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「私の年金はいくら?」に即答する「公的年金シミュレーター」とは?

自分の年金額を手軽にスマホで試算できる「公的年金シミュレーター」が2022/4/25より公開されています。

今までもPCで詳細の試算ができる「ねんきんネット」がありましたが、マイナポータル連携の本人確認などが必要で「気軽に使う」にはややハードルが高いものでした。今回リリースされた「公的年金シミュレーター」は簡易版の概算となりますが、本人確認不要入力情報も保存されません

このツールのメリットは何でしょう。
それは、今後の働き方の変化も加味して「①公的年金で老後いくら受け取ることができるのか」を試算でき、その結果を持って「②不足分をどうするのか」を自分主導で検討できることです。
いわゆる「老後2,000万円問題」などというもやっとした煽りや、「公的年金は破綻する」などというデマに惑わされることもなく、まずは今後の自分の働き方を元に「現行制度でいくらもらえるのか」をファクトベースで試算して、金融機関や金融商品販売業者とシミュレーション結果を踏まえて商品選定を行う。この当たり前の手順を実現できることが最大のメリットといえるでしょう(さらに「自分主導」で資産形成をするためには最低限のマネーリテラシーは必要ですが)。


私はいくら受け取ることができるの? 

では早速公的年金シミュレーターを使ってみましょう。
まず「生年月日」を入力し、次に「ねんきん定期便(年一回の誕生月に郵送されてきます)」に印刷されているQRコードを読み込みます。これにより、今までの年金加入情報が自動入力されるので正確かつ簡単です。

年金受取年齢がまだまだ先の方は、自分のざっくりとした全期間の平均年収(額面)を入れて(より精緻にするなら5~10年毎に平均年収を入力して)試算する事も可能です。
以下、1976/10/1生まれの会社員(現時点で45歳)で入社から60歳定年まで平均額面年収500万円で働いたと仮定して入力します。

すると65歳から年額約169万円の年金受給という試算結果となりました。

さらに、スライドを動かして受給開始時期を65歳から70歳に繰り下げると、グラフも年額約239万円と42%アップに変わりました。このように直感的に使えるところがこのシミュレーターの特徴と言えるでしょう。

スライドを動かすと・・・
グラフの表示も変わります

老後に不足する生活資金はいくらなの?

では、この試算結果を元に老後生活資金の目標額を検討していきましょう。
先ほどの年間239万円(月約20万円)を生活費のベースにしたい場合、65歳受取開始の下図①では年70万円不足します。85歳までなら20年分で1,400万円、95歳までなら30年分で2,100万円の不足です。全額を一時金で準備する必要はないものの、どうやって不足分を補うのかが検討課題となります。

しかし「何歳まで生きるのかがわからない」ことが老後資金準備の最大の悩みどころです。つまり1,400万円で足りるかどうかもわからず、上乗せの目標金額が確定しません
そうであれば受取開始時期を繰り下げて70歳にして、下図②にある65~69歳の5年間の不足分1,195万円をどうやって準備するのかを検討するほうが、目標設定としては合理的ではないでしょうか。70歳以降は、年間239万円を生きている限り受け取る事が出来るのですから。

※なお、上記の試算は単身世帯なので、夫婦世帯では夫婦の年金合計での検討となります。

収入が二倍なら受け取る年金も二倍?!

「もし平均年収が500万円ではなく二倍の1,000万円なら、65歳からの受取年金も169万円の二倍で338万円だな」と思われた方は、今一度「公的年金シミュレーター」で試算してみてください。結果は、約1.5倍の249万円です。

注)シミュレーターの年収上限は990万円です。

厚生年金保険は収入が多ければその分多くの保険料を払う代わりに、受け取る年金額も大きくなります。しかしながら社会保障として所得再分配がされているため、年収の高い方ほど所得代替率(年金額の現役時平均賃金に対する比率)が低くなります。なので年収の高い方はリタイア後の日々の生活は少し質素にしていく必要があるかどうかを、金額ベースで確認してみてください。
逆に収入が低い非正規会社員の方は、可能な限り社保完備の会社へ移ることが老後の生活資金確保の近道です。今後厚生年金保険に加入して働く前提で年金額を試算してみて下さい。年収が低い方ほど厚生年金保険に加入したほうが、所得再分配もあるので圧倒的に有利です

将来の働き方もイメージして

「70歳まで働くのは大変だ・・」と思われるかも知れません。そうであればまずは65歳まで頑張って働いて、そこから「もう2~3年繰り下げて様子をみるか」というスタンスで十分だと思います。特に30代、40代の皆さんはこれからどのように働くのかをこのシミュレーションでイメージ化して、金融商品を検討する際も「公的年金の不足分をどう補うのか」という視点で考えれば良いのではないでしょうか。

シミュレーションの結果はCSVでエクスポートできるようになっています。金融機関や販売業者とこのデータを共有しながら商品選択をしていけば、大きな誤解が少なくなる事も期待できます。金融機関側にも顧客の目標額が始めから明確になり、説明時間が大きく短縮できるという販売コスト削減のメリットがあります。

皆さんも誕生月に「ねんきん定期便」が届いたら、まずは試算してみてください。そして新しい金融商品を購入される際は、是非再度試算して結果データを商品選定に活用してみてはいかがでしょう。


参考資料:
・公的年金シミュレーター使い方ホームページ(試験運用中)/厚生労働省
 https://www.mhlw.go.jp/stf/kouteki_nenkin_simulator.html


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