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その本、お似合いです #書もつ

本を読み始めた、毎日のように本を読んでいる、本を読みたい、好きな作家の作品はひととおり読んだ、時間を持て余している、日本語が恋しい・・さまざまなシチュエーションがあるように思う「本が読みたいとき」。

でも、そんなときに手元に本がなくて、自分でも読みたい本が思い浮かばないとき、誰に相談したらいいのでしょうか。

毎週木曜日には、読んだ本のことを書いています。

その人に合わせて本を選ぶサービスはあるし、ネット書店で本を買えば、同じ作家や似たような物語、あるいは購買実績などから「あなたにおすすめ」などと紹介してくれる機能もあります。

そんな本紹介サービスを、出会い系サイトを駆使して繰り広げた猛者がいました。

・・と書くと、いかにも、変な人が信じられない熱量で、強引に押し付けているような雰囲気すらしてしまいます。この作品のタイトルからして、きっとそんな話なんだろう・・と、思って読み始めたのです。

出会い系サイトで70人と実際に会って
その人に合いそうな
本をすすめまくった1年間のこと
花田菜々子

出会い系サイトに登録している人たちは、一体どんな人たちなのでしょうか。僕自身は、全く経験がないのですが、雰囲気のようなものはサイトによって異なってくるのかなと想像しています。

この作品に出てくるサイトは、より透明性があって、会う時間の制限や申請方式など、従来の恋愛(?)前提型の出会い系とは異なるようでした。当時ではだいぶ新しいもののようでした。

筆者は、そんなサイトに登録して、さまざまな人と出会うことにしたのです。闇雲に出会うのでなく、少しずつ知識を蓄え、取捨選択も明確にして、いわば戦略的に。

冷静に状況を見つめつつ、自分の心情をも把握する・・僕は、こんなにもその時の様子を再現できるなんてと、驚きを持って読み進めていました。(あとがきにそのネタばらしがありました)

向き合うべきことに向き合わずに、楽しいことだけやって逃げてるだけだろ、こんなの、と、自分の声が後ろから追いかけてくる。
だけど、逃げ道がなかったらどうやって生きていけると言うのだろう。

119p

人と会い、本を勧めることが”楽しいこと”好きなことだったと気がついた筆者。でも、現実の生活ではさまざまな問題を抱えていて、葛藤と対峙していたのでした。

会った人が本を読んでくれるかどうかは分かりません。作中には「読みました」の返事があった人しか(例外は何人かいた)書かれていませんでした。

それでも、自分を変えてくれた本屋の仕事に感謝し、そして信じる”本の力”に託して、目の前の人の人生を豊かに、あるいは支える存在になってほしいと願う筆者の想いがありました。

その日に会って、初めましての人の話を聞いて、本を勧めるなんてこと、本の知識がなければできないし、人に興味がなければとても難しいと思います。いったい、なぜそんなことをしたのでしょうか。

 でも本を介してなら、気持ちを押し付けることなくこんなふうに知らない人と気持ちを交換できたりする。本の相談という名目がなければ 〜 略 〜 私もその背中を押すことはできなかった。
 だから本という存在が好きだ。こんなふうに人に本を勧めることができる本屋という仕事も。

217p

本を勧める話(筆者は”冒険”と言っていた)が書かれた本を、またこうして誰かに勧めることは、筆者曰く“無限ループ”なのだとか。つまり、本を紹介する本を紹介する本を紹介する本を・・。

望むところです。

この作品には、紹介した本の一覧も載っているし、タイトルは70人だけれど、中に出てくるのは10人程度でした。(それだけ濃いキャラクターなのです)

本を読む人なら、きっと頷ける瞬間もあるし、本を通じて元気になるために、読むだけではなくて、何ができるのか考えてしまう内容でもありました。

タイトルから想像する内容とはきっと違うはず。本を読む人からの視点で、本を勧められる体験を知って欲しいと思いました。読み終えて、きっと誰もが思うのは、自分もこの人に会いたかった、会って本を勧めて欲しかった・・でしょうか。



筆者が最初に働いていたヴィレッジ・ヴァンガードは、本を読んだことがない人が、本を選ぶお店としてもおすすめかなと思います。一時期、僕もハマった経験があり、福袋まで購入したこともあります。

本につけられたPOPが楽しいし「いわゆる本屋」らしくないのです。知らない人は、行ってみると少なからず衝撃を受けるはず。雑貨の猛攻に注意。



投稿に似合うサムネイルをいつも考えてくださるinfocusさん、ありがとうございます。今回も、いいですねぇ。服を着るように、本を勧める、僕も紹介してもらいたいし、誰かにお勧めもしてみたいです。

#推薦図書 #選書 #花田菜々子

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