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子どものころに読んでおけばよかったと思った本① ルイス・キャロル

 私が大人になってから読んで面白いと思った本で、子どもの頃に読んでおけばよかったと思った一冊は、ルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』だと思う。後悔先に立たず。だが、子どものころにこういう本と出会っていたら、もっと今とは何かが違っていたかもしれない、とちょっと思う。

 私は大学は文学部に所属していたが、それほど、本を読む子供時代を送ってきたわけではなかった。大学院に入って、周りを見渡してみると、私は圧倒的に読書量が少ないと思った。というか、文系の大学院は読書量が半端ない人しかいない。

 私が本格的に本を読むようになったのは、大学院に行ってからだと思う。学部時代は、普通に、好きな本を読んでいた程度だ。まあ、それでも、本は読む方だと思っていたが。それが大学院に進学してから、友達が研究対象にしている作家など、研究室で行う発表をより理解したいと思い本を読むに読んだ。自分の趣味だけで本を手に取っていたそれまでとは、大きく変化があった。授業で名前の挙がった作家の作品はだいたい追ったし、常識として知っておかないといけない作家の作品、巨匠と言われるようなビッグな作家などもおさえた。仏文に所属してたため、プルーストなどの長編小説などにも挑戦した。そこから読書の幅がとんでもなく広がった気がした。

 仏文でシュルレアリスムとかいう変な人たちの集まりの研究してる先生の研究室に所属してたので、ちょっと変わった作家などに出会うことが多かったのだが、その彼らが影響を受けた本が『不思議の国のアリス』というので、なんでこんな英文の作品に魅了されてたんだろ、と不思議だった。私が実際読んでみたのはそんな学生時代だった。

 私が読んだのは岩波ジュニア新書の脇明子さんの翻訳だが、翻訳にとても苦労されているのが分かった。確かに、カバン語やら、言葉遊びがすごい。これは原書で読まなきゃアカンと思った。でも、アリスがとても弾けるような元気でおしゃまな少女なので、なんだか、それだけで、この小さな冒険譚が面白かった。子どもの頃に、この本読んでいたら、このおしゃまな少女がどう映っただろう、と思った。

 こんな私が『不思議の国のアリス』が面白い、と今更言うのはとてもありふれているんだが、なぜなら、展覧会まで催されているように、アリスはみんなに好かれている。それぞれ個人的なアリスとの出会いがあったろうが、たぶん、挿絵の影響が大きかったのではないか。それに引きつづいて、アニメの映画なんだろか。なんで、こんなにファン多いんだろう、と、こないだの展覧会の様子を見てて思った。でも、おそらく、子どもの頃から好き、という人は意外と少ないんじゃないか、とちょっと思う。大人になって読んでみて、かわいらしいアリスに魅了されてるんじゃないかと思っている。

 なんか、今となっては、すごくポップな扱いを受けているのを見ていると、哲学書などに扱われている様子とは一転していて、不思議な感じだ。こないだ松本卓也さんの本で読んでいたら、ルイス・キャロルは自閉症スペクトラムだった、と書かれていたが、そういう見方もできるのね、と思った。

 もう、自分は大人になってしまったのでわからないが、子どものとき読んでたらどんなふうに読めたんだろう、と、ふと思った本である。


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