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エコチャレンジ: 布のテーブルナプキン

生活や旅の中で、エコについて考えたことや選択を不定期に文章にしています。今回はティッシュペーパーの代わりに布製ナプキンを用いる試みです。

1. 日本のティッシュペーパーは安すぎる?

こないだ、ティッシュペーパーの値上げに関する記事に付随して、そもそも外国ではティッシュが高いというコメントがあった。その人はアメリカを例にとり、箱ティッシュの3個パックが5ドルほどで、日本の倍近くする。日本では高品質なティッシュが安価であるが故にティッシュの消費量が多いとあり、なるほどなと思った。

また、同じ時期に読んだ誰かのブログで、海外旅行には日本のポケットティッシュが必需品、街頭で無料配布しているものでもクオリティーが高く重宝する、とあった。

確かに日本を出ると日本製の消耗品の質の高さに気づかされるし、外国暮らしでその快適さを恋しく思う人は多いと思う。ティッシュの他には、ストッキング、サランラップ、今は大分薄くなってしまったけどレジ袋、生理用ナプキン、歯ブラシ、など。


話はティッシュに戻るが、以前フランスに住んでいた時、ホームステイ先にティッシュペーパーが置かれていなかった。お金持ちの家庭だったが消耗品の消費にうるさく、キッチンペーパーで鼻をかんでいると、「それは鼻紙ではない」と注意された。仕方なく自分で買うことにしたが、ティッシュ一箱の値段が200〜300円くらいして気軽に買ってポイポイ使える感じではない。周りでティッシュが必要な人は、箱ティッシュよりは手の出しやすい(でも量はだいぶ少ない)紙ナプキンのような厚さのポケットティッシュのパックを買って、必要最低限だけ使っており、それに習った。

また、少し前に日本に住んでいるフランス人の友達と話していて「フランスではティッシュを使ったことがない」と言っていた。ティッシュの全くない家で育ったので、日本では当たり前のように紙を使い捨てしているのが信じられないのだと。それを聞き、私自身もったいない思いつつ、つい使うのが習慣になっていたが、やはりあまりよくないよなぁ、と思い直した。


2. ティッシュをあまり使わないフランスの場合

ところで、ティッシュがないならないでフランスには別の文化がある。

例えば食事の時にはServiette(サーブ(serve)する意のServirからきている)と呼ばれる布ナプキンを用いる。Servietteを忠実にカタカナ表記するとセルヴィエットだが、私の耳にはサヴィエットと聞こえる。
友人のフランス人の家に遊びにいくと、どこの家でも食卓がよく片付いていて食事前にきれいにテーブルセッティングをする。その際、皿やカトラリー類と共にこのセルヴィエットを用意する。家庭にもよるが、自分専用のものを何度か(数日間など)使用することが多い。去年の秋にフランスとイタリアで、知り合い一家のところに滞在した時も「あおいが来たから柄違いのナプキンを用意したよ。みんなどれにする?」と言われて、何だかうれしかった。おしゃれな家なので、ナプキンの柄もかわいかったし、ちょっとしたことだけど楽しいものである。

また鼻水には、鼻をかむという動詞MoucherムシェールからきているMouchoir ムショワールと呼ばれるものがある。ムッショワー(ル)と発音した方が、私の耳には自然だ。(ル)としたのは、フランス語のRの発音は空気中に消えてしまうような音なのだが、フランス人はもれなく聞き取っているので、きちんと発音しないと聞き返されてしまうため。
このムショワールはもともとハンカチのことを言ったが、いまではティッシュペーパー(ポケットティッシュ)の意でも用いられる。年配の人から聞いた話によると、昔はハンカチで鼻をかみ熱湯消毒して繰り返し使うことが一般的だったそう。


ちなみに前述のティッシュを使う習慣のないフランス人(女性)は、風呂屋に売っているようなペラペラのパイル地タオルで鼻をかんでいた。本職ではないがたまにモデルやるようなルックスで全体的にスタイリッシュなのに、そこだけえらくギャップがあって面白かった。

ある時、二人でハイキングに行った時も、彼女はこのタオルを持っていた。私は彼女の家に数日滞在しており、同じ手拭いをずっと使っているのを知っていた。リュックのひもに結んで使っていたが、途中でどこかで落として落胆していた。帰りに山から下ってくると、彼女のタオルが枝にぶら下がって揺れていた。それを見た彼女はうれしそうにタオルの方へとかけていった。誰か親切な人がかけてくれたと思うと心温まるが、数日に渡って鼻をかみ続けたタオルだと思うと、何だか気の毒である。



3. 食卓で布ナプキンを用いてみる

さて、前置きが長くなってしまったが、自分自身の使うティッシュの量を減らしたい、という話である。私はティッシュをよく使う。万年鼻炎気味だから、鼻水はでなくとも鼻をかむ。ポテトチップスジャンキーでしょっちゅう食べて指を汚す。今の時期は飲み水やサラダ、ちょっとした味付けにと、何にでもレモンを絞っていれるので、手だけでなくそこら辺にも果汁をよく飛ばして拭く。
どれも一回のティッシュの使用範囲はごくわずかなので、同じものを何度か使って捨てればいいが、そのままにしておくとだらしないと言われてきたのか、無意識にすぐゴミ箱へ捨てるくせがついており、次の瞬間、また別のところを汚して紙を探している。こういう人間は、地球のためにもぜひセルヴィエットを使うべきである。


そう思っている時、ちょうど冒頭のような記事を目にして、過去の出来事と共に色々思い巡らせていた。さらに部屋を整理していると、使っていない綿のハンカチセットがでてきたので、試しにこれをテーブルナプキンの代わりに使ってみることにした。

実際使ってみると、思った以上に快適だった。私はこれまで手を汚すたび、ティッシュをとるのを一瞬ためらっていたが、代わりのものがないのでしかたなく一枚引き抜く、そしてすぐ捨てて後悔する、というのを繰り返していた。さっと手を伸ばせるナプキンがあることで、資源の無駄だけでなく、思考の無駄も省かれ気分がいい。気に入ったので仕事机にも一つ用意した。何かをつまみながら仕事をするとき、鼻がむずむずするとき、ちょっとしたことにティッシュを浪費しなくてすむので、なかなか便利だ。
使った布は1日の終わりに湯と石鹸で洗い部屋に干しておくと、一晩で乾く。熱に強い綿の生地の汚れを熱湯で落とすのは気持ちよく、昔から好きだ。


4. ライフスタイルに合わせたエコチャレンジ

こういう話をすると、衛生的でない、洗うのが手間、洗剤と水の使用で結局は環境に負荷がかかっている、何だかんだで使い捨てティッシュが一番早くて楽、などという声が返ってくることもよくある。
そうかもしれないが、今の生活と照らし合わせてみると、まず衛生面については、私自身が同じものを使っても平気なタイプで、雑菌等もそこまで気にしてない。フランスで日常的に使っていたという慣れもあるのかもしれない。また洗うのも、台所のふきんを洗う時に一緒に行えばさほど手間にならない。最後に水や洗剤が無駄という問題だが、布製品が製造され、それを洗濯して一定期間繰り返し使うのと、ティッシュペーパーが製造されるのとでどちらに多く環境負荷がかかるのか正直私にはわからない。ただ、私はもう使い捨てはしたくないのだ。

買い物袋、ストロー、タンブラー、プラ容器など、ティッシュ以外にも使い捨てか否かで色々な議論がある。そのどちらにもその人の生活スタイルや、ステータス、価値観などが反映されていて、両方にメリット、デメリットがある。そして多くの使い捨て製品が労力やコスト面で経済的だから採用されている、というのも理解している。ただ、私は低価格や効率を優先するあまり当たり前になっている、短時間だけ使用してすぐ捨てるというサイクルを自分の生活から極力減らしたいと思っている。

ごみを出さない、減らすというやり方は色々あるし、人によって向き不向きがある。
例えばプラ容器や袋、割り箸なども、すぐに捨てるからゴミになるのであって、何でもとっておいてうまく再利用する人もいる。私の場合はたまる一方でだめだった。その代わり簡易包装のものを買ったり、不要な袋や箸類は断るようにしている。また、生理用品に関してはライフスタイルと照らし合わせて使い捨てが合理的だと判断したし、生ゴミのコンポストも都会の暮らしでは土の循環が生まれにくいと思ったので見送った。


だからこの文章も生活の中での一つの選択と、やってみてこうだったよという報告として書いた。冒頭で紹介した、日本では高品質のティッシュが簡単に手に入ってしまうために使いすぎが起きるという指摘は面白く、そこから過去の思い出、今の生活へと繋がっていった。そして実践してみると意外に楽しく、生活の中の小さな変化を記しておいた


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