見出し画像

新しい官能表現を考える会 #6

今回の検証語句

無題6

 布団に仰臥した身体から下着を脱がせると、そこには死んだ陰茎がだらりとぶら下がっていました。この一年の間、幾度となく屹立し、私を求め、私に侵入し、そして私の中を擦り上げた性器。それがいまは重力に対して完全服従を誓ったかのように、力なく垂れていたのです。

「ねぇ、こっちまで元気無くなっちゃったの」

 ペニスをそっと下から持ち上げ、裏筋を自身の秘部にあてがうように腰を下ろすと、温度を失くした抜け殻の冷たさが私の中心を貫きました。
『寒くないかい』
 あの優しい声が聞こえたような気がしました。
 私はそのまま彼の胸に手を置くと、木馬が振れるようにゆらりゆらりと大きく腰を動かしはじめました。
 どうしてこんなことになってしまったのだろう。なにか手はなかったのだろうか。これは私のせいなのだろうか……。
 そんなとめどない逡巡も、もはや形だけとなった彼を陰核で擦りあげるたびに白濁していきました。ゆっくりと膨れ上がる快楽の痺れが、私の意識を単純化していったのです。

 ほどなくして、私は物言わぬ彼の上で声をあげて達しました。震えが収まり、そっと腰を上げると、朝の陽光に照らされたペニスが私の独り善がりな快楽の証でぬらぬらと光っていました。
 そして私はかつて何度もそうしたように、行為を終えた彼に寄り添い、いまだ愛おしい身体を腕で包みました。

「もうちょっと、ゆっくりできんかったかね」

 悲しみ、痛み、しがらみ、恨み。彼を苦しめたあらゆる呪いが抜け出たその肉体はあまりにも冷たく、私はいま、冬の空を抱いているのだと思いました。

結論

 仮説の通り、上記の三語は一切の違和感なく官能表現として機能した。引き続き調査を続ける。

読んでくださって感謝感謝です。スキやコメントを頂けると励みになります。よろしければ!