見出し画像

壊れていたのかも、本当はずっと⑤

皆さんは誰かに傷つけられたらどうしますか?
やり返しますか?
なかったことにしますか?
それとも心の中で恨みますか?

そのせいで精神疾患になったらどうしますか?
やり返しますか?
許せますか?
それとも心の中で恨み続けますか?

たった一言。
それだけで人の心は壊せてしまいます。
あなたが気づいていないだけで、死ぬほど苦しい思いをする人もいます。
言葉は時として単純な暴力よりも威力を持ちます。
どうか、自分が言われて壊れてしまうことは人には言わずにいてください。
どうか、心がとても弱い人間は存在すると言うことを知ってください。

勢いで相手を傷つけてしまうこともあります。
いつだって間に合います。
誠意を込めて謝罪の気持ちを伝えてみてください。
それだけで救われる人も少なからずいるはずです。

かといって、何をされても許せる人が強く、許せないまま壊れていく人は弱いのでしょうか。

私はこのnoteで長い闘いに決着をつけるつもりでいます。

---
「その人」の事は最初から苦手でした。
仕事柄、外面がとても良く私には優しい人でした。
でも自分の感情がコントロール出来ず、誰とでも喧嘩になるような人でした。
私を含め、「その人」の家族みんなが怒らせないように様子を窺うような、そんな人でした。

私の、15年間以上付き合った婚約者の、兄です。

私は人を嫌いになることはありません。
もちろん、苦手だったり、時には苛立ったりすることはあります。
ですがここまで嫌いになれる人は今後一生現れないのではないかとさえ思うくらいです。
それ程までに、精神疾患はつらいです。

あの日、ハッキリと心が壊れる音が聞こえました。
頭の中で響きわたる警戒アラート。
冷や汗、酷い耳鳴り、気の遠くなる感覚。

時間が経った今でもフラッシュバックに苦しみ、過呼吸になりそうな瞬間があります。

きっかけは、当時交際していた婚約者のお義母さんがステージIVの癌であることが発覚したことです。
癌は肝臓にも転移し、今現在も闘病中です。

私のこの弱い心では、あの日々はもう耐えられませんでした。
何もかも犠牲にしました。
お義母さんのために仕事をせず付き添う彼のために、私はがむしゃらに働きました。
24時間体制で看病する彼と彼のお姉さん。
私は少しでも彼を救うために、時間も体力もお金も、心も何もかも犠牲にしました。

週に何度も泊まりに行き、夜中に電話で起こされては様子を見に行く。
洗濯や、掃除、買い物も頼まれれば仕事の休憩時間に車を飛ばして行きました。

彼と結婚するために貯金が100万円以上ありました。
正社員ではない私が、コツコツ何年もかけて貯めてきたお金でした。

もちろん、その貯金も底をつきました。
生活するのにはお金がかかります。
でも病気で苦しむお義母さんに、そのお世話をしてどんどん病んでいく彼に、お金を請求するつもりはありませんでした。

私なりの優しさだったし、愛情表現だったつもりです。
心が壊れてしまった今、あの日々の感情を思い出すのは心が拒否しているようで、なかなか難しいことですが。

お義母さんは抗がん剤の副作用に苦しんでいました。
本当に見ていて苦しかったです。
プロフや今までのnoteにも書きましたが、私は嘔吐恐怖症です。
苦手とかそういう次元では無いのです。
「恐怖」で足がすくみます。
動悸や耳鳴りが出そうになります。
繰り返す嘔吐の中、背中をさすってあげることすら出来ず、真っ青で震えていました。

わかってはいました。
1番つらいのは、誰でもなく闘病中のお義母さんです。
私だって、もっと寄り添ってあげたかった。
背中をさすってあげたかった。
でもどうしても震えて、出来ませんでした。

ある日、そんな日常が壊れる出来事がありました。
お義母さんの副作用はどんどん酷くなり、ついには水分補給すら出来なくなってしまいました。
彼と2人で途方にくれました。
脱水症状なのは明らかであり、だけど何も出来ない。
目の前で命の灯火が消えかかっているような感覚すらありました。

お義母さんは本当に私を可愛がってくれていました。
だからこそ、出来ることなら!と私も精一杯、看病や家事を手伝ってきたつもりでいました。

でも限界でした。
何かあってからでは遅い、まだ結婚していない私にはとても背負えるような事ではありませんでした。
お金もなくて、どのタイミングで救急車を呼んでいいのかすらわからない。
本当に、命を背負えませんでした、怖かったです。


そこで、「婚約者の兄」に勇気を振り絞ってSOSを出した、というわけです。

後悔しています、心から。
言わなければよかったし、期待しなければよかったと。
もしもあの日に戻れるならこの選択だけは回避します。
貴方に相談した自分が、憎いです。
分かってくれると信じていた自分を許せないです。

お兄さんとは、2人だけで話しました。
彼とお兄さんは不仲でしたし、彼は病んでしまっていて話せる状態ではなかったからです。

何でも出来ると思ってました。
何でも抱えられるだけ抱えればいいと思ってました。
私が彼を守ればいいと思ってました。

お兄さんは、学歴や会社の名前で人を見るような人でした。

俺は就活も苦労しなかったし、給料にも満足してる。
あんなやつのどこがいいの?嫌じゃない?
俺も離婚してるから人のこと言えないけど、君は見る目がないよね。
あいつはもう障がい者枠じゃないと働けないんじゃないの?

以前言われた言葉です。
こうやって人を見下したり、馬鹿にするような言動が心の底から苦手でした。

お兄さんと、お義母さんの事で話し合った時間が、今でもフラッシュバックします。
今でも苦しいです。
ふとしたきっかけで、何度も、何度も、繰り返す。
こう言えば良かった、ああ言えば良かった。
闘えば良かった。
ヘラヘラした自分が、涙を流した自分が憎い。
夢にまで出てきて私を責める。
似たような言葉で思い出す。
ああ、本当にあの日に戻りたい。

ーお義母さんを、入院させた方が良いと思います。脱水症状でこのままでは危険だと思います。

-あのさぁ、なにもわかってないみたいだから教えてあげるね。普通抗がん剤治療って、通院でやるんだよ?それに入院っていくらかかるか知ってて言ってんの?君に払えるの?

じゃあ、なぜお兄さんも、お兄さんの奥さんも、何もしてくれないのですか。
仕事で疲れてるから家でゆっくり寝たいからですか?

-すみません、でももう限界なんです。看病が嫌な訳じゃないです。怖くて責任が持てません。

-あのさぁ、こんなにみんなが母ちゃんのために頑張ろうってしてるのに、君ってどうしてそんなに自分勝手なの?よくそんなわがまま言えたね。

心が悲鳴をあげてました。
私は自分勝手でしょうか?
わがままでしょうか?

-あの、冷静にお話してもらえませんか?私は…

-あ、1ついい?君の話し方って本当に要領を得ないよね。言葉を選んでくださってるんでしょうけど、俺そういう回りくどいの大っ嫌いなんで。今からハッキリ話してもらっていい?はい、お願いします。

苦しいです。
私は、自分が言われて傷つくようなそんな話し方は人にしたくありません。
悔しかったです。
握った手のひらに爪の跡がくっきりつく程に。

-では、ハッキリ言いますが、貯金も底をついてきて生活もままならないです。このままでは困ります。

-…だから何?あ、報告ですか?お金がなくなってもうつらいっていう報告?あー、はいはい報告ね。わかりました、聞きました。もう戻っていいかな?

悲しいです。
悲しいしか、なかったです。
結婚前、まだ他人。
お兄さんにこんな風に貶されるために頑張ってきたわけではないのです。

勿論、世の中にはもっと酷い言葉で傷つけられた人もたくさんいると思います。
大したことないよ、と思う人もいるでしょう。

でも、私には耐えられませんでした。
人生で初めて、こんな奴死ねばいいと、憎みました。
お義母さんの代わりに病気になれと、思いました。

バタン、と強めにドアが閉められたと同時に。
私の心は粉々になってしまいました。

よく言われることですが、恐らく言った方・傷つけた方は覚えていないでしょう。
言われた方は一生忘れられないとしても、です。

結局その夜、お義母さんは酷い脱水症状になり、お姉さんに連れられて入院になりました。
病院の先生にも、ここまで耐えずに連れてきて下さい、と言われたと聞きました。

私の意見が正しかったということになりますが、特に何も言われませんでした。
それもまた、ひどく悲しかったです。


皆さんは、心を壊されたらどうしますか?
許せますか?
忘れようと努力しますか?
それとも、復讐しようと、思いますか?

私はこの後、地獄のような苦しさの中、今日まで生きてきましたが、何度も何度も何度も、復讐したいと思いました。
同じ目にあえばいいと、思っていました。