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【IDと教員研修25】「自発的な選択/回避」態度の指導方略

前回の記事では,運動技能に関する指導方略について考えました.あたま,からだときて,今回は,こころに関する学習目標,態度について考えてみましょう.


「〇〇しようとする」ということ

「物を大切に使おうとする」
「自分の体を大切にしようとする」
「学習に粘り強く取り組もうとする」
態度は,このような表現で表されることがあります.

学習指導要領においては,「主体的に学習に取り組む態度」という評価項目として,粘り強さや自己調整をしている様子を評価することがあります.

態度は,一見すると,「心持ち」「気持ち」のように,その人個人の特性や性格のような文脈でとらえられることがあります.すると,「果たして育成可能なのか」という疑問をもつ場合があるかもしれません.

例えば道徳科では,実践的な態度につながる指導が大切にされており,道徳的価値の理解や,道徳的な判断力の育成を通じて,道徳的な実践力を身につけ,態度を涵養するということが考えられます.そういった意味では,態度も,育成可能な内容であるといえそうです.

複合的分析

大人の「態度」を育成する,これはなかなか難しいそうです.例えば,習慣化された行動に紐づいている態度(食習慣や学習習慣等)であると,長年培われた癖のようなものがあり,すぐには変容が難しいものもありそうです.

しかし,これも学習の一つであると考えると,教員にとっての態度育成も様々なことが考えられそうです.
「教材研究を毎日少しずつ続けようとする」
「机上を整理整頓しようとする」
「子供のよかった行動を毎日振り返ろうとする」
といった内容を思い浮かべると,教員にとって育成したい態度が思い浮かぶかもしれません.

このような,態度を育成するためのキーワードは,「複合的分析」です.まず何より,自分以外の気持ちを知る,ということが変容の第一歩と考えます.多面的多角的な視点をもてるようにする,ということもいえそうです.
「自分自身のことは自分ではわからない」というように,何かの違いと比べることで,自分のことにまつわる内容が,輪郭を帯びてくる,といったイメージかもしれません.

「〇〇を選ばない,回避しようとする」ということも態度

「机上に無作為に資料を置くのを回避しようとする」
「子供の悪かった行動ばかりを記録することを回避しようとする」
これは,前述の態度の裏返しともいえる表現です.
態度には,積極的に選択をしようとする場合もあれば,望ましくないことについて回避しようとする場合もあります.

態度にまつわる知識・技能を明らかにする

態度を育成するには,そこにまつわる言語情報・知的技能・運動技能を明らかにしておく必要があります.
例えば,整理整頓という態度を育成するためには,整理整頓をするための知識や,整理の仕方,整理を効果的に行う事項にまつわる用語,といった知識・技能がないままだと,よりよい態度に向かうことができません.
様々な知識・技能を活用して態度が育成されていくということがイメージできそうです.

学習者にとって説得力のある人物・情報源を活用する

整理整頓が得意かどうかわからない人が,「整理することはとっても大事です」と言っても,態度の変容は小さいかもしれません.
整理整頓の「プロ」が語れば,例え同じ言葉でも,説得力が変わります.態度の変容には,憧れや信頼といった要素も関係してきそうです.

練習する

「この場合あなたならどうする?」と問い,行動を考えさせることも,態度育成で重要な場面です.よい結末やそうでない結末を用意し,疑似体験させることで,自分の態度を認識するきっかけになります.
態度は,言葉で考えても,自覚しにくいこともあります.前述の整理整頓なら,できそうだと思っても,状況によって(疲れている,立て込んでいる等)では,うまくいかないかもしれない,ということに気づけるよう,様々な練習をしていくことができそうです.

今回までで,あたま・からだ・こころに関する学習目標についての指導方略を考えてきました.それぞれが,習得活用できるようにするための方略を意識することで,学習者に合った学びづくりをしていくことができそうです.

次回は,学習の「型」を意識して,PBLについてとりあげてみようと思います.

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