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社会起業家の話ーー『アフリカで、バッグの会社はじめました』を読んで

 江口絵理著 さ・え・ら書房 2023年出版

 図書館の子どもの本のコーナーをぶらぶらしてたら、偶然この本に出会って、おもしろそうだな、と思って借りた。

 この本は、仲本千津さんというアフリカのウガンダでアフリカの布を使ったバッグを作って日本の百貨店で販売している起業家を彼女の生涯からドキュメンタリー的に一冊の本にまとめたものである。

 「社会のあり方が原因で生まれる問題を、アイデアとビジネスで解決しようとするのが「社会起業家」」と説明があったが、千津さんという方はいわゆる社会起業家なんだが、アフリカのシングルマザーとコミュニティを作って、ビジネスを成功させたのだとこの本を読んで私は理解した。

 「途上国で人々の働き口を大量につくり出すことだけが目的なら、安い給料でたくさんの人を雇えば実現できます。でも、安い給料で長時間働かされ、雇い主から感謝もされず、すぐに首にされてしまうような働き口をたくさんつくるより、雇われた人がちゃんと生活できて自分の仕事に誇りをもてる仕事を、長期にわたって維持するほうがいいのではないか。経営者としての責任を、千津さんはこんな形で果たそうとしています。」p. 90

 千津さんのビジネスとは以上のこの本からの引用がすべてを語っているように思うが、私が疑問に思ったことは、彼女のビジネスは、彼女が作った狭いアフリカのコミュニティでしかありえないことなんじゃないかと思った。雇われた人がちゃんと生活できるように保健とかお金の関係も、そこの地元の人たちからしてみれば、とんでもなく待遇がいいのかもしれない。そしたら、持ち逃げされたりとか裏切りされたりしたことなんかあるんじゃないかな、と思ったんだが、多分、彼女が成功したのはシングルマザーが自立できる環境を作ったということなんだろうと思った。

 彼女のビジネスのシステムを考えてみると、女性だけのコミュニティではないとありえないんじゃないか、と私は考えた。シングルマザーを支えるというコンセプトのもとに、子どもを育てなきゃいけないという使命を抱えた女性だけで作ったコミュニティだからお互い助け合わないといけない、この集まりを壊さないようにしなきゃ、と思って、みんな信頼関係を形成しているのかな、と思った。

 でも、私のそもそもの考え方としては、というか今までアフリカに興味があっていろいろ本読んできて分かってきたことは、アフリカの人たちって、日本とか先進国のサラリーマンとかOLとか資本主義の国の人とは「働く」という考え方が全く違うのではないか、と思う。その日暮らしでいい、のような、なんとかなるさ、みたいな血が流れてて、お金がなきゃ生きていけないという考え方が根底にある私たちとは全く違う。だから私は、保健もないし、貯蓄もないし、というアフリカの国々のことは、そんなに驚くべきことではなかったんだけど、日本にとってあたりまえの制度がない国があることを千津さんは知ってとても衝撃的だったんだろうと思った。

 図書館の児童書のコーナーでこの本と一緒に中村哲さんの伝記もいっしょに借りたんだが、どちらも外国で活躍している人の話だけど、このアフリカでビジネスしている女性より、中村さんの方がかっこいいな、と私は正直なところ思った。が、このアフリカでビジネスしている女性はもっと年配の人の意見を聴いてみるべきなんじゃないかと思った。手広く商売する方法ではなく。応援してます。


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