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オバ様と芸人と、旅と

「いきなり!日帰りツアー」が後何回?!で終わる?のが悲しい。
観たり観なかったりながら見したり観なかったり観たらほろっとしていたから。
 
以前も書いたが、関西の朝の番組の中の週1コーナー。
芸人が商店街に赴き、歩いているオバ様に「今日今から旅行行きませんか」と声をかける。
オバ様は一緒に行けそうなお友達だの娘さんだのに電話をして「行けるっ」となったら
そのままびゅーんッと国内の1日ツアーへ。
観光、おいしいもの、お土産、タイトル通りの「いきなり日帰りツアー」。
なにげなく観始めたらなんだか「ああ、ええなあ」がいっぱいで気に入ってしまった。
 
関西の朝の番組のほんとーになにげないコーナーでしかないねんけど、じぃん、となるねん。
 
ナイトスクープだのなんだの、「芸能人じゃなく一般の人がもうおもろい」とか言われるこの地、しかも無敵の〝オバ様〟たちというのもいいのかもしれない、とも思う。
 
でも、ガイドがええのもあるなあ、とも思う。
 
オバ様を見つけ、一緒に旅行する、〝ガイド〟役はたむけん、こと、関西芸人界の宝、宝かどうかわからへんけどやっぱり宝、たむらけんじ。
5月からアメリカに行って活動する?とのことで、このコーナーの担当が終わってしまうという訳。
違う芸人さんが担当して続くのか、終わってしまうのか。
告知があったのかないのかもわからないので知らないけれど、
そんなこんなで、たむけんのツアーはこの春で終わってしまう。これが私的にちょっとかなしい。
 
距離感が、ええなあ、って、なんとなく。
べたべたしすぎない、過剰にいじりすぎない、
過剰に押しつけがましく人情的エモ的にじゃない、時にぽーんと突き放すようなツッコミというか、それはなんだか「芸人と素人」じゃなく、
ほんまに「身内のオバサンに、めっちゃノリノリで嬉しくとかじゃなくでも嫌々でもなく付き合う親戚の男の子」みたいな、そんな感じにも見えて。
わいわいがやがやツッコみツッコまれの珍道中、笑いと、おいおいと、だから最後はほろりみたいな。
 
旅。
旅先で普段なら見られない景色を見て、友人と普段とは違うごはんを食べて、おおきなお風呂に入ったりとかして。
違う場所だからいつもの自分や自分自身を思い出したり振り返ったりする。
が、帰らなあかん。その時間はやってくる。
身近な人を思い出しお土産など買う。そうして、日常へと戻っていく。
 
そのさまが〝ぎゅっ〟と。親戚みたいな名ガイド、ううん、たぶん酸いも甘いも噛みしめたベテラン芸人さんの案内であるのが、なんだか、いい。
 
時にガラが悪かったり、素敵に品がなかったり、
そんなオバ様たちがはしゃいで、楽しんで、きゃっきゃのええ表情(かお)になって、最後、たむけんの「今日はどうでしたか」に、表情を緩ませたり時に涙する。
 
「人生に残る思い出になりました」「明日からがんばります」

ちなみにこのときのBGMは『Stand by Me』。
 
ああ、いいな。
こうして、1日が終わって、また日常に帰っていくねんな。
テレビ、テレビに出る、テレビのひとらに旅行に連れて行ってもろた、
たむけんさんと旅行に行った、「あのたむけんさんのツアーに行けた」。
日常の中の、ちょっとした1日だけの非日常。
オバ様たちにとってはたぶん結構な「ハレ」の舞台としてのテレビの企画での、旅。
もう番組コーナーが関西のオバ様たちの間で浸透していて、
商店街のスカウトの段階で声をかける前から「旅行のやつか?」「わたし今日用事あるねん」もしくは「待ってました。わたし行きたい行ける」って言い出すオバ様とかも居て、笑ってまうねんけど。
 
全然派手なコーナーでもなく、長い時間でもないんやけど、ああ、いいな、って、ほんまに思わされる企画なんです。だったのです。
 
たむらけんじは、
画面で観ているだけの勝手な印象で勝手に言うけど、
むつかしいひとのようにもなんとなく思ったりもする。
めちゃくちゃしょーもない獅子舞ピン芸とかやってたり、
芸人仲間や後輩にいじられてマジでキレたりしているのを見ると。
雛壇の若手が全く笑っていなかったり素の顔をしているのが映ったりすると、
ああ、なんかあるねやろなあ、嫌われるというか、
よくもわるくもがんばりすぎるのか、やはりお金のことなんかなあ、ってこれらも観ているだけの勝手な想像でしかないけれど。
 
でもそのひとがフリーダムな関西のオバ様に振り回されながらも、
日本各地に一緒に行って、絶景とか見て、一緒にあそんで、美味しいもの食べて、
「そうなん? 離婚したん?」とか「娘さんは?」とか「ふたりは何つながりの友達なん?」
とかオバ様たちのことや半生などを引き出し、「うんうん」「ビール飲みぃな」とかって聞いている姿は、
もちろん仕事やねんけど、変に褒めすぎたり持ち上げすぎたりしないのが、やはりよくて。
旅先でご機嫌になったオバ様たちに「たむけんさんテレビでみるより男前やわ」とか言われて笑っている顔は、なんか、ええな、ってなる。
 
コーナー開始から何人何組のオバ様と付き合ってきたんやろ旅してきたんやろ。
 
面倒臭かったことも多かったんちゃうか。うっとーしかったことも多かったんちゃうか。
大阪人かつおばちゃんという距離感バグってる(己も人から見たらせやろと思うが)ことが多いひとたちの毎週の相手をするのは。
カメラがまわってへんところでもおしゃべりの相手や対応せなで大変やったやろう。
距離感バグってるのに加えて「非日常」でますますご機嫌かつほろりなオバ様たちやろうから、悪気なくめちゃぐいぐい来られただろうし。
「また行こな。ウチにだけ連絡先教えてな」とか言われたとき
「このコーナー始まってからその約束したオバ様数えきれんほどおるわ俺!(笑)」と返していたのには笑ってしまった。
 
別のタレントが引き継ぐのかは知らない。
他の人がやってみたのを観たら「こっちの方がええやん」ってなるかもしれへんしそれは観てみなわからん。
でも、今は、たむけんだから良かったんじゃないかな、とも思う。
わからへんけど。
 
でもでも。

これまで旅してきたオバ様たちの中には「あの楽しかった1日」はずっと残り、
たむけんの中にはうっとーしくもほんまに楽しそうないろんなオバ様たちの顔と「男前やん」って言われたことたちはずっと残るのやろうな、なんて。
 
やっぱり、なんか、なんだか、じぃん、です。



以前のん。


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大阪の物書き、中村桃子と申します。 
構成作家/ライター/コラム・エッセイ/大衆芸能(旅芝居(大衆演劇)やストリップ)や大衆文化を追っています。
普段はラジオ番組の構成や資料やCM書きや、各種文章やキャッチコピーやら雑文業やらやってます。
現在、lifeworkたる原稿企画2本を進め中です。
舞台、演劇、古典芸能好き、からの、下町・大衆文化好き。酒場好き。いや、劇場が好き。人間に興味が尽きません。

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