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あれ、幻やったんかなあ、と今でも思う。
いや、幻やない。
何日か、いや、何日も前の話だ。
 
「すみません。このへんに風呂ないっすか」
 
コインランドリーにしばしば行く。
家に洗濯機がない訳じゃない。
洗濯が嫌いじゃないむしろ好きなわたしは、
時に手当たり次第なんでもかんでも全部まるごと洗いたくなる時がある。
着るものだけじゃなくなんでもおっきなものとかを
がーっと洗ってざーっと乾かして「ぼーっ」する時間を尊く思う。
これも、数日前に書いた仕事の合間の「逃亡」の場合が多いんやけど。
 
その日は近所の銭湯に備え付けのところに行った。
野外アリーナ席である。回して、「ぼーっ」、とてもいい。
 
1人の若者が歩いて来た。
 
その日銭湯自体はお休みの日だった。
 
歩いてきた若者は定休日の文字をみてがっくりと肩を落とした。
こちらにまでその〝がっくり〟が伝わるほどに。
 
そして、ふと、わたしを見た。
 
「!」
 
こわいこわいこわい。なになになに。
わたしならこんな格好の人に目は向けない。
普段着? のプロレスTシャツにしょうもないロッキンなパーカー姿の人に。
 
そうしていきなり言ったのが冒頭の言葉だった。
 
「え、えーっと、歩いて15分くらいのところに●●っていうのがあるよ」
「近いっすか?」
持っていたスマホで検索をして画面を見せた。
「ここ。検索してみて下さい」
「あー、今充電きれてるんすよー……」
「マジかー……。って、あ! そうや今日そこも定休日や。ごめん」
「マジっすかー……」
「あ! あの! まっすぐまっすぐ行ったら次の駅にもある! そこは? 駅わかる?」
実は銭湯マニアなので、隣の駅のそれを、案内したのだけれど。
「ありがとうございます。行ってみます」
「ううん。ぜんぜん。まっすぐまっすぐね。駅の横ね」
 
なんやったんやろ。
あれからずっと気になったり、
嘘、たまにふと思い出すというか顔が浮かんだりする。
ほんまになんやったんやろ。
あの後ほんまに辿り着けたんやろか。
 
例えば夜行バスに乗ってきてとかにしても、
時間も朝じゃなかったし、
そんなバスも着かないような我が最寄駅ってか場所に現れる訳はたぶんない。
 
学生さんみたいな感じの人だったけれど、
別にめっちゃ食うに困っていてみたいな雰囲気でもなかった。
きっちりしていたかと言われたらわからないけれど態度もちゃんと丁寧だった。
頭も下げてくれた。でも、がっくりしていた。
 
もしかして困った若者の振りをした何かやったんかな。
美女と野獣的な? いや千と千尋的な? 
え? わし、神様逃した?! いや、あれハク? 龍? マジかー! ちくしょー!
なにがちくしょーかよくわからんけど。
 
って、そんなしょうもないことはどうでもいい。

ちゃんと辿り着けたんかな。その後、肩落とさず元気で居られてるかな。
今日も元気で、いや、ぼちぼち居ようぜ見知らぬ若者。
がーっと、ざーっと、わーっと、って、だからそれ、なんやねん(笑)



また『空に星が綺麗』を引用しようともしていた。

続いて思い出したのは『ピンポン』の冒頭の
「I can fly!!」「Yes, You can fly!!」やねんけど、

結果なぜかハクになりました笑

ジブリが好きかめっちゃ好きかと言われたら別にそうでもそれほどでもない笑

◆◆
【略歴や自己紹介など】

構成作家/ライター/エッセイスト、
Momoこと中村桃子(桃花舞台)と申します。

旅芝居(大衆演劇)や、
今はストリップ🦋♥とストリップ劇場に魅了される物書きです。

普段はラジオ番組構成や資料やCM書き、
各種文章やキャッチコピーなど、やっています。

劇場が好き。人間に興味が尽きません。

舞台鑑賞(歌舞伎、ミュージカル、新感線、小劇場、演芸、プロレス)と、
学生時代の劇団活動(作・演出/制作/役者)、
本を読むことと書くことで生きてきました。

某劇団の音楽監督、
亡き関西の喜劇作家、
大阪を愛するエッセイストに師事し、
大阪の制作会社兼広告代理店勤務を経て、フリー。
lifeworkたる原稿企画(書籍化)2本を進め中。
その顔見世と筋トレを兼ねての1日1色々note「桃花舞台」を更新中。
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酒場話「心はだか、ぴったんこ」(現在19話)と
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担当していたDVD付マガジン『演劇の友』は休刊ですが、
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