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ポッキーゲームの功罪 【ショートショート】

俺はただ、その官能的な甘さのチョコレートの味が、もう嫌だった。
チョコレートの香りだけで、吐き気がする。
何故こんなことを始めてしまったのか。軽いノリで、「結局ポッキーゲームはポッキーが一番」という謎の結論を出して、ひたすらポッキーを咥えて、少し塩辛い「チョコのついてない方」は、ほぼほぼ君が咥えて、俺に官能的な甘さのチョコレートの味をリアルに伝えて、俺はただ、無表情で、ポッキーを齧って。君が笑顔だったから、ただ俺は君が嬉しいのかと思っていたのに。それは、ただただ君が嫌だっただけと解かって、俺の心は崩壊寸前だった。軽い気持ちで始めてしまったポッキーゲームは、もはや俺達のさだめみたいになって、俺達の心を静かに蝕んでいった。

そもそも、ポッキーゲームなどと言うものは、パーティーの余興に行われる程度のもので、心を通わせるためにするものではないのに。何故、何故、ポッキーなどと言うものにすがってしまったのか、何故、ポッキーなどと言うものを介して、一瞬でも心が通じてしまったのか。

キスなら良かった。キスなら、ただのキスなら。すぐにでもやめられた。なのに敢えてポッキーなどを介してしまったばっかりに、甘い官能的な誘惑が生まれてしまい、嫌なのに、嫌なのに、そこから離れることができなくて。

俺は君が好きだった。綺麗な君の笑顔も、擦り減らし続ける君の心も。そして、恐らく君も俺を好きだったと思う。なのに、何で?こんな未來しか招けなかったのか。君と2人、もっとキラキラと輝いていたかった、だけなのに。

甘い官能的なチョコレートの香りが恐くて、俺達はポッキーの代用品を探した。でも、その度に君と唇を触れさせて、結局代用品なんか、見つかるはずもなかった。

それは、嫌で嫌で仕方のない、ポッキーの甘い官能的なチョコレートの香りに魅せられ、そのポッキーが少しずつ唇を寄せてくる君の美しい表情に、堕ちてしまっていたから。
唇を寄せると、君の煙草がふわっと香って、ますます俺をおかしくさせた。

「ポッキーゲームは、もうしなくてもいいんじゃない?」

その君の言葉を聞いた時、あれほど、俺に恋い焦がれていた君の気持ちは、もうとっくに失くなってしまった、誰かの元へ行ってしまったと、妙な安堵と、寂しさが過ぎる。

あれほど嫌な、ポッキーゲーム。君と心を通わせた、ポッキーゲーム。そんな形に終わりを迎えるとは、俺と君らしい。

君とのこの奇妙な関係は、恐らくこれからもずっと続く。それこそ、お互いがしわしわのおじいさんになるまで、続くのだろう。

そして、俺が死を迎える時、きっと俺より長命な君は、キスと、ポッキーゲーム、どちらを選ぶのだろう?

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