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見えない圧ーー松田青子著『自分で名付ける』を読んで

 松田青子著 集英社 2021年出版

 松田青子さんの本を全部読んでみようと思って、いろいろ読んでいるが、たまたま図書館の特集コーナーで紹介されていたので手に取って借りてみた。

 この本は子育てのエッセイ。妊娠中の時、お産の時、出産後の子どもとの話などが書かれている。

 妊婦さんマークをつけているときに、電車に乗ったら譲ってくれる人がなかなかいなかったこと、とかそういう話は、妊婦だったら誰しも感じたことのある話かもしれない。こういう話を文章にしてこういうふうに書かれているのを読むと、勇気づけられる女性は多いのかもしれない、と思ったが、私としては、なんか細々としていて読んでいてあんまりおもしろくなかった。それは、私が40代独身女性だからなのかは、分からないが、それは、私が、飲みすぎて体調悪くて気持ちが悪いときに席を譲ってくれる人がいない、という状況とそんなに変わらないんではないか、とちょっと思った。そんなわけはないが、女性って、妊娠すると、世界変わる、みたいな話は本当っぽいな、とこの本を読んでてちょっと思った。でも、付け足しておかなければいけないのは、女性は出産しなければいけない、と思っている女性、ってなんなんだろね。なにも、出産することだけが、自分の人生を変えるということではない。女性ってなんか見えない圧に押されて生きているのは事実だけど、実際、子ども産むのが不可能な年齢まで達してきた私としては、そういう圧はもはやなくなって、気張っている女性を見ると、ちょっと引く。

 要するに、この本を読んで思ったことは、私はもう子どもを産むとかそろそろあきらめているんだが、わたしみたいな女性が、こういう松田青子さんみたいな妊娠、出産を経験して子育てしている女性のエッセイを読むと、私とは違う人がこの世にいて、こういう経験をしているんだと思う。私も同じ女性だから、こういう経験をできたかもしれないが、私はあなたではない。でも女性として、彼女みたいな人生を歩んでいる人もいるし、女性だったら誰しもが思うような問題も分かるので、私も共感する。そんなことを漠然と読んでて感じた本だった。

 なんていうんだろう、妊娠、出産、子育て、という話は、私が女性だから興味あって、こういうエッセイを読んだ、ともいえるが、もし私が男性であっても、興味があったら読むんだろうな、と思った。

 松田青子さんの本は、男女問わず、いろんな若い人に読んでもらいたいと私は思う。


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