですが、そのシーンのコリン・ファースをかっこいい!
と、思った女性がたくさんいたようです。

これが、そのシーンです。
まだドラマを見ていない方は、ネタバレします。↓

この作品をきっかけに、コリン・ファースは、大人気の俳優へと駆け上がります。

その人気はいまでも絶大。この時に着用していたシャツ(実物)が、チョートン村のジェーン・オースティンハウスに期間限定(2022年)で展示されていたこともあります!

その後、コリン・ファースが、「ラブ・アクチュアリー」と「ブリジットジョーンズの日記 きれそうな私の12か月」の作中で、水に落ちるシーンがあるのは、「高慢と偏見」でのシーンのパロディーといえるでしょう。


ロケ地となったレイコック村

村の中を散歩するだけで楽しい!

私が好きなイングランドの場所に一つが、コッツウォルズ地方の南部に位置する、ウィルトシャーにあるレイコック村です。小さな村は、ナショナルトラストが管理し、昔ながらの建物が残る通りや教会、修道院跡が残されています。

レイコックがロケ地となったメリトン村のシーン。Copyright BBC

ドラマでは、レイコックがベネット家が住む家の近くにある「メリトン村」のロケ地として何度か登場。

レイコック修道院の回廊は、ほかの作品でもロケ地として登場した。Copyright BBC

また、レイコック修道院の回廊は、第4話でダーシー氏がウィッカム氏と同時期にケンブリッジ大学に通っていた時の回想シーンに登場。

13世紀の建物が残る修道院の回廊。

ドラマの中で、村の風景が広がっているのを見て、嬉しくなりました!
レイコック村の素晴らしさは、また別の機会に語りたいと思います。

ハイストリートにある建物がロケ地になっていました。


【まとめ】
BBCのテレビドラマ「高慢と偏見」
全6シリーズを観て、感じたことをまとめてみました。
30年ぐらい前の作品なので、ネットフリックスの作品を見慣れてしまった私には、のんびりとした話の展開や俳優さんたちの化粧&衣装がちょっと古臭く感じますが、当時の生活習慣や立ち振る舞い、文化がよくわかる名作です。コリン・ファース演じるダーシー氏があまりにも不愛想なのが、今となっては天然記念物なみに珍しいのでは・・・と。思いました。
6話あるので、話の抑え方が丁寧。
この後に続く、映画「プライドと偏見」のキーラ・ナイトレイ演じるエリザベスの凛とした美しさと活発な感じもよく、原作の小説、テレビドラマ、映画と見比べるのも楽しいです。


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