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普遍的な科学のエッセイーー元村有希子著『科学のトリセツ』を読んで

 元村有希子著 毎日新聞出版 2022年出版

 最寄りの図書館に行ったら、割と出版されたばかりのこの本が本棚に刺さっていたから、借りてみた。

 この本は、週刊誌『サンデー毎日』に連載されていたものを、時間系列順に載せたエッセイとのこと。科学と言ってもいろんな分野があると思うが、それが概略的に述べてある。始めの頃は、ノーベル賞受賞した人の研究分野とかブラックホールとかに言及があったが、この本の半分くらいはコロナ禍の話が結構書かれており、なんか最近の本なんだなと感じた。コロナの話が書かれている本は、オンタイムの話が書かれているだけに、今ならまだ最近起こったことだから、そうだったよねーと思うけど、また東北大地震と同じで、時間が経てば、あーあのころね、と思う時代がやってくるんだと、こういう本を読むと思ってしまう。

 「科学」というだけで、広範囲でいろんな話ができると思うんだが、こういうタイトルでこういう本として出版できるのは、毎日新聞社に入社して、科学環境部に配属されて、こういう記事を書いてきたからだろう、と思う。なんというか、大学の研究職の人でもなく、科学という題材でこの本のように普遍的なこと書ける人は、記者しかいないんだろうな、と思った。

 それはこの本の筆者が研究職の人じゃない、ということを批判してるわけではなく、科学という分野は専門的になりすぎると読者が寄り付かなくなるので、新聞記者が広い読者に向けて書くことが必要なんだと私は思った。

 この本読んでて、「セレンディピティ」というおもしろい言葉を初めて聞いた。セレンディピティとは、「ただ単に強運なだけでなく、降ってわいた出来事を逃さない用意ができているところがミソなのである。」そうだ。

 科学者は失敗した実験から、新しいことを発見するからだろうか。この言葉は、経済とか政治とかいろんな分野の研究者にとって、必要とされている言葉だろう。


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