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クリエティブ野郎の好きな音楽が一緒だった件 #書もつ

いきなり、口悪く紹介したくなって書いてしまった。驚かせてごめんなさい。タイトルにある「クリエティブ野郎」とは誰なのだろうか。あなたは誰を思い出すだろうか。

突然だが、ここで3択クイズに答えて欲しい。クリエティブ野郎とは、誰のことを指すか。

1、落合陽一

2、又吉直樹

3、星野 源


うまくバラけさせたと自負する選択肢になった。どの人物も著作を持っているし、クリエティブな存在として、その方向性はそれぞれ違っているが、多くの人が認知している人物ではないだろうか。

唐突に宣言するが、2月はエッセイを読もうと思っている。

動機は単純で、人生ビンゴの一つのコマに「エッセイを12冊読む」があるからだ。お察しの通り、毎月1冊で年間12冊なのだが、さっそく1月分は未読となってしまった。

このままでは達成が危ういため、今月をエッセイ読む月間にしたのだ。

毎週木曜日には、読んだ本のことを書いている。


クイズの答えは、3、星野 源 である。


働く男
星野源

何を隠そう、僕は彼のことをあまり知らない。

ドラマに出ていて、主題歌も歌っていた人、くらいな理解だったから、別のエッセイ集を読んでものすごく不安になった。この人は大丈夫なのか・・と。

小説以外の、大抵の書籍作品には「まえがき」がある。読み手がそれらに接する場所は本編の前であるけれど、書き手は本編を書き終えてから書いているはずだ。単純なことだけれど、とても大事な役割がまえがきにはある。今作には、そのことをはっきりと分からせる事柄が書いてあった。

そういえば彼は、大きな病気をして、芸能活動を休止させていたことがあった。働きすぎ・・というよりは、また別の原因があったようだけれど、それにしても病気になるまでの彼は、本人も自覚するくらいに働いていた。

働いていた記録を残す、働くことを誰かと語る、そんな作品だった。

僕が予想していたエッセイとは違った。

雑誌の連載コーナーだった映画の視聴記録が冒頭から数十本にわたって収録され、彼の感性とそれを言葉にできる発想に驚かされる。

様々な種類の映画を観ているにもかかわらず、そのどれもが瑞々しいエピソード(大概しょうもないのだが・・)とともに紹介されており、映画が好きなことも分かるし、何よりも人間を見つめる視点が、僕とは全然違うなと思わされた。

僕が観たいと思った作品名のメモ

「英国王のスピーチ」
「テイカーズ」
「アニマル・キングダム」
「キツツキと雨」

この作品を読んでいて、彼がいろんなことを仕事に“している”のを、とても羨ましいと思った。音楽も、演技も、そして文章も、その全てに才能がないと言われ、しかし突っ張って続けている、続けてやる、という意志を汲んだ。

周りの大人たちが、面白がって彼を表に引っ張り出したことが分かる。面白がる人たちがそばにいてくれたことだけでも、それは途轍もなく運がいい。さすがだ。

作中には、本人が好きなものや影響を受けたものが55種類挙げられていた。

全体を見れば、どんな時代に生きていたのだろうと思うような幅広い時代に生まれた作品ばかりだった。しかも昭和寄りの。そういう人が芸能界にいて、しかも若くて賢いときたら、ちょっと尖っている存在になり得るだろう。

その55のうち、通勤電車の中で読んでいた僕が、危うく声をあげそうになったものが2つあった。

06.チェット・ベイカー

48.クリフォード・ブラウン(&マックス・ローチ)

どちらも、伝説的なジャズ・トランペッターである。残念ながら、多くの人はご存知ないだろう。

チェットは、水が滴ってこぼれ落ちてくるような音色がする。トランペットだけでなく、甘く切ない歌声も魅力的な演奏家である。学生時代に何度となく聞いたし、ある時、東京・表参道のライブハウス、ブルーノート東京に、まだ存命だったチェットが来日したライブを聴きに行った記憶がある。

クリフォードは、後世のジャズトランペッターに大きな影響を与えた、正真正銘の名手だった。若くして夭逝してしまったこともあり、その演奏は伝説になっている。

僕は、クリフォードが好きで好きで、彼の演奏しているアルバムの全集のようなものを買い求めたこともあった。(ちなみに、ニックネームは、ブラウニーである)

星野が挙げていた「Cherokee」はジャズの定番曲スタンダードの一つではあるが、クリフォードのこの演奏が、トランペットで演奏する場合の完成形でもあると思う。

とにかく、クリフォードにしかできないフレージングの妙が、聞き手の耳と胸に突き刺さる。ジャズの古めかしいなどと言うイメージを払拭する、躍動感と挑戦心に溢れているのだ。マックス・ローチのオシャレだけど、粗野な面が隠しきれないドラムもこれまた謎の親近感が湧く。

曲名を聞けば、僕の頭には、クリフォードが吹いた超絶かっこいいフレーズが思い浮かぶ。同じ楽器を吹いている者としては、真似したいけれど、火傷するような怖さもあって、遠くから見ているような。そのフレーズを、まさか星野も知っているとは思わなかった。

僕はいまのところトランペットは吹いていないけれど、これはどうにかして復活させたほうがいいのではないか、とすら思えるような発見だった。

エッセイを読んで、その書き手に感情移入することは良くあるが、友達になりたい、いや友達になれるはずだ、肩を組もうではないか、と確信することはほとんどない。

だから、この作品を読んで良かった。

ついつい長くなってしまった。

星野源を知らない男が、彼のエッセイを読んで、人となりを少しずつ理解し、観たい映画を増やし、同じ音楽に感動していたのだと喜び、働くことを肯定しつつも自分には無理だと諦めるような気持ちも混ざった、なんとも爽やかで苦味の残る読み終わりだった。

こんなにもクリエイティブなことをしている人はいない、と思う。

浅薄な知識で、こうも断言してしまうくらいに、僕は自分自身を卑下しているのかも知れない。才能なんてなくても、仕事になることがあるのだと知った。

たとえば、こうしてnoteで書いてることを、もっと自慢したいし、この投稿を読んでくださる方とも、もっと言葉を交わしてみたいと思った。


なんて作品を作ってくれたんだ。星野源よ。

ありがとう。

なかなかなタイトルに、どんなサムネイルがつくのか心配&期待していました。カッコ良いやつー!infocusさんありがとうございます!


#推薦図書 #星野源 #映画



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