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テーブルライトを作りました。

テーブルライトを作りました。

さて、みなさんはおうちにテーブルライトをお持ちでしょうか?
作ったわたしが言うのもおかしいのですが、テーブルライトって絶対に必要って訳でもないですよね。
なくても困らないものなので、まあ買わなくてもいっか、みたいになりがちなんです。

でもですね、あるとびっくりするくらい心地良い空間が生まれるんです。これは本当に。
月並みな言い方しかできないのですが、今過ごしている毎日に満足をプラスするような、ご褒美というか癒しというか。
そういう体験がそこにはあります。

一室多灯の記事でもお話しましたが、別に部屋に照明がたくさんあれば良いわけではないんです。メインの照明とテーブルライト一つあれば、もう多灯といっていいでしょう。

照明びいきを自覚した上で言うと、インテリアの話になった時「お気に入りのテーブルライトが一つあるよ」なんて言われると卒倒しますからね、わたしなんかは。
中学生の頃のように簡単になびいてしまいますから。

お時間あればstoreアイコンからのぞいてみてください


そんなわたしは照明器具の中でも、テーブルライトに関しては、他の照明と違ってちょっと特別だと考えています。
それはとても“パーソナルなもの”だという事。照明器具というのは、基本的にはお部屋を照らし、暮らしを守るものなのですが、ことテーブルライトに関しては、隣でくつろぐあなた、目の前で頑張るあなたのためにあかりを放ちます。

境界のないあなたの居場所。
ドアを閉め切るでもなく、2階に上がってしまうでもなく、そこにいながら自分の領域を作る。
机で作業している時や読書の時はもちろんですが、お茶する時、なんにもしない時(←大事ですよ!)、あとは寝る前30分。
あかりを灯してみませんか?

何をしてたって、結局日々の延長なんだけれど、だからこそ、忙しい中でもそんな時間を作って欲しいわけです。
テーブルライトが一つある事で、そんな時間を過ごせるんだ、こういう時間が必要だったな、と想起してもらえれば何よりだと思っています。
みなさん、がんばったあとはきちんと毎日ご褒美をもらってください。

というわけで、以下ではこのテーブルライトを例のごとく開発現場ならではのネタも併せて紹介させていただきます!
飛ばしてももちろん結構ですが、最後だけは、、最後だけは読んでくださいー!
ではどうぞ!

ならではオマケ話

シェードふりふり

No.015/あさがお(本体:オーク)

まず本体の形はですね、なんのヘンテツもない、、、いやアピールする気ないんかい!いえいえ、もちろんそんなことはなくて。
線を何本引き直したかってくらい引いた中から掬ったシルエットなんですが、これってどこまでいっても“意匠”なんですよね。
かわいいと思ってもらえるか、素敵と感じてもらえるか。あの子の書いた文字って何だか好きだなって感覚に近いと思ってます。

デザインというものを勉強すると、理由やコンセプトで埋め尽くして、それがない部分は引き算する(削ぎ落とす)ことこそ美しい、みたいな道を一回は通るんですが、それではションボリしたものしか出来ない、という結論に個人的には至っています。

ここでわたしが敬愛する深澤直人氏の言葉をご紹介します(急になに?)

「僕はそぎ落とした簡潔なものを作ろうと、自分には言い聞かせてやってきたんだけれど、今となってはそれだけじゃダメだなと考えるようになりました」

道具の足跡—生活工芸の地図をひろげて

これですよ。これなんですよ。
ずっとそれが“良い”と思ってやってきて、シンプルの代名詞のようになった方が、これを発言できる。これ最高なんですよ。さらにですね、、、
あれ?深澤さんのいいところ紹介になりかけている。

じゃあなくて、今回そこは置いとかせてもらってテーブルライトに戻ります。

実は首を少しふりふり出来るようにしています。題名と写真を見て、ふわふわのふりふりフラワーみたいなことかな?と思ったでしょう?違うんですよ。

シェードがちょっと”振れる“という意味です。照らす場所を調整するための構造なんですが、その姿が首を傾げているようでかわいいなぁとずっと思っていて。それを実現させるべく、可動部品をわざわざこの為だけに作ってもらいました。
もう次はやってくれないかもです(泣)
そしてをちゃんと作って採用しているテーブルライトは地味にどこ探してもないと思います。

シェードの角度が変えられるテーブルライトというと、古いアンティークのものや海外製品で、電球を直接挟み込むクリップタイプがあるのをご存知ですか?
単純な構造で作りやすいため安価な反面、使用者が電球に合わせて広げないといけないというアナログなやつ。中国の部品屋さんなんかにいくと、蹴飛ばしてしまいそうなくらいそこら辺に転がっています。笑

レトロな雰囲気は良いのですが”電球を直接挟み込む“という構造に関しては、どうしても避けたい理由が二つあります。

今ではアンティークランプでも加工修正されて販売されているようです。


まず一つ目は「電球メーカーが電球を挟んでいいよって言ってない」です。

簡単に言うと、器具側の都合で製品(電球)にかけて欲しくない負荷がかかっているという事。
今でこそLED電球になり、電球本体の強度は上がりましたが、白熱電球の時なんかは薄いガラスで、かつ、中が真空になってたりガスが封入されてたりする。

そんなものにバネ構造のクリップを、電球の丸みに甘んじてスッ、そしてギュッと挟み込んで本当に大丈夫なのか。大丈夫じゃないです。

仕事柄、何度か経験してるのですが、白熱電球が掴んだ手の中でボンッと破裂するのはなかなかの恐怖です。さすがにLED電球になってそれもなくなりましたが、これを構造の一部として勘定に入れるのは開発者としてはう〜んという感じです。

ちなみにこの仕様、海外だとプチプラ系のインテリア雑貨店(小さいIKEAみたいなところ)とか、ホームセンターみたいなところではまだたくさん売っています。なので、このタイプのものを買われた場合は取り扱いにご注意下さいね。

そして二つ目は、シェードの位置が電球によって変わってしまうということ。
当たり前なのですが、シェードや本体のサイズ、位置、そして全体のバランスというのは成り行きで〜ということにはなりません。それが意匠や構造を設計をするということ。

少し専門的な話になりますが、製品というのはその状態で試験をするので、責任の担保が難しくなります。海外ではまた違う検査基準があるから、たくさん流通してるのかも知れません。

今では多くの製品は、お客さまに電球を選んでいただくという想定があります。
なので安全面や保証はもとより、付ける電球によってシェードの位置が変わってしまうのは、ちょっと勿体ないというか。
一番いいバランスで使ってもらえたらなぁという思いがあって。


そんな二つの理由から可動部品をオリジナルで作ってもらった次第です。

素材は布です

No.015/ふよう(本体:オーク)

もう一つお伝えしたいところがあります。
シェードのことばっかりですいません。笑

写真で見てもらっても伝わると思うのですが、布シェードに他ではあまり見られない程の風合いがあります。なんだか柔らかな質感が残っていると思いませんか?
照明器具の布シェードって大抵の場合、内側にプラスチックが接着されてるんです。それが安っぽいだの、凹んでしまった破れてしまったと、みなさん本当にお嫌いのようで。

なのでそれを取っ払って、なんなら布だけいつでも取り替えられるようにしました。その分、輪郭の甘いふんわりした表情が出ています。これはもしかしたら好みが分かれるかも知れません。
自分がやるなら、量産と手作りの間くらいの感覚を大事にしたいという思いがあったので、ちょうどいい落とし所かなと思っています。

そもそも、なんでプラスチックが貼ってあるかというと、布という柔らかな素材にかたちを持たせるためです。そして、何より作りやすいというメリットがあるからなんです。
量産品にとっては“作りやすい”というのは本当に優れた事で、クオリティが保たれた上で価格を下げられるという利点があります。

そしてもう一つ、これは全てにおいてではないですが、布が薄くて済むという事。布というのは本当にピンからキリまであるのですが、照明器具に使われている布って思ったほど種類がないんです。しかも安いものでも、高いものでも。あぁ、またこれか、というのが結構ある。

そういうものは、剥がしてみると、とにかく目が粗くてスカスカな事に気付きます。プラスチックとセットで一人前という感じ。ただし、これもメーカー側からすると、見栄えと価格のバランスをとるための施策といえます。
なので、安っぽいという印象はあながち間違ってはいないのです。

No.015/しろ(本体:ウォルナット)


わたしはじつは、布の照明がかなり好きで、同じくそういう方とお話をすると、決まってメンテナンスとかの話になるんです。汚れや埃がついたらどうすんのみたいな。
「柔らかい布やハタキで優しく拭いて払ってください。それはもう赤子を扱うように優しく」みたいな。
本当は取り外せて外でパンパン出来たらいいよね、みたいな話になる。でも、出来ませんよ。下手したらプラスチックが凹んだり割れたりするんだもの。

そんな話になったので、そう出来るようにしました。
外してパンパンやってください!そして汚れた時のために換えの布も準備しておきます!
例えば、クッションカバーとかラグとかみたいにシーズンによって布取り替えるのもおすすめです!そんなマメに楽しんでいただける人がいるか分かりませんが!お店屋さんとかならいいかもですね!
ふ〜、ややグイグイ営業してしまいましたが。

ちなみにこの布だけ取り替えられる構造で、替えを別売りしている器具も国内ではないと思います。
じつは灯具(電源とソケットがある製品)+シェードで照明器具を”販売“する場合、ちょっとややこしい問題があって。長くなっちゃうので、割愛しますが。

ともかく、布の厚みや柔らかさ、そして風合いはかなり吟味して選びました。なんなら、イチから織ってもらったのもあります。
とか、さらっと言いましたが、これかなりありがたい事なので別の記事で紹介します(←懲りずに後回し)

ただオリジナルのやつはそもそも生産量が少なくて、すでにないものが出てしまって。人気があればまた検討してみます。その時その瞬間に、お気に入りがございましたら幸いです。

図案から織ってもらうという贅沢極まりない始末。ご縁があって出来ました。

いろいろ言いましたが

さて、製品の特徴なんかも伝えましたが、やっぱり何よりは最初にお伝えしたテーブルライトのある生活をしてみてほしいという事です。そのことに比べると、開発の妙みたいなものは些細なことかも知れません。

なにせ日常、空間、そしてそこに流れる時間全体に、わずかとはいえ幸せがプラスされるのですから(と、照明びいきのわたしが言ってます)

照明がくれる時間と空間。今まで知らなかったことが悔しい!も悪くないのですが、ここで知れてよかった。と思っていただきたい。
声を大にしたって聞こえないSNSの片隅で言い続けていますが、少しでも伝われば。

というか、一つの製品にこんなに話して大丈夫なんですか?ジャパネットみたいに見てるならまだしも、読むってエネルギー使ってもらってますよね。
おつかれさまです。ありがとうございます。
ささ、スマホは置いてテーブルライトのあかりで過ごしてください、は、あざとい!!失礼!

相変わらず長々となりましたが、ここまで読んでいただいて本当にありがとうございます。

あなたのお手元を照らす役割を、いつかわたしがさせていただければ何よりです。

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