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映画「子どもたちをよろしく」から——これは、現実です。

2020年2月29日に公開される映画『子どもたちをよろしく』の試写会に行って来ました。
この映画は元文部科学省の寺脇研さんと前川喜平さんが企画したもので、貧困、いじめ、複雑な家庭事情に苦しむ中学生たちを描いた作品です。

先に試写会に行かれた、若者支援をされている団体の代表さんから話を聞いていたので、ぜひとも観なければと思っていたのですが、今回は仕事の関係で一足早く観ることができました。その代表さんが「見終わった後、大人たちで話し合う場が必要」ということをおっしゃっていましたが、本当にそう思いました。

私は、無料塾をやっているというと、「今の時代に貧困の子どもなんているの?」「親の責任であり、本当に必要なら社会保障制度が助けてくれるはず。他人がボランティアで助ける必要はあるの?」ということを言われることがあります。そんなふうに、不利な状況にある子どもたちの存在が見えていない人は、本当に多数いるのが現状です。見えていないことを非難するつもりはありません。でも、見えていない人たちの目に、この現状を映していき、社会の空気を変えていくことができなければ、子どもたちの過酷な現状はそのままになってしまいます。

『子どもたちによろしく』では、この「いかに可視化するか」ということの重要性をひしひしと感じることになりました。
舞台は北関東のとある街となっていますが、その背景がなんとも、子どもたちをとりまく状況を物語っているのです。車通りがあり、お店もある商店街。でもその大半はシャッターが閉まっています。通学路にすれ違う大人はいません。背景に、人がいないんです。スクリーンに映される人は、子どもたちと、直接的にその子どもたちを食い物にしたり、つらい状況に追いやっている大人たち。
学校とのつながり、行政とのつながり、みたいなものが何も見えてきません。子どもたちは学校に通っていて、親とのやりとりもあるのですが、家庭の事情に踏み込むことはしません。その子のことが見えていない、いや見ようとしていない状態であることがわかります。

政治家のパーティーの場面も描かれていますが、そこでは「見えていない人たち」に対する侮蔑と、排除しようという声が上がります。よく知らないけど、街を汚すから排除しよう。
富める人は、見ることもせずに自分たちの理想の「今」を守ろうとします。

映画を見ながら、「この家庭ならこういう支援が入り込めるのでは」「あのNPOが関われば変えられるはず」など現実と照らし合わせて考えてみたのですが、社会から全然見られていない子どもたち、社会が見てくれることもあるということを知らない子どもたちには、届くものも届かないだろう……ということに改めて気付かされることになりました。

助けるための方法は、実際にはいろいろあるのだと思います。でも、そのいろいろが機能する社会でなければ、意味がありません。
映画の背景に描かれなかった、大人たち。それは私たちです。その大人たちが、「見る」ことから始めなければいけません。

無料塾をやっていると、実際に、大人から見えないところにいたこと、見て見ぬふりをされ続けてきたことで、大変に不利な状況に追いやられている子どもに出会うことがあります。
この映画で描かれていることは、現実です。

ぜひ、多くの方に見てもらえるように願います。

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