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ブラジャーのオッサン


肌寒い。もうすっかり秋だ。

職場の近くでよく見かけるオッサンがいる。
最初はおばさんだと思っていたが、職場の同僚から「あの人は男よ」と教えてもらった。
髪をソバージュにして一つに束ね、チュニックかワンピースを着て、レギンス(スパッツと言う方が合っているが)を履いてよく歩いている。

夏のある日、そのオバおっさんを見かけたのだが、シャツのボタンが豪快に外され、白くて大きいブラジャーが丸見えだった。

なぜに丸見え。暑かったのか。
にしても丸見え過ぎる。とにかくブラジャーのインパクトが半端ない。料理の鉄人で、鹿賀丈史が「出でよ!アイアンシェフ!!」と言おうものなら、ブラジャー丸出しのそのオバおっさんがドドーーーン!!と登場しそうなぐらいのブラジャードヤ感である。

そのブラジャー丸見え姿は幾度か見かけたのだが、いつも気になるのがどこから(いつから)ブラジャーどーん!状態なのかということである。

家から?
それとも最初の曲がり角がきたらスイッチが入り、オープンになるのか。
はたまた、最寄り駅から降車駅の各駅停車ごとに一つ一つシャツのボタンが外されていくのか。
電車が停車するたび、周囲の乗客は息をのみ、オバおっさんがシャツのボタンに手をかけるのを注目する。一つ一つ外されていくボタン。ドラムロールの音と共に乗客皆の緊張が少しずつ増していく。降車駅に到着し電車のドアが開かれた時、ブラジャーもダダーン!!と(クイズが正解した時のような効果音で)オープン状態になり、完結する。

かどうかは知らんが、いくらなんでものブラジャーが丸見え状態にオバおっさんの何かしらの意思があるのではと想像してしまう。その、公の場でブラジャーオープンのスイッチってどこからなのか、すごく気になるのだ。

久しくオバおっさんの姿を目にしていなかったが、10月に入り、オバおっさんの姿を見かけた。

黒のタートルネックのニットワンピースに黒に銀色のラインが入ったレギンス、肩に皮の黒のショルダーバッグをかけていた。ブラジャーは全く見えなかった。

なんだかその姿に、秋の訪れを感じずにはいられなかった。




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