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ファンタジーの夢と現実 #書もつ

特徴的なタイトルは、主人公の名前でした。モモ、というと日本語では果物や身体の一部を指す言葉として存在していますが、アラブ系の国では名前としてメジャーなのだとか。

物語の冒頭の描写からすれば、イタリアの古代ローマを思わせる景色に、これはイタリアの話かな?と思わせられます。でも、違う。

児童文学としてとても有名ですが、なかなか紐解くことができなかったのは、我が家にあるのが単行本で、箱に入っていて・・と言い訳をしていたからでした。

聴く読書でこのタイトルを発見した時には、その時間の長さ(15時間以上)に、ちょっと躊躇いましたが、朗読が声優の高山みなみさんだったので、勇んでダウンロードしたのでした。

モモ
ミヒャエル・エンデ

教師としての経歴のある作家ですが、僕はモモよりも前に、映画として「はてしない物語」を知っていました。(「ネバーエンディングストーリー」です。)

海外のファンタジーは、架空の場所で、架空のキャラクターたちが、架空の文化のようなものの中で動いていることが多く、なかなか入り込めなかった印象があります。

モモだって、そんなふうかも知れないなんて思いながら聴き始めると、ハッとするほどに現代社会に対する皮肉めいたものが感じ取れました。

主人公の特異性のことだけでなく、周囲の友人と呼ばれている人たちもまた、僕のまわりでは見かけない、想像上の人物像でした。章ごとのタイトルも対比された言葉が並び、それは子どもに向けたメッセージのようでもありました。

物語は華やかに始まり、不穏な空気が静かに流れ、どうにもならない雰囲気に、読み手は不安になりました。

大人たちは気がつかないうちに、時間がどんどんなくなっていって、なぜこんなことに・・とみんなが思っているけれど、元には戻らないという落胆もある。

無駄なこと、効率が悪い、と時間を切り捨てているうち、楽しいことや好きなこと、慰めや労いなどが存在しない社会になってしまう。

そのことに気がついた子どもたちが立ち上がり、モモが戦う物語に、なるほどこれは大切な話だと納得し、もっと早く読みばよかったと思うのでした。

物語では、何か悪いものと対峙するときに、助っ人の存在がありますが、この物語のそれは動物でした。なぜ、その動物なのか。

きっと、信頼感、静けさ、力強さを感じさせてくれるからかも知れません。イソップ童話を思い出せば、その選択もまた子どもにとっては理解しやすいものだと納得するのでした。

朗読の声は、子どもの頃から見ているアニメのキャラクターたちを彷彿とさせるものも多く、声のプロの技術の高さのおかげで、心地よく楽しい時間でした。

長い物語ではありますが、ゆっくりと楽しみたい作品でした。


2倍速で聴きながら、ほかのことをして、読書している(と言い張る)のはむしろ、自分が”灰色の男たち”になったようで、強烈な皮肉でもあります・・。


#推薦図書 #エンデ #モモ #時間 #声優 #Audible

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